ライフイズテック株式会社 代表取締役 CEO 水野 雄介
世界中にワクワクする教育を普及する
ライフイズテック株式会社 代表取締役 CEO 水野 雄介(ミズノ ユウスケ)
◾️プロフィール
1982年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同大学院修了。大学院在学中に開成高等学校の物理非常勤講師を2年間務めた後、人材コンサルティング会社を経て、2010年にライフイズテックを創業。中高生一人ひとりの「世界を変える学び」のための教育×テクノロジーに注力しながら、企業や自治体とも連携し、社会をより良く変えていく次世代のデジタル・アントレプレナー育成に取り組む。
学生時代から「教育」と「社会」に強い関心を持っていたというのが、ライフイズテック株式会社・CEOの水野雄介氏。これまで、理想の教育を実現するために、教師としての経験を経て、社会全体を変える必要性を感じ、起業を決意。現在では、教育とITを融合させ、実社会に役立つ学びの場を提供する水野氏にお話を伺った。
学生の頃から、私は「教育」と「社会」に対する深い興味を抱いていました。特に、熱中していたのが理系の学問である物理です。でも、その一方で教育制度に対して深い疑問も持っていました。周囲の学生たちを見ても、まるで進学するためだけに勉強しているように感じることが増え、私自身も「このままで本当にいいのだろうか」と考えるようになりました。そんなとき、私が理想とする教育とは何か、そしてその実現方法について真剣に考えるようになったのです。
既存の教育は、非常に堅苦しく、画一的であるということ。そもそも、物理という学問自体が「本質を探る学問」だと、私は思っていました。それに対して、世間が押し付ける「正解」を教える既存の教育制度に強く疑問を感じ、もっと個性を尊重する教育が必要だと考えるようになったのです。この思いが、私を教員免許取得の道へと駆り立てたのです。
◾️教育だけでなく社会も変える
大学の1年生から4年間、私は「教育制度を変えたい」という想いを胸に教員免許を取得しました。忙しい理系のカリキュラムの中で教育実習や教員免許の勉強を並行させるのはかなり大変でしたが、それ以上に充実感を感じることが多かったです。教育実習中も、私は生徒と向き合う中で、自分がいかに「理想的な教育」を実現したいかを再確認しました。その後、大学院での研究と並行して、私立の高校で非常勤として2年間教鞭をとりました。この経験が、後の私のキャリアの方向性を決定づけたのです。教師として働きながらも感じたのは「社会に出てみないと本当の教育はわからない」ということでした。次第に「教育を変えるためには、教育現場だけではなく、社会全体を変える必要がある」と強く思うようになりました。そこで、社会経験を積むために、ベンチャーとしても注目を集めていた人材コンサルタント会社に就職することを決めました。
業務上、中小企業の社長に接することが多かったのですが、彼らの挑戦心や事業への熱意に触れ、「自分も何か新しいことをしたい」という気持ちが強くなりました。そうした経験を通じて、学問だけではなく、社会全体が「変化を求めている」という感覚を強く抱くようになり、教育を変えるために行動を起こす決意を固めるようになったのです。
◾️理想の教育のために
企業での経験の後、私が選んだのは起業の道です。メンバーは、テニスサークルの友人や、同じベンチャー企業で働いていた仲間たちです。
最初は教育の具体的なビジネスモデルやサービス内容を考えるよりも、「どんな教育を提供したいか」を強く意識していました。理想の教育を提供するためには、まずその世界観を作り、みんなでそのビジョンを共有することが重要です。この起業の段階で、私は本当に多くの本を読み、さまざまな成功者のケーススタディを学びました。中でも印象に残っているのは、スープストックの創業者である遠山正道さんの話です。彼の「スープのある1日」というアイデアに触発され、私は「教育もストーリーとして語れるものだ」と考えるようになりました。教育を提供するだけではなく「どんな世界を作りたいのか」「どんな人々がどんな人生を歩むのか」というビジョンを明確に描き、それをサービスに反映させようと決意しました。起業から少し経ち、私たちは中高生向けに職業体験ができるキャンプを企画したのですが、これは実現しませんでした。では何をしようかと思った時、非常勤講師時代に、ITが好きで自分が作ったものを「見て見て!」と言ってくる生徒が多かったのを思い出しました。
ちょうどシリコンバレーで子ども向けのITキャンプが行われていることを知り、これを日本でも展開したいと考えました。実際に現地に視察に行き、IT分野に興味がある中高生たちを対象としてプログラミングキャンプを開催しました。これが、「ライフイズテック」の始まりです。その後、様々な事業に挑戦しつつ現在では学校向けのプログラミング学習用オンライン教材「ライフイズテック レッスン」の提供にも力を入れています。これにより、地理的な格差を超えて、より多くの中学生・高校生に質の高いデジタル教育を届けることができるようになりました。さらに、企業のリスキリング支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援といった分野にも展開し、教育だけでなく社会全体に変革をもたらすための取り組みを進めています。
また、ライフイズテックのキャンプで中高生を教えるのは大学生メンターです。次世代の教育に関わりながら、同時にデジタルやコミュニケーションの力を伸ばしていく大学生メンター育成プログラム「Leaders」も開催しています。
◾️学生へのメッセージ
学生のうちに海外に行っておくことを強くおすすめします。卒業してから職に就くと、時間はどんどん取れなくなっていきます。自分だけの価値観で生きるのではなく、こういった生き方をしている人もいると、多様性を知ることが自分への最大の投資になるはずです。そして、情熱と意思を持って日々を過ごしてください。私の場合、教育に対する情熱と、社会全体を変えていく意志が、私を起業という道へと導いてくれました。これからも、教育という分野を通じて、より多くの人々に影響を与え、社会をより良い方向へと導くために努力し続けていきたいと思っています。
学生新聞オンライン2024年11月7日取材 中央大学3年 前田蓮峰
中央大学3年 前田蓮峰 / 立教大学4年 緒方成菜
この記事へのコメントはありません。