Reading Act「スクルージと呼ばれた男」 ~名作『クリスマス・キャロル』を6人で表現~

2025年12月28日から、東京・博品館劇場にてReading Act「スクルージと呼ばれた男」が開幕しました。
イギリスの国民的作家であるチャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」をもとにした、オリジナル Reading Act「スクルージと呼ばれた男」を、2025年12月27(土)~12月30日(火)に博品館劇場にて上演します。
本作はリーディングアクトという朗読劇をベースにしてストレートプレイのような演技や演出を取り入れた形で表現し、『クリスマス・キャロル』を 6 人芝居に再構築した作品となります。出演は、新木宏典さん、林光哲さん、前川優希さん、三井淳平さん、三本木大輔さん、河相我聞さんといった豪華キャストが名を連ね、翻訳・脚本・演出は、海外戯曲の現代的な解釈と繊細な演出に定評のある若手気鋭の下平慶祐さんが担います。
今回は開幕に先駆けて、12月27日に行われた囲み取材とゲネプロを取材させていただきました。
■とっておきのおもちゃ箱のような”Reading Act” 〜囲み取材〜
Q.心境や意気込みをお願いします。
新木宏典:これまで様々なエンタメの形で表現されてきた『クリスマス・キャロル』を、今回は『スクルージと呼ばれた男』というタイトルで朗読劇に作り変えて皆さんにお届けします。クリスマスが明けてすぐの上演になりますので、皆さんがクリスマスを体験した上で、この作品を届けることができてとても光栄に思っています。
河相我聞:非常に緊張しておりますが、みんなで和気あいあいと稽古をやっておりましたので、楽しい舞台になるのではないかと思っております。よろしくお願いします。
三本木大輔:一富士、二鷹、三本木、三本木大輔です!今回、演出の下平慶祐さんが「この作品をおもちゃ箱のような物語にしたい」ということを仰っていたので、僕たち6人でとっておきのおもちゃ箱を皆様にお届けできるように丁寧に紡いでいきたいなと思っております。よろしくお願いします。
三井淳平:皆さんにとって年の瀬はとても大切な期間だと思うので、この舞台を観に来てもらったからには「朗読劇が見られて良かったな」と幸せな気持ちになるような作品にできたらと思っています。よろしくお願いします。
前川優希:今まで僕はあまりクリスマスを大事なイベントだと思ってこなかったのですが、この作品に参加できたことによってクリスマスの特別さ、人に愛を分け与えることの特別さを改めて勉強させていただいたような気持ちになっております。この作品をご覧いただいた皆様にも、そういう気持ちが訪れたらいいななんて思いながら、精一杯お届けしたいと思います。よろしくお願いします。
林光哲:『クリスマス・キャロル』を演出の下平さんと、これほどのメンバーで創り上げましたのでおもしろい作品になっていると思います。クリスマスは終わってしまいましたが、”アフタークリスマス”として楽しんで観ていただけたらなと思います。よろしくお願いいたします。
Q.不朽の名作である『クリスマス・キャロル』を題材としていますが、稽古をしてみていかがでしたでしょうか?
新木:寓話が不朽の名作になり、長い間このような作品がエンタメとして続けられている背景には、人類が抱える感情・社会問題などに向き合っていること、向き合っている過程で抱く感情というものは、実は昔から良くも悪くもほとんど変わっていないんじゃないかなというふうに個人的に思います。
この物語は、学ぶこと、見直すこともできるような題材のものなのだと僕は思っているので、観ていただきたいです。
見どころとしては、物語全編を通してのスクルージが変化していく様というところが一番の魅力になると思います。
Q.台本を最初に読んだ時の印象と、実際に稽古をしてみて印象が変わったことなどありますか?
河相:台本を読むと、よく知っている『クリスマス・キャロル』のスクルージの話なのですが、声だけで一人で何役も演じわけ、場面ごとに空気を作るということが少し難しいように思いました。手探りでやっていたのですが、皆さんと稽古をして合わせてみると、役者一人ひとりが作り込みをしているので、世界観や見えるものが全然違っていて、これは素敵な作品だなというふうに思いました。 今となってはしっかり完成されたのではないかなと思っております。
Q.稽古場での雰囲気はいかがでしたか?
三本木:「朗読劇」と言っても、動きもあったりするので目まぐるしいお話なのですが、キャストの皆様がすぐにできてしまうところも素晴らしいなと感じました。
そして、(河相)我聞さんが、台本に「上下(カミシモ)」ではなく「左右」と書き込みをしていたのを見てお茶目な人だなと思いました。
グッと集中する現場だったのですが、仲良くもなれて、とても質の高い稽古場だったなと思います。
Q.本作は”Reading Act”という形の朗読劇ですが、普通の朗読劇と違う部分や苦労した点などあれば教えてください。
三井:舞台上にある小道具を役者たちで動かしながら、絵変わりを表現するところです。そのような細かいギミックも全部自分たちでやるものですから意外にやることが複数ありまして、マルチタスクをしなくてはいけないところは少し苦労したかなと思っています。今回の作品は、朗読劇の”声”で表現する部分と、僕たちの”身体”を使ってお客様にお芝居を届けるというところのいいとこ取りで、良い意味で混じり合った作品であるなと思いますので、お客様に魅力的に感じていただける作品になっているのではないかと思っております。
Q.男性俳優6人だけでクリスマスキャロルの表現をするということについて、稽古や舞台稽古を通じてどのように感じましたか?
