シャープ株式会社 代表取締役社長執行役員CEO 河村哲治
ひとに寄り添い、半歩先の未来をつくる

シャープ株式会社 代表取締役社長執行役員CEO 河村哲治 (かわむらてつじ)
■プロフィール
1961年11月10日生。1984年4月にシャープ株式会社入社後、欧州マーケティング統轄 兼 SEE(欧州統轄会社) 社長(2014年10月)、 欧州代表 兼 SEE社長(2016年9月)、米州代表 兼 SEC(米国販売会社)会長(2017年8月)、スマートビジネスソリューション事業本部長(2022年4月)、常務執行役員 スマートオフィスビジネスグループ長(2024年6月)、などを経て、2026年4月より社長執行役員 CEO。
家電から産業機器まで、暮らしのさまざまな場面を支えるシャープ。創業者・早川徳次氏が考案したベルトのバックルで事業をスタートし、その後、社名の由来にもなった「エバー・レディ・シャープペンシル」を開発。以来、数々の革新的な製品を生み出しながら成長を続けてきた。今回は、代表取締役 社長執行役員 CEOの河村哲治さんに、社長として大切にしていることやシャープの今後の展望、大学生へのメッセージを伺った。
高校卒業後は、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)に進学し、英語を専攻しました。外国語大学出身ですが、学生時代にはパスポートを取ったこともなく、周囲からはよく驚かれました。当時、英語学科では卒業論文を英語で書く必要があり、タイプライターで何十枚もの論文を書いたことを覚えています。
学生時代は、大阪の日本橋にある電気街を見て回るのも好きでした。ウィンドウショッピングをしながら電化製品を見るのが趣味の一つでしたね。
シャープに入社したのは、当時は海外事業本部採用というものがあり、「いつか自分は海外で活躍できるような仕事に就きたい」という学生時代の思いとも重なったことが大きな理由です。関西企業としての親しみもあり、非常に人のあたたかみを感じる会社だと感じました。
■人々の生活に寄り添うシャープ
2025年9月に、「ひとの願いの、半歩先。」というコーポレートスローガンを制定しました。気がつけば、朝起きてからから夜寝るまで、さまざまな場面で人々の暮らしに寄り添っている。家電だけでなく、産業機器も幅広く手掛けていることが当社の特徴です。
例えば、コンビニエンスストアでは、シャープのマルチコピー機がシェアの約6割を占めています。コピーだけでなく、住民票などの証明書の発行や推し活の写真やシールのプリントなどでの利用も増えています。また、セルフ式ガソリンスタンドの精算機のシェアでも、4割以上をシャープが占めています。最近では、カメラを活用して入出庫や駐車時間を管理し、ゲートやフラップのない駐車場ソリューションも展開しています。
これからのシャープを考えるうえで、AIが一つの重要なテクノロジーになると考えています。AIが実際の「もの」に実装される「フィジカルなAI」がさらに広がっていくでしょう。シャープは、家電も産業機器も、「もの」を作って提供してきました。今後、「フィジカルAI」を生かしていくことが、シャープの大きな強みになると思っています。
■創業以来受け継がれる、シャープのDNA
シャープには、創業以来ずっと受け継がれているDNAがあります。1912年に創業した早川徳次は、事業を電機メーカーへと発展させていく中で、「他社がまねしてくれる商品をつくれ」という考えを大切にしていました。
携帯電話に初めてカメラを搭載したのもシャープです。現在ではあたりまえとなっている薄型テレビの普及にも、シャープは大きく関わってきました。常に「人の生活を便利に」いうことを考え、それを広めていってもらう。この精神は、昔から変わらない経営理念や経営信条とともに、これからも大切にしていきたいと考えています。
そのために最も重要なのが、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)です。お客様と接するからこそ、困りごとがわかります。「半歩先」というのは、今、明らかに困っていないところまで発掘し、少しでも先回りするという意味です。
私が就任してから力を入れていることの一つが、インナーブランディングです。ブランドイメージの醸成というのは、外に向けてだけでなく、中に向けても必要です。社員が気持ちよく働ける会社であることが、結果として業績の向上にもつながるもの。そのため、社内のコミュニケーションを大切にし、まずは私自身を知ってもらうことからはじめています。
■多様性を武器に、新たな価値を生み出す
新たな価値を創っていくため、新しいことを考え、挑戦できるような人に幅広く集まってほしいです。多様性が大切だと考えています。さまざまな考え方を持つ人が集まることで、多様なアイデアが生まれるからです。
AIはさまざまな選択肢に気づかせてくれる存在であるべきだと思っています。一方で、目と目をあわせ、人のぬくもりを感じながら顧客対応をすることは、人間にしかできないことだと思います。AIを活用しながらも、最終的に判断するのは人間であるべきだと考えています。
■「働くにもAI、暮らすにもAI」の時代へ
経営不振のステージを抜け出し、回復、構造改革を経たいま、私のミッションは会社を成長ステージへ進めていくことです。これまでの商品は引き続き価値を高めながら、新しい事業の柱もつくっていきたいと思っています。その一つがAIです。生成AIからAIエージェント、さらにフィジカルAIへと広がる中で、AIサーバーなどのインフラ需要も伸びていくと考えています。もう一つが宇宙分野です。シャープは宇宙用太陽電池の技術を持ち、最近では衛星通信にも力を入れています。長年培ってきた携帯電話の小型化や高性能化の技術を生かし、AIや宇宙を次の事業の柱にしていきたいです。
将来的には、「暮らすにもAI、働くにもAI」というかたちで、AIによって人々の暮らしをより便利にする会社になりたいと考えています。
また、最近ではアイススラリー冷蔵庫という製品もあります。飲料を凍る寸前の状態まで冷やすもので、飲むことで深部体温を下げる効果が期待できるため、熱中症対策や暑熱対策に有効です。実際に工事現場などでも活用されており、まさにタイムリーな商材です。商品の垣根を越えて、こうした分野にも力を入れていきたいと思っています。
■大学生へのメッセージ
シャープの方向性に共感して、一緒にやりたいと思ってくれる人は大歓迎です。経験を積んできた人たちには、“経験”という財産があります。一方で、若い人たちには、“若い人ならではのトレンドを察知する能力”や“新しいことを考える力”があります。いろいろな年代や考え方を持つ人たちが、お互いの違いを認めながら、一緒に頑張っていきたいと思っています。
今の私があるのは、20代の頃から海外で経験を積む機会を与えてもらったことが大きいです。海外経験のない若手を海外に送り出すことは、会社にとって最初は投資になります。私自身、そうした機会をもらえたからこそ、今があると思っています。現在も事業全体の売上の半分以上をを海外が占めていますが、これからも増やしていきたいと思っています。私と同じように、意欲ある社員には海外で経験を積む機会もどんどんつくっていくつもりです。
学生新聞オンライン2026年8月20日取材 東京薬科大学4年 庄司春菜

武蔵野美術大学2年 山畑惺南/武蔵野美術大学2年 石井生成/日本大学2年 原田達司/法政大学1年 山田賢彦/国際基督教大学4年 若生真衣/法政大学2年 渡辺碧羽/東京薬科大学4年 庄司春菜


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