株式会社永谷園 マーケティング本部 R&D統括部 中嶋梨絵
言われたことだけでなく、常にプラスアルファの提案を

株式会社永谷園 マーケティング本部 R&D統括部 中嶋梨絵(なかしまりえ)
■プロフィール
2020年、永谷園に入社。商品開発戦略部に配属され、そうざいの素やふりかけの商品企画を経験。その後、2023年4月より現在所属しているR&D統括部へ異動し、商品の味づくりから量産化までを担う商品開発業務を担当。「本日の逸品 ふんわりかに玉」や「パキット漁師風ペペロンチーノ」等の開発を担当した。
「味ひとすじ」を企業理念に掲げ、日本の食文化を支える安全で高品質な商品を提供し続けているのが永谷園。お茶づけやそうざいの素など多くの商品を展開しているが、今回は商品を生み出す「開発」という過程に着目した。そのやりがいや商品作りの工夫、新商品が生まれる過程などについてお伺いした。
■永谷園に入社した理由を教えてください
元々理系で大学では食品系の研究をしていて、大学院にも進んでいました。それもあって他の業界はあまり見ずに、食品メーカーと化粧品メーカーを見ていましたね。実際に受けたのはほぼ食品メーカーで、色々なところを受ける中で最終的な決め手になったのは人の良さでした。面接してくださった方や人事の方がなんとなく自分と似ているなと感じて、それが決め手になりました。
■仕事の内容や魅力を教えてください
商品開発を担当する部門の1つ、R&D統括部に所属しています。ものづくりには企画の部分と、企画をしたものをどのように商品として具現化するかという2つのパートがありますが、その中で私は後者のパートを担当しています。そして具現化には、味づくりと量産化の2つの側面があります。まず味づくりですが、商品企画部門からどういう味にして欲しいというイメージ品が提示をされ、様々な原材料を組み合わせながら再現していきます。次に量産化ですが、味づくりが完成したらそこで終わりではなく、それを工場でも再現する必要があります。量産化するための様々な検証や課題解決も私たちがしています。どの商品でも安全安心でおいしいものができるか、実際に何回もテストしながら量産化に取り組んでいます。テスト生産を行う過程で様々な課題が出てきたりしますが、その課題をいかに潰すかいつも試行錯誤を繰り返しています。無事に課題が解消されて本番の生産が成功した時にはとてもほっとしますし、大きなやりがいがありますね。
■新商品が生まれる過程について教えてください
まず商品企画部門から依頼を受け、商品のコンセプトやターゲット、味の特徴などの概要説明を聞きます。
例えばそれがあるお店の麻婆豆腐だったりすると、そこに商品企画部門の人と食べに行って味のすり合わせをしていきます。あとは商品企画部門の人が市販品を組み合わせて、手作りをしたものなんかもありますね。
その後、イメージに合わせてラボで試作を重ね、企画部と何度もやり取りをしながら改良していき、味の方向性がざっくりと決まります。このタイミングでテスト生産を行って、課題を洗い出して配合なども調整します。並行して微生物の検査や成分検査などの検査も行って、会社の基準を満たしているかなど安全性の確認をします。そして最終的に会議で発売の合意が取れたら商品化されます。企画から店頭に並ぶまで約1年ほどなのですが、発売の半年前にはほぼ完成しています。完成後も賞味期限内はきちんと保存性が担保されているか確認する必要があるので、完成してもすぐに発売できるという訳ではありません。
■商品開発をする際の工夫を教えてください
実は商品企画部門のオーダーには味だけでなく「何円以内にコストをおさえて作って欲しい」という指定もあります。中身にたくさん材料を使えばおいしいものを作ることはできますが、それでは価格も高くなってしまいます。お客様に買っていただける価格には上限があるので、その限られた予算の中でやりくりをして味の再現をしていく必要があります。そこは工夫が大切になってきますね。しかも、食材の価格や品質は必ずしも一定ではありません。例えば海苔やお茶などの天産物はその年の天候などによって出来が悪く味が落ちる時があるのですが、だからといって出来上がったお茶漬けの味が落ちてもいい訳ではありません。変わらぬ味を出していくために、その揺らぎをどうにか埋められるよう努力しています。みなさんの立場からだと見えづらいかもしれませんが、実は私たちが水面下で色々と工夫をしてやりくりしています。あとはプラスアルファの提案をするということは部署全体で意識をしていますね。ただ依頼されたものをそのまま作る下請けのような感じではなく、自分はこれがおいしいと思うとか、これがこういう商品にあっているんじゃないかといったように、常にプラスアルファの提案をしています。例えば「中華っぽい風味を出してください」というざっくりした依頼があった時には、ごま油を立たせてみたり、ねぎとしょうがで中華っぽさを出してみたり、あるいは中華料理で良く使われるペースト状の調味料である「醬」を加えてみたり。色々な特徴をつけたものを何パターンか用意して、その中で自分がその商品に合っているのではないかと思うものを提案しました。時には先輩からアドバイスなどをもらいながら、様々なアイディアを考え続けています。
■大学生へのメッセージをお願いします
やはり大学生には時間がたくさんあると思うので、時間があるうちにやりたいことはやっておいて欲しいですね。春休みも夏休みも長いですから、旅行が好きだったら長期の旅行に行ってみるなど、普段できないことをしてみて欲しいです。もちろん大人になっても行けるんですけど、値段が高い時期にしか行けなかったりするので。あとは私が今食品メーカーにいるからというのもありますが、色んなところで色んなご飯を食べて、アイディアの引き出しを増やしておくのも大事かなと思います。何事も色々な経験をしておいた方が、それがアイディアに結びついたりしますよ。
学生新聞オンライン2025年9月5日取材 法政大学3年 島田尚和

法政大学3年 島田尚和/東京家政大学2年 篠田陽菜乃/昭和女子大学2年 阿部瑠璃香/武蔵野大学3年 吉松明優奈


この記事へのコメントはありません。