株式会社メガネトップ 代表取締役社長 冨澤昌宏
カリスマ性に依存しない。2代目に求められる組織作り

株式会社メガネトップ 代表取締役社長 冨澤昌宏(とみざわまさひろ)
■プロフィール
1981年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、広告代理店勤務を経て2005年株式会社メガネトップ入社。2009年、28歳で代表取締役社長に就任。就任後、経営理念の改定、ロゴの刷新、レンズ・フレーム一体価格、自社製品の開発など、様々な改革に着手。2012年に業界売上№1を獲得し、2025年に至るまで業界売上№1を継続している。
「眼鏡市場」を1000店舗以上展開するなど、国内売上高業界トップのメガネトップ。そんなメガネトップの冨澤昌宏社長は、創業者である父の跡を継ぎ、わずか28歳で社長に就任した異色の経歴の持ち主だ。今回はそんな冨澤社長に、2代目に求められる役割や業態転換の経緯、今後の展望などをお伺いした。
小学校のときの卒業アルバムを見ても、将来の夢に「メガネトップの社長」と書いていたので、子どもの頃から「大人になったら親の跡を継ぐもの」という意識はありましたね。ですが、大学卒業後に就職したのはメガネトップではなく、広告代理店でした。社会を知らず二代目としてメガネトップに入社するのではなく、異業種の会社で勉強しようと考えていたのですが、ちょうどその頃メガネトップの立て直しの業態転換などもあって、結局2年ほどで静岡に戻ることになりました。メガネトップ入社後、最初は経営企画室で会社全体の数字分析や不振店舗の立て直しを学びました。次に営業副本部長として商品企画や決裁の流れなどを知り、その後は常務としてIRを担当しました。そして3年後の28歳の時に社長に就任して、創業者の父は会長となりました。父も健在なので、こんなに早く社長に就任するとは思っていませんでした。しかし、父としては自分が健在な内に様々な経験をさせることで、もし何か問題が起きた時には自分が修正できるように、また、仮に私に経営者としての資質が不足していたとしても、学び直せる余地を持ちたかったそうです。
■カリスマの後を継ぐ2代目として
社長になる前の3年間の学びを通して、やはり私と父は性格も違うしやり方も違うということは感じていました。その中で、私に期待されているのは5年後、10年後の会社をどうするかだと思い、会社の将来を作っていくためにどうするべきか、自分自身が周りにどう見られていく必要があるか、目指すべき社長像を少しずつ固めていきました。また、父は創業者として0から1を作り上げたカリスマ的なオーナーで、周りは反対意見を言いづらい環境でした。スピード感をもってそのカリスマ性を駆使したことが、わずか30〜40年で業界No.1になれた要因でもありましたが、組織が大きくなると同じことを続けるのは難しくなってきます。そこで、私は父とは反対に、社員が意見を言える風土づくりや組織の整備に力を入れました。組織が大きくなるにつれて、創業者のカリスマのパワーが届きにくくなっていくものです。それに代わる制度や組織をどのように作っていくのか、そこを意識する必要があると感じました。そのために社員との会話時間も増やしました。また会長と社員の橋渡し役になることによって、組織の歯車がかみ合うようにするのも私の役割の1つです。
■「眼鏡市場」という業態とそのこだわり
もともとメガネトップはディスカウント業態だったのですが、業績が悪化して不採算店が多くなっていました。そこで「2万円均一」で追加料金0円というシンプルなコンセプトで人気を博していた競合店に着目して、均一価格店舗の「眼鏡市場」という新しい屋号でオープンをしました。不振店舗を次々と眼鏡市場に転換していき、売上が2〜3倍になる店舗も出てきました。2006年以降に既存店のリニューアルと新規出店を急速に進め、業界内の順位を一気に引き上げることができました。
しかし、競合が同様の価格戦略を始めたため、価格の優位性だけでは差別化が難しくなってきました。そこで、自社製品の開発にもより力を入れるようになりました。元々、福井県鯖江市にメガネフレームを製造する自社工場を持っていましたが、眼鏡市場に切り替えてからはさらに自社製品の開発に力を入れていきました。そうして、2010年頃から自社製品である「FREE FiT(フリーフィット)」、「i-ATHLETE(アイアスリート)」、「ZEROGRA(ゼログラ)」といった商品を次々と発売していきました。これらは軽さやかけ心地、丈夫さなどの点にもこだわり、お客様の「負」を解消する機能性を持つ商品として、競合との差別化のポイントになりました。
■国境や国籍に捉われずに企業理念の実現を
「関わる皆の幸せを実現し、笑顔を創造する」という企業理念のもと、今後国内のメガネ販売件数のシェア30%を目指しています。デジタル活用に力を入れており、オンラインでメガネ購入や、アプリでお客様のメガネのデータを管理することでメンテナンスの案内なども行っています。現在は、台湾でも35店舗の眼鏡市場を展開(2025年11月現在)しており、日本と同様にやはりNo.1を目指しています。企業理念は国境や国籍に関係なく共有することができるので、海外でも社員の成長や行動の精度を上げることで、より多くの仲間やファンを増やしていきたいと考えています。そのために力を入れているのが、やはり社内制度や社員教育、商品の魅力向上です。そして何より単にいいメガネを売るだけではなくて、お客様に喜んでもらえるメガネを販売することを大切にしています。人の困りごとに役に立つことを喜びと感じられる人や、そこにやりがいを感じてくれる人と一緒に働きたいと思っています。
■大学生へのメッセージ
将来のビジョンや夢、目標をしっかりと持ってほしいと思います。大学入学時点で明確な目標を持っている人もいれば、大学生活の中で見つけていく人もいるでしょう。しかし、就職や次のステージに進む際には、どんな小さなものでもいいので、自分なりの夢や目標を持って行動して欲しいと思います。目的なく惰性で過ごすと、失敗した時に他責にしがちですが、目標があれば、達成できなかった場合も自分に何が足りなかったかを振り返り、次に活かすことができます。そして達成できた場合には、次の大きな目標に向かって進むことができます。若い内はチャレンジできることが多ので、ぜひ夢や目標、挑戦する意欲を持って進んでいってください。
学生新聞オンライン2025年9月16日取材 法政大学3年 島田尚和

情報経営イノベーション大学1年 襟川歩希/法政大学3年 島田尚和


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