株式会社銚子丸 代表取締役社長 石井憲 

「銚子丸劇場」 技が織りなす握り寿司で、最高の感動体験を。

株式会社銚子丸 代表取締役社長 石井憲 (いしいけん)

■プロフィール
1965年12月26日生まれ。1988年法政大学法学部卒業後、株式会社京樽に入社。2016年、同社執行役員商品本部長。2018年、株式会社吉野家ホールディングス執行役員。2019年、株式会社京樽代表取締役社長。2023年9月、株式会社銚子丸入社 社長室長。2024年、取締役副社長。2025年、代表取締役社長就任。これまでの外食産業で培った豊富な経験と知見を活かし、銚子丸の更なる発展に取り組んでいる。

銚子丸は、店舗を「舞台」、従業員を「劇団員」、お客様を「観客」と呼ぶ独自の文化を持つ「劇場型グルメ回転寿司」だ。運営している株式会社銚子丸の石井憲社長は、職人が握る「握り寿司」で最高の感動を提供し、お客様の喜びを追求。従業員の成長とモチベーション向上を重視した様々な施策を展開し、コロナ禍を乗り越え、既存店の強化を当面の課題として、M&Aによる事業拡大も視野に入れ、未来の良質な食体験の創造に取り組んでいる。

■学生時代とキャリアの原点

私の学生時代を振り返ると、「勉強1/3、アルバイト1/3、クラブ活動1/3」という配分で日々の時間を使っていました。決して優等生ではありませんでしたね。法学部を選んだのは、当時「潰しが効く」と言われていたからで、弁護士になりたいという明確な志望があったわけではありませんでした。しかし、学生時代から一貫して「お客様に喜んでいただくことが自分の喜び」だと感じていたことが、現在の飲食業への道に繋がっていると感じています。
特に長く続いたアルバイトは建築現場での肉体労働です。絨毯の搬入やオフィス改修作業など、体力を要する仕事でしたが、当時の時給は珍しく高く、短時間でも稼げる点が魅力でしたね。例えば、30分で終わる現場でも最低2500円の保証があったため、学生には人気のアルバイトでした。今でも当時のアルバイト仲間やクラブ活動の先輩とは交流があり、ゴルフなどに行っています。
新卒で入社したのは「京樽」という会社で、昭和63年(1988年)のことでした。当時はバブル景気の後期で、大卒を合わせて数百名もの新卒を採用していたのを覚えています。「京樽」では、主に持ち帰り寿司と召し上がり(店内飲食)寿司の事業を手掛けており、私はそこで提供形態に合わせた寿司作りの違いを学びました。特に印象的だったのは、持ち帰り寿司では、お客様が購入して持ち帰るまでの時間経過を考慮し、冷めても美味しく食べられるよう、米の炊き方や酢の加減を調整していた点です。この経験は、現在の銚子丸のテイクアウト商品開発にも活かされており、私の一貫した「お客様視点」に繋がっていると自負しています。

■銚子丸の独自性と強み

銚子丸の大きな特色は、店舗を「舞台」、従業員を「劇団員」、お客様を「観客」と呼ぶ独自のコンセプトを持つ点です。これは創業者が確立したもので、私自身も「ちょっと珍しい」と感じています。競合他社の「価格均一回転寿司」(近年は多様な価格帯の商品も導入)とは異なり、銚子丸は「グルメ回転寿司」というその時期の旬のネタや高品質な商品を追求した、幅広い価格設定を採用しています。
銚子丸の最大の強みは職人による「握り寿司」を提供していることだと私は強調しています。社内では「握っているから、握り寿司なんですよ」と伝えているほど、その点にこだわりを持っています。社員約500名、パート・アルバイト約3000名という人財構成の中で、新卒採用も年間20名を目標とし、店舗展開と人財育成を両輪で進める方針です。お店を出すためには、店長、料理長、座長など社員が1店舗あたり4~5名配属されるビジネスモデルであるため、人財育成は不可欠であり、「教育と出店は足並みを揃えないと銚子丸劇場が再現できなくなってしまう」と私は考えています。

