俳優 向井理
地道に努力することで初めて見られる景色がある

俳優 向井理(むかいおさむ)
■プロフィール
1982年生まれ。神奈川県出身。『白夜行』(06)で俳優デビュー。近年の出演作にドラマ『パリピ孔明』(23)、『エンジェルフライト』(23)、『ダブルチート 偽りの警官 Season1』(24)、『ライオンの隠れ家』(24)、映画『イチケイのカラス』(23)などがある。
◆大学時代から変わらないことはありますか
ゴールから逆算して考える癖がついたことですかね。大学では遺伝子工学を勉強していて実験が多かったので、導き出したい答えのために何をするべきか、短期・中期・長期的に考えていました。いきなりゴールにワープはできないので、今できることでゴールにつながるものは何かを考える。これは役作りにもつながっています。
たとえば時代劇をやるなら所作が必要だし、立ち回りをやるなら日本舞踊をした方がいいよね、というように考えます。直接ゴールに結びつかないとしても、中間地点につながる何かを見つけて地道に努力することは、大学時代と変わっていないのかもしれません。
◆お仕事で大事にされている思いを教えてください
真面目にしかも必死でやることです。この仕事は自分を選んでもらうところから始まります。そこで一度“選別”が行われていることになります。選んでいただいた期待や信用に必死になって応えていきたいと思っています。
たとえば、料理をする役のときは、料理学校に通って手元の作業もできるようになることで、手元の寄りから引きに流れるシーンも撮影できます。引きと寄りのカットが別の人で撮る場合もありますが、僕はそれだと自分がやる意味がないと感じています。プロとして自分にしかできない仕事をしていきたいですね。
◆映画『パリピ孔明 THE MOVIE』の魅力を教えてください
この映画は今までにないクオリティの音楽映画であるところです。ラップやバラードなどいろいろなジャンルの最前線を走っている方の協力があって、音楽フェスとして楽しめるほどです。観客もCGではなくて実際に入ってもらっているので熱気もリアルです。音響の良い映画館ではより音が響いていい意味で音楽の攻撃性が増すと感じています。それと同時に、撮影では孔明と英子の絆を描くドラマパートも重視していました。
この作品の軸は二人の関係性で、ここがきちんと描かれるからこそ作品として深みが出て面白くなると思っていたからです。だからこそ、孔明と英子の間には絶対に恋愛要素を入れたくないと思っていました。英子を演じる上白石萌歌ちゃんと「孔明と英子はプラトニックな関係性だよね、とすら思われないようにしよう」と話したこともあります。異性関係ではなく、信頼関係を描きたかったので、見つめ合うシーンや喧嘩のシーンもラブが入らないよう意識していました。
◆学生へのメッセージをお願いします
大学は社会に出る前の最後の学習の場だと思うので、一つでも多くの体験をしてほしいです。知識として将来に活きなくても、何かのきっかけで話のネタになるかもしれないし、仕事につながるかもしれない。失敗しないと見えてこないこともあるので、今しかできないことに挑戦してみてください。
◆取材を終えて
「真面目に必死にやること」は、シンプルなだけになかなかできないことだと思います。向井さんは一つひとつの仕事の縁を大切にされていて、言葉の端々から仕事への責任感と愛情を感じ、尊敬の気持ちでいっぱいになりました。
学生新聞2025年4月号 智大学3年 吉川みなみ

映画『パリピ孔明 THE MOVIE』
4月25日(金)全国公開
製作:フジテレビジョン 松竹 講談社FNS27社
配給:松竹
Ⓒ四葉夕ト・小川亮/講談社Ⓒ2025『 パリピ孔明 THE MOVIE』製作委員会

東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 吉川みなみ/東洋大学3年 太田風華
カメラマン 下田航輔 / ヘアメイク:中村了太 / スタイリング:外山由香里
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