前川:Reading Act『スクルージと呼ばれた男』の中で登場人物の数を数えてみたところ確実に12人以上はいるんです。それを6人という半分以下の人数でやるということ、さらに潤沢に取れたとは言えない稽古時間の中で、本番に至るまでに積み上げることのできるスキルフルな俳優さんの輪の中に混ぜていただけたのは、俳優冥利に尽きる幸せなことだなと思います。このようなことを自分で言うのもおかしいかもしれないのですが、俳優に負荷がかかればかかるほど、そしてその俳優の負荷と熱量が比例すればするほど、とても素晴らしい爆発力を持った作品になると演劇に対して常に思っています。今回はそれを全員が体現するような作品と本番になるのではないかなと思っております。皆様にも楽しんでいただけたら幸いでございます。
Q.演出面での見どころがありましたら教えてください。
林:みんな苦労しているのですが、演出のセットを自分たちで移動するところです。台本への書き込みの量も多いんです。
朗読劇で稽古期間がぎゅっとしている中で、僕を含め、皆さん必死にそれを体現してやっています。
僕たちが大変な分、見応えがあるものになっているなとは思っていますし、演出の下平さんのセリフや動きの解釈の部分もとてもおもしろいです。これをやり遂げたときにお客様に素晴らしいものが届いているんじゃないかなと思っています。
下平さんの今回の演出の部分で自分も参考になるところがあったので、皆さんと出演できてとても嬉しいなと思います。
Q.様々な役を演じることの難しさや、稽古中に大変だった点を教えてください。
新木:一人が複数の役を演じるという演劇もありますが、多くは一役をやります。それも一ヶ月ほど稽古期間がある中でできることなのですが、朗読劇の場合はどうしても稽古日数が減ってしまいます。声の表現でお客さんに想像させられるような台詞回しを短期間でできるようにならなくてはいけないというところで、難しさがあるのではないかと思います。
ただ、朗読劇ならではの役作りとして性別を超越したり、自分の年齢とは違う色々な役ができるということが一つのおもしろみだと思います。
Q.この一年振り返っての感想と来年の抱負を教えてください。
林:今年も休みなくお仕事をやらせていただいたのですが、個人的にもう少しお芝居のレベルアップをしたいと思っています。他にも人のために生きるみたいなことを来年は意識していきたいなと思ったので…来年何か困ったことがあったら僕と僕の親戚ぐらいまでの範囲で勢揃いで助けに行くので、オフィスサカイまでメールしてください笑 よろしくお願いいたします!
前川:2025年は色々な挑戦をさせていただいて、その中で多くの発見をしたなと思っています。それは自分の外の世界に対してもそうですし、自分の中に生まれたものを新たに見つけたという一面があるなと思っています。来年からもまだ見つけていないものだったり、見ていない景色や経験していないことを精力的に足も頭も動かしながら探していく年にしていけたらなと思います。
三井:やはり来年もまたお芝居をしていきたいなと思っております。今回こうして朗読劇という形で素敵なキャストの皆様とご一緒して、皆さんのお芝居に対する姿勢、みつさん(林さん)のボケのクオリティとか、そういったものをたくさん勉強しましたので笑 来年に活かして、役者として一皮剥けたいなというのが2026年の抱負です。
三本木:2025年は僕にとって、大きな一歩を踏み出せた年でした。今までの僕であれば、今一緒に並んでいる皆様とお芝居をする機会なんて手に入らないところにいたのですが、来年もまた皆様と板の上で会えるよう、実力と運を自分のものにして進んでいけたらいいなと思っております。よろしくお願いします。
河相:私は毎年変わらず悪い役を演じることが多いのですが、今年最後を美しい作品で締めくくることができて非常に嬉しかったなと思います。
来年の抱負としまして、私は50歳になるのですが、この作品のように若い方とご一緒させてもらうと体力や色々な能力が全然違うんです…。来年は体力をつけて、もう少しキャパシティを増やせるようなトレーニングをして、また皆さんとご一緒にできるように頑張りたいと思います。
新木:2025年はおかげさまで充実した仕事をさせていただきました。スクルージおじさんと唯一違うところでいうと、僕は生への執着が足りないと思っていまして、”いつ死んでも後悔しないための毎日を生きる”ということを基本に置いて必死に生きているんです。
今回の現場もそうですが、年々歳を重ねるにあたり老いていくことを痛感していきます。河相さんはじめ、後輩の皆さん、次世代を担っていく若い子たちと共演できると、何を託していこうかということを考えます。だから若い子たちと共演できる現場というのは、本当に刺激的だなと思うので、理想の追いかけたい背中を来年も見せられるように、必死に生きていきたいなと考えております。
Q.公演を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いします。
新木:『クリスマス・キャロル』という180年前にできた原作が題材になっております。短い稽古日数でやるにはあまりにも情報の多いものだったのですが、僕たちは新しくも説得力のある朗読劇を準備してまいりました。
色々なエンタメの形で作られている『クリスマス・キャロル』を朗読劇というジャンルで表現いたしますので、また新しい『クリスマス・キャロル』に出会えるのではないかなと思います。
自信を持って、胸を張って、皆さんにこの劇場からお届けしていこうと考えておりますので、ぜひお時間ご都合がつく方は劇場で観ていただけたらなと思います。千秋楽まで精一杯務めます。よろしくお願いいたします。