■社長が語る変革と人財育成

私が銚子丸に着任してからの2年間で感じた課題は、企業文化や歴史の違いを認識することです。そのため、自身の経験を単純に適用するのではなく、言葉や順序、段階を踏んで浸透させるように努力をしています。また、「風通しの良い組織」を目指し、従業員が自由に意見を言える雰囲気作りを心がけ、部署長との1on1ミーティングやランチミーティングも実施しています。時には、夜の「ノミュニケーション」も活用し、コミュニケーションを深めています。
特に力を入れているのは、各店舗で社員・パート・アルバイトが集まり、店舗運営方針の確認を行う「本気塾」という取り組みです。これは、お客様と接する最前線である店舗の意識とモチベーションを高めるための重要な活動だと考えています。私は、「お客様に接している最前線は店舗であり、その店舗を支援するのが本部である」と常々語っており、お客様の反応がダイレクトに返ってくる店舗での「美味しかった」「また来るよ」といった声が、自身の疲れを吹き飛ばす経験にもなっています。そのため、店舗の従業員たちがチームワークよくお客様に目を向け、毎日頑張れるような体制を作り、それに対する評価や処遇への反映を整備していくことを重視しています。
さらに銚子丸は、単に売上向上を追求するだけでなく、全従業員が対象の技術コンテストにも力を入れ、従業員のモチベーション向上を引き出す工夫も随所に凝らしています。
こうした取り組みは、日々の業務への意欲を高める、従業員の向上心を引き出す重要な要素となっています。従業員一人ひとりが目標を持って楽しみながら仕事に取り組める環境を整備することで、顧客サービスの質の向上や、会社の持続的な成長にも繋がっています。

■未来への展望とリーダーシップ

今後の展望については、まずは既存店の磨き上げに注力しお客様に「銚子丸って本当にいいお店だよね」と言ってもらえるように品質向上に努めることを優先していきます。その上で、良い物件があれば出店準備を進めること、そして中長期的には、少子高齢化による人口減少を見据え、事業継承に困っている中小企業のM&A(合併・買収)による拡大も視野に入れています。これにより、規模を拡大していく可能性を探り、常にアンテナを張っています。また、物価上昇が続く現状において従業員の賃金を物価上昇以上に上げることができるかを考えていかなければならない、と目の前の課題への強い意識も示しています。
私自身の夢として、年齢を考慮すると銚子丸が最後の仕事場になると考えているため、残りの人生をかけて「お客様に喜んでもらえることを増やし、今いる仲間たちが『銚子丸で働いてよかった』と思える会社にしたい」と強く願っています。そして、そのバトンを次の世代に渡したいという強い思いもあります。

■学生へのメッセージ

最後に、皆さん学生へのメッセージとして、何かに熱中することの重要性を説きたいです。勉強でもクラブ活動でもアルバイトでも、何か一つ突き詰める経験は社会に出てから必ず役立ちます。特にチームでプレイするような活動の学びは、社会に出てからも必ず活きてくるでしょう。また、社会人になっても自己啓発のために勉強する時間を確保することが、仕事のチャンスを掴む上で重要だと伝えたいです。
特にサービス業では、お客様との会話が不可欠であるため、コミュニケーション能力、そしてビジネスにおいては数字で判断するロジカルシンキングが不可欠です。それらを培うことで皆さんの今後に大いに役立つと思います。社会人になってからの成長には、良きライバルの存在や、自ら時間を作り自己を磨き上げることが重要だと改めて認識してください。今回のインタビューを通して、銚子丸は、お客様に最高の「握り寿司」を提供するだけでなく、従業員一人ひとりを大切にし、共に成長していく「劇団員」として絆を深めていることが伝われば幸いです。

学生新聞オンライン2025年7月11日取材 情報経営イノベーション専門職大学1年 襟川歩希

東京理科大学1年 金丸颯人/学習院女子大学3年 岩井美穂/
京都芸術大学1年 猪本玲菜/情報経営イノベーション専門職大学1年 襟川歩希

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