株式会社アイデミー 代表取締役 執行役員 社長 石川総彦

先端技術を浸透させ、社会の進捗を加速

株式会社アイデミー  代表取締役 執行役員 社⻑  石川聡彦(いしかわ あきひこ)

■プロフィール
東京大学工学部卒。同大学院中退。在学中の専門は環境工学で、水処理分野での機械学習の応用研究に従事した経験を活かし、 DX/GX人材へのリスキリングサービス「Aidemy」やシステムの内製化支援サービス「Modeloy」を開発・提供している。著書に『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』(KADOKAWA/2018年)、『投資対効果を最大化するAI導入7つのルール』( KADOKAWA/ 2020年)など。

「先端技術を、経済実装する。」というミッションを掲げる株式会社アイデミー。2023年6月に東京証券取引所グロース市場に新規上場も果たした。そんな同社を学生時代に起業し、上場企業まで成長させた石川社長のストーリーを伺った。

教師になるか起業するか

教師になりたくて、東京大学文科三類に入学しました。一方で中高時代の小さなビジネスを回す真似事から得た成功体験や、学生起業家の先輩方のプロダクトに触れるうちに「起業したい」という想いを抱きはじめました。その想いに気づいてからは、東大を拠点に活動するビジネスコンテスト運営団体「KING」に入り、ビジネスの基礎を学びながら、代表としての活動も始めました。そんな中、学生時代に作ったプロダクトで世界を変えている起業家がいることを改めて目の当たりにし、「教師よりも、もっとたくさんの人に影響を与えられる仕事をしたい」と考え、「起業の方に舵を切ろう」と決意したのが大学1、2年の頃でした。起業家の多くが理系出身ということと、起業するならテクノロジーベースの会社と考えていたことから、理転し工学部への進学を決めました。KING卒業後、私自身さまざまなビジネスコンテストに出場し、とあるビジネスコンテストで優勝することができました。今のアイデミーの事業とは異なるアイディアでしたが、評価をいただいたことや、身近な先輩が起業で成功したのを間近に見ていたことから、「自分でもできるはず」と思い、大学3年の6月に今の会社であるアイデミーを起業、さらに、会社経営に集中するために休学も決めました。

マーケット選びが成功の鍵

様々なビジネスを行ったものの、なかなか軌道に乗らず復学をしました。就活へ気持ちが傾きながらも「ここで諦めたら勿体ない」と切り替え、再度起業へ挑戦しようと決めたんです。そこで、環境を変えるために、一度会社をリセットしてはじめようと、2017年に、VC(ベンチャーキャピタル)からの出資を受けました。それまで自分でビジネスを考え、自分のやりたいことをやっていたのですが、VCの方と話をするなか、AIをおすすめされたのもあり、AIのマーケットに狙いを定めるようになりました。

復学した当時、大学の研究室で水処理をAIを使って最適化するという研究をしていたこともあり、0からAIを学習することの難しさは身を以て学んでいました。今後AIを事業に活用することの可能性も感じ、オンラインでAIなどの先端領域の知識を学べる教育プラットフォームサービス「Aidemy」を開発しました。社会ニーズにマッチしたサービスだったこともあり、爆発的に利用者が伸びていきました。さらに、他のVCからも出資を受けてビジネスを拡大。結局、大学院に行く時間がとれなくなってしまったため、大学院は中退し、経営に専念しました。

■人材育成はスタート

現在、多くの企業で、デジタル人材やAI人材が不足しています。その課題解決の手段として提供しているのが、法人向けサービス「Aidemy Business」です。基礎的な知識から実践的な応用技術まで180以上の幅広いコンテンツを取り揃え、それら全てを自社で制作しています。Netflixのようなビジネスモデル、と言うと分かりやすいかもしれません。

ただ、人材育成はあくまでスタートです。私たちの目指す本質的なゴールは、育成された人材がその知識を元に新しい技術を作り、デジタルをもって課題解決をするところにあります。そのため、育成後の人材とアイデミーのコンサルタントが二人三脚でシステムを作る事業展開も行っています。このような伴走支援まで行う会社は日本で唯あまり例がなく、他社との大きな差別化だと思いますね。

■今後の展望

最新の技術が社会に広まるのに10年かかったところを5年に短縮できたら、その5年分の世界を進歩させているのと同じことだと思うんです。だからこそ、先端技術を経済実装することで、新しい技術の浸透を加速させたいと思っています。今は、環境に配慮したテクノロジー、GX(グリーントランスフォーメーション)に注目しており、攻めのマーケティングを通じて人々の価値観の変化を促し、技術進化を推進していきたいと考えています。

また、上場企業としても更なる成長を目指し、偉大なる先輩起業家たちに追いつき、追い越していくことを目標としています。上場はあくまで、400メートル走が終わって、これから42.195キロのフルマラソンが始まるような感覚です。上場はある種マイルストーンで、ここから先100倍以上長い道のりをぶっちぎって駆け抜けていきたいと思いますね。

■大学生へのメッセージ

大企業からスタートアップへの転職はもちろん、その逆の雇用も近年では当たり前になってきました。特に大企業に興味がある人は、1年ほど休学して留学感覚でスタートアップに勤めてみてください。様々な環境に身を置くことで、そこで積んだ経験から視野が広がり選択肢が増えていくことに気づくと思います。スポーツ選手が他のスポーツをしていたらプロとして活躍していなかったかもしれないように、数ある選択肢の中から自分に合った環境を見つけほしいと思います。そのためにも、ぜひ学生時代に様々な挑戦や多くの経験を重ねてください。

学生新聞2023年8月1日 慶應義塾大学2年 山本彩央里

國學院大學1年 寺西詩音/慶應義塾大学2年 山本彩央里/国際基督教大学1年 若生真衣/国際基督教大学 1年  渡邊和花/立教大学4年  須藤覚斗

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。