■年の瀬に立ち止まって考える、スクルージの生き方 〜学生の観劇レポート〜
“Reading Act”という名前の通り、「読む」と「演じる」の境界に立つ表現の作品だったように思います。暗転中に舞台装置を転換する演出は珍しくないと思うのですが、舞台上の役者さんが見える状態でセットを動かすことを演出として表現していたのが新しい形の朗読劇だと思いました。
『クリスマス・キャロル』のお話は「スクルージが改心する物語」というイメージが強い方が多いと思うのですが”クルージと呼ばれた男”で描かれていたのは、スクルージが善人へと変化する瞬間ではなく、”スクルージ”という一人の人間の生き方や、その人生の積み重ねだったように感じました。
クリスマスに特別な思い入れがない人や、今年のクリスマスを特に何もせずに過ごした人こそ、年の瀬にこの作品を観たときに感じるものがあると思います。
これまで何をしてこなかったかではなく、これから何ができるのかを考えさせられる素敵な作品です。
城西国際大学2年 渡部優理絵
【公演概要】

Reading Act『スクルージと呼ばれた男』
原作:チャールズ・ディケンズ
翻訳・脚本・演出:下平慶祐
キャスト:新木宏典 林光哲 前川優希 三井淳平 三本木大輔 河相我聞
■公演日程
2025 年 12 月 27 日(土)~30 日(火)
12 月 27 日(土)13:00/18:00
12 月 28 日(日)13:00/18:00
12 月 29 日(月)13:00/18:00
12 月 30 日(火)12:00/16:00
※受付開始・ロビー開場、客席開場は開演 45 分前を予定しています。
■会場
博品館劇場(〒104-8132 東京都中央区銀座 8-8-11-8F)
https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/
・JR「新橋駅」銀座口から徒歩 3 分
・東京メトロ銀座線「新橋駅」出口 1 から徒歩 3 分
・東京メトロ銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座駅」A2 出口から徒歩 5 分
■チケット (全席指定・税込)
S 席:11,000 円
A 席:9,900 円
U-18:5,500 円
※未就学児童の観劇不可。
※車椅子でご来場されるお客さまは、チケット購入後にお名前・ご観劇回・座席番号をご観劇日の前々日までにstage.contact55@gmail.com までお知らせください。
公式 X:https://x.com/readingactstage
公演公式サイト:https://xmascarol-scrooge.com
公演に関するお問い合わせ:info.destyle.stage@gmail.com
チケットに関するお問い合わせ:stage.contact55@gmail.com
■主催・製作
De-STYLE(De-LIGHT/style office)

学生新聞オンライン2025年12月27日取材 城西国際大学2年 渡部優理絵


この記事へのコメントはありません。