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株式会社不二家 代表取締役社長 河村宣行

「世界にお菓子で笑顔を」不二家への想いと夢

株式会社不二家 代表取締役社長 河村宣行(かわむら のぶゆき)

■プロフィール
1954年11月29日生まれ、東京都出身。1977年東京経済大学経済学部卒業後、同年不二家に入社。営業、人事総務、広報、マーケティングなど幅広い分野を経験。2003年執行役員菓子事業本部営業部長、2009年取締役社長室長 兼 総務人事本部長、2018年専務取締役菓子事業本部長を歴任し、2019年に代表取締役社長に就任。

ミルキーやカントリーマアムなど、様々な人気商品を手がける不二家。グローバル展開を見据え、日本だけでなく世界の笑顔を作るお菓子メーカーだ。その背景にある苦労や企業努力を、8代目社長である河村様に伺った。

■学生時代について

学生時代はバドミントン部に所属しており、正直なところ勉強よりもスポーツに熱中していました。授業があれば「どれだけ効率的に単位を取るか?」を意識し、よく先輩に聞いていた事を今でも思い出します。その分、部活の方にかなりの競争心を煽られ「どうやったら勝てるか?」を追及し、怠けることなく続けていました。
学校生活や日常生活でも、今思い返せば無意識的に小さな目標を立てて奮闘していました。アルバイトも高時給かつ長期休のまとまった期間でできるものに絞り、効率的に一気に稼いでいました。自動車工場の夜勤や玄関マットの配送、デパートのお菓子を紙で包む梱包作業、力仕事など、様々なアルバイトを経験しました。今思えば結果的に接客が多かった気がしますね。

■お菓子メーカーへの就職

就活の時期になり、就職先を探す頃、元々めざしていた食品関係を中心に考えていました。そのなかでも第一志望にしていたのが、不二家です。子供の頃から私はお菓子が好きでしたし、テレビで流れていた不二家のCMに映った、画面に収まらないほどのショートケーキに感動したのを覚えています。そして定年後は喫茶店の経営をしたいと考えていたため、当時はカフェ併設店舗も多く展開していた不二家を第一志望にしていました。
ずっと憧れていた不二家に入れると決まった時は、とても光栄でした。しかし、最初に配属されたのはお菓子でもカフェでもない飲料の営業部でした。本来思い描いていた部所への配属ではなく、正直落ち込んだ気持ちにもなりましたが、その当時は就職氷河期ということもあり簡単に投げ出すわけにもいかず、飲料の営業で結果を出してやるんだと気持ちを切り替えて、毎月のノルマ達成に取り組んでいました。ですが、続けているとやはり不満は出てくるもので、お酒の場で出た愚痴を上司に「提案書」として提出していたのです。それが実を結んだのかはわかりませんが、その後飲料の商品企画部へ異動になりました。

■2本柱事業の統合化

不二家には、大きく分けて「洋菓子事業」と「製菓事業」という2つの事業部門があります。洋菓子事業は、ショートケーキやシュークリームなどを扱う部門。一方、製菓事業は、チョコレートやミルキーといったお菓子を扱う部門です。しかし、私が入社した当時は、タレントの起用一つをとっても、「これは製菓のタレント」といったように完全に区分され、同じ会社にありながら「まるで別の会社なのでは?」と思うほど、両者の間に明確な壁がありました。それに加え、洋菓子事業部と製菓事業部がそれぞれ別フロアに分かれていたため、顔も知らない、会話もない——ほとんど交流もないそんな状態でした。
私にとってこの状況が大きく変わったのが1995年。当時、大規模な事業再編があり、私も新規プロジェクトの立ち上げで洋菓子事業部へ異動となりました。当時としては、両方の事業を経験するのは非常に珍しく、その両事業の経験を通じて、洋菓子事業部と製菓事業部がいかに別々に動いているかを実感しました。だからこそ、社長に就任した際には、この2つの間にある「壁」を少しでも取り払うことを目標に掲げました。

■世界へ笑顔を届けるために

現在、不二家はグローバル展開を積極的に進めており、海外では主に中国とベトナムに進出しています。中国では特に「棒付きキャンディー」が大変好評で、現地でも高い人気を集めています。一方ベトナムでは、現地の経営者から「クッキーが人気ではないか」という声を受け、2022年から当社の主力商品であるカントリーマアムの輸出販売を開始し、本年2025年11月には、現地での製造を開始すべく新工場を建設しました。今後の経営においては、やはり海外市場の拡大が大きなカギになると考えており、今回のベトナムでの工場稼働をきっかけに、アジア諸国を中心に海外進出に力を入れてく計画です。
また、アメリカでもケーキを販売しており、こちらも非常に好評です。ベトナムでは現地の嗜好に合わせて味や品質の調整をしましたが、アメリカではあえて日本で販売しているものと同じ味をそのまま提供しました。これは、冷凍技術の進化によるもので、本来ケーキを冷凍すると解凍時に味が落ちたりクリームが溶けたりするという課題がありましたが、「セミブレッド」という新しい冷凍技術の開発によって、問題を解消できたのです。この技術は日本国内でも活用されており、現在はケーキを販売する冷凍自販機を全国に約280台展開しています。

■人と向き合う姿勢が前向きな人と働きたい

ぜひ何事も前向きに取り組める方と一緒に働きたいと考えています。仕事では、どうしても理不尽なことや思い通りにいかないことが多々あります。そんなときこそ、「絶対に負けられない」という競争心や、物事を前向きに捉える姿勢が大切だと思います。私自身も、これまでの人生でつらい経験をいくつもしてきましたが、その中で「美点凝視」という言葉を大切にしてきました。これは「相手の短所や欠点ではなく、長所や優れた点に意識的に目を向けること」という意味です。先輩から教えていただいた言葉なのですが、以来、人と接するときや人生を歩むうえでの教訓にしています。

■大学生へのメッセージ

会社員になると、どうしても自分のために使える時間は限られてしまいます。私自身も学生時代には、スポーツを中心にアルバイトや授業を通して多くのことを学びました。皆さんにも、学生のうちにしかできない経験を通して、たくさんのことを学んでいただければと思います。どうか、学生時代ならではの時間を大切に過ごしてください。

学生新聞オンライン2025年10月10日取材 情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥

武蔵野大学3年 吉松明優奈/情報経営イノベーション専門職大学1年 徳原拳聖/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥

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