株式会社バスクリン 代表取締役社長 三枚堂正悟

90年という歴史の積み重ねで日本中を健康にする

株式会社バスクリン 代表取締役社長 三枚堂 正悟(さんまいどう しょうご)

■プロフィール

1963年岩手県に生まれ、千葉県で育つ。学生時代に打ち込んだサッカーでは、インターハイベスト8にまで進出した。日本大学文理学部を卒業後、アース製薬株式会社へ入社。2014年、役員待遇管理本部経営企画部部長に就任後、同社取締役経営統括部統括部長・バスクリン社外取締役を経て、2020年2月、バスクリン代表取締役社長に就任。

健やかで心地よい生活を提供することを社是とする株式会社バスクリン。明治時代から続く長い歴史の中で、入浴剤を使うことを一般化させることに成功。在宅ワークが増え、ますます入浴剤の需要が高まる中で、バスクリンはさらにどんな高みを目指していくのか。三枚堂社長にお話を伺った。

 大学時代は、小学生から続けてきたサッカーに打ち込みました。寮にも入り、寮生活とサッカー部を中心に活動していました。サッカー部の練習が授業と重なり、授業に出られず、単位は2年生になってから必死にとるということもありました。4時半に起きて朝ごはんを作ったり、寮では4学年が一緒に住んでいるので一種の緊張感がありましたね。当時の仲間は、今でも連絡を取り合い、一生付き合える大切な仲間ですね。心の支えになっている存在です。
 当時は小学校、高校のときに出会った先生の影響が大きく、サッカーの指導者になりたいと考えていました。そのため、教員を目指し、就活はあまりしていませんでした。しかし、教育実習に行ったとき、「自分は本当に教師を一生続けたいのか?」と考えるようになりました。実際は教育者ではなく、「指導者」になりたかったんだなと実感し、教員を目指すことをやめ、アース製薬に中途入社しました。

■人とつながることの喜び

 アース製薬に入社後、初めは営業として働き、そして会社の上場のための準備に携わりました。この経験は今の自分の自信につながっています。その後、異動もあり今の会社で3年になります。
 やはり、人と出会えることがこの仕事の楽しみだと感じます。もともと生活に密着した商品を取り扱いたいという思いもあったので、今の仕事には本当にやりがいを感じています。また、私たちメーカーは、商品を手に取ってもらった方に喜んでいただく機会があります。「この商品を使っていて良かった」と感謝を伝えていただくこともあり、そこに至るまでにいろいろな人が関わっていると考えると、この一言が聞きたくて仕事をしているんだ、と思うことができます。また、会社に入っていろいろなことを学び、人と出会って成長し、ここまで来れたと思いますし、本当に今楽しいと感じます。また、経営する中で考えるのはあまり気負いすぎないことです。自分がだめだったら他の人がいます。変化は見過ごさずチャレンジし、とにかく今やれることを精一杯やる。そして、失敗したらそのときに考える。そうした気持ちを大切にするようにしています。

■どこにも負けない歴史ある商品を扱う

 弊社は、真面目でコツコツ働く人たちが多い会社です。バスクリンという商品は誕生から90年以上経っています。その年月は、やはり簡単に打ち立てられるものではなく、入浴剤のパイオニアと言えます。健康や癒しという習慣を根付かせている商品は他にはないと思います。また、その年月の積み重ねによるデータやエビデンスに自信を持っています。専門性が高く、知見においてはどこよりもあると思います。これをいかにわかりやすく提供していくか、ということが大切かと思います。
 コロナ禍で在宅率が高まり、入浴剤の需要も大きくなりました。常に誰かと一緒に家にいることが多い中で、入浴の時間はリラックスできる貴重な時間なんですね。その入浴の時間に香りを楽しめたり、就寝前の入浴でよく眠れるようになったりするなど、入浴の時間をより充実させるお手伝いができたらと思います。
 また、弊社には「日本の名湯シリーズ」という人気商品があります。全国の温泉地とタイアップした商品ですが、家で全国の温泉に行った気分を味わえるというシリーズです。この秋から、その売上の一部は温泉地に寄与させていただいています。そのため、熱海の震災の後には、お客様からこの支援に賛同が得られ、この商品を買っていただいたこともありました。こうしたこともお客様に受け入れられてきているのではないかと思います。今後も女性向けの美容関係の商品や、子どもと親が一緒に過ごす時間を楽しくする商品など、さまざまな角度から商品を開発していきたいですね。
 毎日入浴し、身体を綺麗にして温めるという習慣は、日本独自の文化です。この入浴の文化を若い世代にももっと浸透させ、良い習慣であることを伝えていきたいと思っています。現在、お風呂でお湯に浸かる人は日本で約パーセントと言われています。その中で、入浴剤を使う人はさらに限られています。そのため、日本国内でもより入浴剤を使っていただけるような努力をし続けていきたいと思っていますし、さらには、世界の人にも入浴剤を使っていただけるようなフィールドを広げていけたらと思います。外国の人が日本に来ると温泉に入りますよね。そうした入浴の文化を世界にも輸出し、バスクリンを世界中へ発信していけたらと思っています。

■message

 人生の中で、大学生の時間はとても楽しいと思います。その時間が、コロナ禍で制限があるというのは本当に切なくなります。しかし、その中で工夫する力はどの世代よりもついていると思います。制限されている中で何ができるか、楽しみ方、家での過ごし方など、工夫できることはあります。貴重な経験を大切にして、決して後ろ向きにならず、新しい土壌を築いたと考え、その中でしっかりと楽しんでほしいです。私は、「頑張って」とは言いたくありません。しかし、工夫して「楽しむ」ことは全力で頑張ってほしいなと思います。

学生新聞2022年4月号 津田塾大学4年 川浪亜紀

法政大学2年 鈴木悠介 / 津田塾大学4年 川浪亜紀 / 国立音楽大学1年 岡部満里阿 / 明治学院大学4年 小嶋櫻子

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