俳優・ダンサー 坂口涼太郎 初エッセイ「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」

いろんなものを諦めたときこそ、自分の色が明らかになる。

俳優・ダンサー 坂口涼太郎(さかぐちりょうたろう)

■プロフィール
1990年8月15日生まれ。
森山未來演出のダンス公演でデビュー。
主な出演作は、朝ドラ「らんまん」(NHK)、ドラマ「愛の、がっこう。」(CX)や
映画「ちはやふる(シリーズ)」、「アンダーニンジャ」など。
自身初のエッセイ「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」が講談社より発売中。

俳優として活動する一方で、初の書籍『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』を上梓した坂口涼太郎さん。書籍でも登場する「らめ活」という言葉の通り、さまざまなものを諦めて、その数だけ自分と向き合ってきたと語る。ご自身の経験や書籍に込めた思いについて、お話しを伺った。

■学生時代の過ごし方は?

高校2年生の時、ダンサーとして初舞台を踏みました。父の転勤の都合もありましたが、将来私が身を置く世界を意識して、「東京に近い場所に住んだ方がいいのかな」と思い、高校入学とともに神奈川県に移り住みました。当時から、どんな場所に行ってどんな人と関わっていけば自分が好きな世界にたどり着けるのかを考えていた気がします。とにかく自分の目標達成のためにはどうしたらいいのか。それを突き詰めることに時間を費やしていました。
18歳の時、芸能事務所に所属しましたが、1年間はどのオーディションにも受かりませんでした。当時の敗因を考えると、自分のことがわかっていなかったのだと思います。自分にはどういう強みがあり、どうプロデュースしたらこの肉体を活かせるのか、全く理解していなかった。いま振り返ると「それは受からないだろうな」と思いますね。
あまりにオーディションに落ち続けていたとき、「自分のどこが悪いのか」を考えました。大事なことは、きちんと自分を出すこと。それに気付いてから、「自分はどうしたらこの作品の力になれるのか」という気持ちで臨むようになりました。あと、当時のアルバイト先の規定で耳にかかる髪型が禁止だったので美容院でカットしてもらうとき、「耳だけ出してください」と言ったら、なぜかおかっぱになってしまったんです。でも、偶然にもこの髪型にしてから、どんどんオーディションに受かるようになりました。きっと、自分の強みとこの髪型がマッチしていたんでしょうね。そして、いよいよデビューすることができました。

■演技、歌、ダンス。マルチな仕事のやりがい

この仕事にやりがいを感じているかはわかりません。むしろ、純粋に好きだからやっています。強いていうなら、「自分が喜べるかどうか」「やっていて楽しいかどうか」が基準です。自分がやりたくてやっているものが、結局は他者のためにもなっているのかなと思います。
でも、無理して他者のためにやっていると、それをやっている自分が偉いと勘違いして、むしろ人を追い詰めてしまう気がするので、いつでも「自分がやりたいこと」を大事にするようにしています。
自分がやりたいことを見つけるために、始めたのが「らめ活」です。この「らめ活」は何かを諦(あきら)めることから、自分の大事なものを明らかにしていくという活動です。ずっと「憧れの窪塚洋介さんになりたい」「モーニング娘。に入りたい」と思って生きてきました。しかし、その夢を追いかけ続けても自分では絶対に辿り着かないと気が付いたんです。でも、その世界に行くためには、何かを諦めて、私なりのやり方でその世界を見つけて、辿り着かないといけない。つまり、諦めて明らかにしないとダメなんだと。そう気付いた時に、人生が開きましたね。つまり、諦めることを諦めなかったんです!

■初のエッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』

インタビューを受けた時に、「連載を書いてみませんか?」と声をかけていただいたことがきっかけで、この本を書くことになりました。今まで本を書いた経験はなかったので、「私に出来るのか?」という気持ちはありましたが、とりあえずやってみようと思って、オファーをいただいた日の帰り道、新宿の喫茶店で最初のエッセイを書きました。書いてみると、すごく楽しくて、「新しい面白いことを見つけた!」と思いましたね。いざ書き始めると、最初に自分が書こうと思っていたこととは違うことを書いていたりと、何が出てくるかわからない。書いてみて初めて「自分はこんなことを考えていたんだ」と思う部分も多かったです。書くことは自分を知ること。最高の自己認識なのだと感じました。
本のタイトル『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』は、「ちゃぶ台」と「舞台」をかけました。私は劇場の舞台に立たせていただいて、お芝居やパフォーマンスをしていることもあり、舞台の上で踊るような人生を歩んでいますが、それが私の人生かと言われると、そうではないなと。自宅のちゃぶ台の前でお茶を飲んだり、テレビを見たり、お裁縫をしたり、そういう日常の生活こそが自分の人生の舞台で、本番だよなと思うんです。この想いを、『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』というタイトルに込めました。タイトル候補は他にもありました。ただ、2歳くらいの時から、ミュージカルを見に行った後に、ちゃぶ台の上で踊っては自宅で「涼ちゃんオンステージ」をしていたので、昔からちゃぶ台は私にとっては舞台のようなもの。そこで、このタイトルに決まりました。
私自身、「無理してないか」「他人に言われたことに『そうじゃないのでは』と思いながら従っていないか」「人と比べていないか」と何度も自問自答して、それらを諦めて、自分の色を明らかにしたからこそ、“ちゃ舞台”の上で踊れるようになりました。私の気付きや失敗が書かれたこの本を通して、「同じことをしないように気をつけよう」と思いつつも、失敗を恐れずに、「失敗こそ素晴らしい」と思っていただけたら嬉しいです。

■大学生へのメッセージ

失敗してください。失敗しないように生きろと教科書には書いてあると思いますが、失敗したからこそ、本当の意味で気付いたことや学んだことが、私には沢山あります。無理やり失敗をしろと言うわけではありませんが、自分の意見をもち、「これがいい」と強い気持ちをもって全力を尽くした末に失敗したことは、必ず人生の糧になります。「やっちまった」と思うよりも、「失敗で気付けたからこそ、今後同じ恥を晒すことはもうない」と思って欲しいです。人の顔色を伺ったり、「こう思われるのではないか」と委縮したりして行動できなくなってしまう人も多いですが、恐れずに、自分の意思を全力で発表してください。

学生新聞オンライン2025年8月14日取材 お茶の水女子大学1年 家田有彩

初のエッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』

◎Amazon売れ筋ランキング「歌集」ジャンル1位(2025/8/6)
◎Amazon売れ筋ランキング「演劇・舞台ノンフィクション」ジャンル1位(2025/8/5)
◎楽天ブックス「演劇・舞踊」部門1位(2025/8/6)
★★「らめ活」が「5時に夢中!」(TOKYO MX)BINKANランキング1位で話題★★

お茶の水女子大学1年 家田有彩/昭和女子大学 2年 阿部瑠璃香

衣装協力/ LHME | LION HEART | remer | SHINGO KUZUNO ( 全てSian PR 03-6662-5525 ) 、HOUGA ( HOUGA info@houga.jp )
スタイリスト/takashi sekiya
ヘア&メイク/八木香保里 

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