ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 代表取締役会長 重富隆介
投資運用で日本経済の再生を目指す

ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 代表取締役会長 重富隆介(しげとみりゅうすけ)
■プロフィール
1984年日本興業銀行に入行。3行統合に関与後2000年1月モルガン・スタンレー証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)入社。投資銀行本部 テレコム・メディア・テクノロジーバンキンググループ 統括責任者 を経て2016年に常務執行役員ならびにMorgan Stanley Global Investment Banking, Vice Chairman就任。2021年11月ブラックストーン・グループ・ジャパン代表取締役会長就任。現在に至る。
世界最大のオルタナティブ資産運用会社として、投資運用を通じて日本企業の成長を支援するブラックストーン・グループ・ジャパン。日本がこれから先、再び世界経済をリードする国になるために講じるべき策とは何か、今後の日本のあり方について、重富隆介会長にお話を伺った。
■銀行の世界から投資の世界へ
私はもともと官僚になるつもりでした。しかし、親友の一人から金融機関や商社について話を聞いたことをきっかけに当時の日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行を決めました。
当時の銀行はそろばんで現預金勘定を行うような時代でしたが、横浜支店預金課から本店審査部門を経て、業務委員会という部署に配属になりました。そこで当時の日本興業銀行が抱えていた経営課題に対応する仕事を3年ほど経験し、様々な形で海外ビジネスの経験を積んだ後にニューヨーク支店でプロジェクトファイナンスの仕事に携わりました。ここでは、海外のクライアントを相手に、発電所建設や原油の掘削、パイプライン建設や通信インフラなど、多岐にわたるプロジェクトファイナンス案件を担当しました。
南米でのプロジェクトファイナンスの中でも特に印象に残っているのが、コロンビアからカリブ海にかけて原油輸送用パイプラインを建設するOCENSAプロジェクト、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスが手がける、深海の原油を汲み上げる為の海上原油採掘システム建設プロジェクト、バラクーダです。このようなプロジェクトは数千億円を超える資金を要し、多くのケースにおいてモルガンスタンレー、ゴールドマンサックス等世界有数の投資銀行が全体を統括していました。この経験から、投資銀行が有する大規模な取引をを効率的に実現するスキル、若手であっても大きな裁量と責任を持って仕事をできる環境に惹かれ、モルガンスタンレーで投資銀行業務に挑戦することにしました。モルガンスタンレーで22年間投資銀行業務に従事した後、実際に投資家から資金を集めて投資運用を行うためにブラックストーンで現職に就きました。
■良い企業を、さらに強く、国際競争力を有する企業に
私たちは、オルタナティブ資産、つまり株式や債権などの一般的に市場で取引できる伝統的な金融資産とは異なるプライベート資産への投資運用を行っています。投資運用の対象としては、大きく分けて3つの柱があります。1つ目は証券取引所に上場していない会社の株式であるプライベートエクイティ(PE)、2つ目は個別不動産、3つ目は金融機関を介さず直接的に借り手の方に資金を提供するような、プライベートクレジット(PC)です。日本では2007年から不動産投資を開始し、不動産投資分野を得意とする外資系ファンドと認識されていますが、PEとPCの領域においても成長が加速しています。
日本には、私ども以外にも投資運用を行う会社が多数あります。これら同業他社と私どもが異なる点は、投資を行う企業に対する考え方にあると考えています。多くの投資運用会社では、経営の立て直しが必要な企業に対して、リストラ・再生による収益確保を目的にして投資を行うことが一般的です。他方、我々は、元々経営が安定している企業に投資を行い、リストラ等を前提とすることなくその企業の成長を支援し、そこからさらに世界的な競争力を持つ企業へと育てていく手法を取ることを基本的戦略としています。
企業向PE投資に加えて、高成長が期待されるAI分野にも10年以上前から注力し、特にデータセンターへの投資を積極的に進めて来ました。現在では、合計10ギガワット以上ものデータセンターを保有する世界最大級のデータセンター開発・運営会社となっていますが、今後数年間で更に25兆円を投じ、MicrosoftやAmazon、Googleなどの「ハイパースケーラー」との連携を通じてデータセンター関連の事業を拡大していく方針です。
■日本の企業が変わるために必要なこと
日本の企業は、非常に真面目で勤勉な従業員の方が多く、製造技術等技術面に優れているという強みがあります。その反面、先例主義といった、今迄のやり方を盲目的に尊重し、変化を受け入れることに抵抗を示すことも多々見受けられます。しかし、みなさんご存知の通り、社会も経済動向も刻一刻と変化していく中では、企業としての考え方、仕事の進め方を柔軟に変えていくことが求められます。
日本においては、企業の労働者に対する労働分配率を高める、すなわち賃金を上げていくことこそが、最初に取り組むべき課題だと考えています。もちろん企業として不測の事態に備え、一定の内部留保を確保しておくことは悪いことではありません。しかし同時に、従業員の方々に十分な賃金を提供し、早期に安定した生活基盤の確立に加え、投資と資産運用について考える環境を整えることが肝要と考えます。
日本の経済を成長させていくためには、金融資産を眠らせたままにせず、成長への投資に活用することが必要です。これは家計にも当てはまります。現在日本の家計における金融資産の総額は、約2300兆円に上ります。しかしその半分以上が、現金あるいは銀行預金に滞留しており、経済成長に使われていないのが現状です。従って、眠っている金融資産を如何に投資に繋げていくか、その道筋をつけることが大切なのです。もっとも、一般の方々にとって、どのように投資をすれば良いかを判断するのは容易ではありません。だからこそ私どものような投資のプロフェッショナルが、みなさんの大切な金融資産を投資に振り向ける上で信頼できるサービスを提供することが重要であると考えています。
■学生へのメッセージ
学生の皆様には日本を元気にするために自分ができることを考えて頂きたいと思います。日本は1990年代、米国に肩を並べるような世界に冠たる経済大国でした。しかし、今やGDPはドイツに抜かれ4位、米国・中国とはかけ離れた位置におり、為替の問題はあるものの、収益性・労働生産性といった指標では世界の30番台に沈んでいます。日本には世界をリードする技術・産業がまだまだあります。客観的なデータを検証し、何をどうすることが日本を良くすることに繋がるのかを自ら考えて頂くと共に、適切なリスクを取って投資を行う姿勢を期待しています。
学生新聞オンライン2026年9月2日取材 早稲田大学3年 中澤京平

早稲田大学3年 中澤京平/武蔵野大学4年 吉松明優奈/東京薬科大学4年 庄司春菜/京都芸術大学1年 猪本玲菜/城西国際大学3年 渡部優理絵/日本大学2年 原田達司


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