株式会社TENTIAL 代表取締役CEO 中西裕太郎
健康に前向きな社会を創り、体の不調を理由に挑戦を諦める人がいない世の中にしたい

株式会社TENTIAL 代表取締役CEO 中西裕太郎(なかにしゆうたろう)
■プロフィール
埼玉県出身。プロサッカー選手を目指した高校時代に病気で夢を絶たれた経験から、起業に関心を持つ。ベンチャー企業と大手企業などで数々の経験を積み、2018年に株式会社TENTIALを創業し、翌年コンディショニングブランド「TENTIAL」を立ち上げ。人がポテンシャルを発揮するためには健康で前向きな生活が重要と考え、スポーツコンディショニングを社会に還元できる仕組みづくりを目指している。
高校時代に掲げていたのは、「プロサッカー選手になる」という夢。ところが、その夢は病に倒れた高3の夏に絶たれることになる。それでもめげず前へ進み、健康に悩む全ての人を後押しする商品を開発し続けるのが、株式会社TENTIALの中西さんだ。着て寝ることで血行を促進し、疲労回復をサポートするパジャマ・BAKUNE大ヒットまでの苦労をはじめ、彼の原動力と会社で大切にしている理念、そして今後の展望まで幅広く伺った。
高校時代は、本当にサッカーのことしか考えていない毎日を送っていました。プロサッカー選手を目指して夢中になって取り組んでいて、遠征や試合で学校行事にもほとんど参加できず、「自分がどこまで目指せるのか」という挑戦心を持ってひたすら前に進んでいました。いま振り返ると、「もっとサッカーに真剣に取り組めばよかった」という思いもありますが、それと同時に、「サッカー以外の幅広い経験をしておけばよかった」という気持ちもあります。たとえば、自分たちで練習メニューを考えたり、プロの選手をはじめ、さまざまな人と出会って視野を広げたりしていれば、もっと成長できたのではないかと感じています。
そんな高校3年生のときに病気を患い、突然サッカーができなくなってしまいました。当時は、自分のアイデンティティやこれまで積み重ねてきたものを失ったような感覚の中でもがき続けていました。でも、サッカー選手になることだけを夢見ていたからこそ、そのタイミングで初めて「これからの人生をどう生きていくか」を真剣に考えるようになったのだと思います。サッカーのない自分の人生を、どうやって輝かせていくか。あの時の経験が、今の自分をつくる大きなきっかけになったと思っています。
■プログラミングの世界へ羽を広げる
将来を考えていた頃、オバマ大統領の「未来の子供達には、ゲームをするのではなく、作る人になってほしい」という演説に心を打たれ、プログラミングやITの重要性を感じて勉強を始めました。学びを通じて出会った方々とのご縁から、インフラトップ(現・DMM Group)でプログラミング教育事業の立ち上げに参画しました。
その後、リクルートキャリア(現・リクルート)に入社し事業開発に携わったことで、ベンチャーと大手、それぞれの良さを実感できました。ベンチャーでは、リスクを恐れず前向きに挑戦し続ける姿勢や、「自分が会社を動かしている」という当事者意識を学んだ一方で、大手企業では、分析や戦略に基づいて行動し、社会全体への価値を考える視点の重要性を体感しました。環境は違っても、「お客様に価値を届ける」という本質は共通していて、仕事に対する視野が大きく広がった経験でした。
■高校時代の経験を機に起業に踏み出す
病気になって以来、人生を逆算して考える癖がつきました。人よりも残された時間が短いのではないかという思いが頭をよぎったことで、「挑戦しないことがリスクだ」と感じるようになったんです。だからこそ、一日でも早く前に進みたいという思いが強まり、23歳で会社を立ち上げました。それまでに培ってきた経験の濃さもあって、若さへの不安はほとんどなかったように思います。
そして何より、自分の中で大切にしてきた想いや目指す方向性は、当時からずっとぶれていません。「TENTIAL(テンシャル)」という会社の名前は、「POTENTIAL(ポテンシャル)」に由来しています。自分自身には、病気で夢を諦めざるを得なかった過去があります。実力で届かなかったのではなく、「挑戦すらできなかった」ことが何より悔しかった。その経験が原点となって、同じように健康上の問題によって挑戦を諦めざるを得ない人を減らしたい、そんな思いを胸に生まれました。
■身の回りの「あたりまえ」を疑う
楽観的な思考で、あらゆるリスクを想定して計画を立てる。この信念のもと、立ち上げ当初から目指してきたのは、スポーツ選手に限らず、誰もが日常をより健康に過ごせる社会をつくることです。それを実現するために、衣食住といった日常生活の中にある健康に目を向けてきました。最初に開発したのは、インソールです。これは、競技中だけではなく、日常生活のコンディションをサポートするプロダクトとして開発しました。そして、TENTIALの代表的な商品となった疲労回復パジャマ「BAKUNE」は、睡眠に課題を抱えるアスリートが多いという点に着目し、開発を進めました。
開発において大事にしてきたのは、仮説を立てることです。あたりまえを問い直し、今日よりも明日、より健康的になれる方法を考え続けています。そして、その仮説を形にし、実際に使ってもらい、改善する。その繰り返しが私たちのスタイルです。
今後は、BAKUNEをより多くの方々に届けていくことはもちろん、さらに日常の中にある多様なシーンに目を向け、人々の生活に自然に溶け込む製品やサービスを生み出していくことが目標です。一方で、まだTENTIALという会社を知らない人たちも多くいます。だからこそ、健康に悩む多くの人たちにしっかりと届けるための工夫や発信の仕方も、今後の重要な課題だと考えています。
■ポテンシャルを信じる仲間に期待する
2025年2月の上場をきっかけに、新たに「だれも奪えないもの。それがポテンシャルだと思う。」というメッセージを発信しました。TENTIALには、この理念のもと、会社の利益を追い求めるだけでなく、本気で人の可能性を引き上げるために健康に前向きな社会を作ろうと挑戦している人たちがたくさんいます。だからこそ、自分に対して可能性やポテンシャルを持って働ける人が増えたらいいと思っています。今の社会は、失敗や目立つことを恐れる人も多いと思いますが、その中でも、自分自身や世の中に可能性を持って挑戦をする人と働けると嬉しいです。
■大学生へのメッセージ
一人ひとりのポテンシャルは、誰にも奪うことはできません。しかし、自分で自分自身の可能性に蓋をしてしまうことは意外と多いものです。だからこそ、自分の可能性を自分で奪わないでほしいと思っています。誰よりも自分が自分の一番の理解者ですから、周りに期待するだけでなく、自分自身に期待し、自分のポテンシャルを信じて思いきり発揮してほしいです。
学生新聞オンライン2025年4月7日 田園調布雙葉高等学校3年 伊藤凜夏

上智大学4年 吉川みなみ / 東洋大学3年 越山凛乃 / 中央大学1年 加藤眞優花 / 田園調布雙葉高等学校3年 伊藤凜夏
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