株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長 宮原博昭

自ら道を切り開き、「ゼロから一」を生み出す

株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長 宮原博昭(みやはらひろあき)

■プロフィール
1959年生まれ。広島県呉市出身。防衛大学校卒業後、貿易商社を経て、1986年に株式会社学習研究社(現 学研ホールディングス)入社。学研教室事業部長、執行役員、取締役を歴任し、2009年学研ホールディングス(以下HD)取締役に就任。学研塾HD、学研エデュケーショナル、学研教育出版の代表取締役社長兼任を経て、2010年12月、学研HD代表取締役社長に就任。

教育事業を中心に、医療・福祉事業へと事業を展開し、会社をV字回復へ導いた株式会社学研ホールディングス(以下、学研)代表取締役社長の宮原博昭氏。防衛大学校での経験や知識、自ら切り開いたキャリア、そして「ゼロから一を生み出す」学研の企業文化について、経営への思いや今後の展望を伺った。

防衛大学校では、一般の大学と比べても非常に多くの授業や訓練があり、8年分にも思えるほどの密度の濃い4年間を過ごしました。夜は22時になると消灯され、部屋では勉強できなかったので、トイレや満月の時の月明かりで勉強をしていました。また、マーケティングと組織論の先生の授業を集中的に勉強し、4年間で純文学を約1000冊読みました。学生時代に必死に勉強したおかげで、民間企業に就職してからもあまり苦労せず、防衛大学校で学んだ組織運営と民間企業の経営に共通点を感じながら仕事に取り組むことができたと思います。

■「自分で決める」ことへのこだわり

防衛大学校卒業後は、本来考えていた進路とは異なる形で民間企業への就職を考えることになりました。学校の先生から有力企業を紹介していただき、MBAの取得や海外勤務など、とても恵まれた機会を用意してもらいました。しかし、私は誰かに用意されたものではなく、自分自身で進路を決めたいという思いが強く、その話は辞退しました。
ハローワークや新聞の求人欄を何度も見ながら就職先を探し、最終的には貿易商社に就職しました。貿易商社に就職後は、アメリカでも数年間働き、仕事の成績もよく、売り上げも大きく伸ばしました。しかし、数字は伸びても心に残る達成感がなく、「こういう仕事は自分には向いていない」と感じるようになりました。そこで、教育業界か、医療業界などに携わる仕事がしたいと考え、教育業界への転職を決意しました。

■「逃げない男」としての信念

当時、教育ではトップだった学研を受けました。当初は編集の仕事を希望していましたが、配属は営業でした。正社員ではなく勤務地限定職でしたが、「教育の仕事に就きたい」という思いを持ち続け、入社後は営業の仕事に全力で取り組み、継続して高い成績を上げました。
その後、会社の業績が厳しい時期に、前社長から「次期社長をやってくれ!」と声を掛けられました。なぜ自分なのかと聞くと、「お前は唯一逃げない男だからだ」と言われました。私は防衛大学校で困難な状況でも「生き延びること」を学びました。会社が厳しい状況だからこそ、立て直しを任せたいという思いから私が選ばれたのだと思います。
私が社長を引き継いだ当時、会社の売り上げはピーク時の約1,700億円から約780億円まで落ち込んでいました。しかし現在では2,000億円に届く規模まで回復し、本当の意味でのV字回復を実現することができました。その時に役立ったのは、防衛大学校で学んだ組織論やマーケティングの知識です。社会人になってからも経営書などを読みましたが、大学時代に習った知識が根底にあるからこそ、会社を立て直す戦略を考えることができたと思います。
また、社員の真面目さにもV字回復の理由があると思います。社員一人ひとりが自分の仕事に一生懸命向き合っており、会社には「ゼロから一を生み出す」という文化が根付いています。それがあったからこそ、会社全体で困難を乗り越えることができました。

■「人に寄り添う」学研の強み

学研グループでは、出版や学習塾・教室などの教育事業に加え、高齢者住宅や介護、看護をはじめとする医療・福祉事業を展開しています。学研の魅力は、実際に商品やサービスを利用する人たちに寄り添い、その人たちのための商品やサービスを作っているということです。例えば子ども向けの商品では、お金を払う保護者のニーズを重視して物づくりをする企業も多い中、学研は子供たちが驚きや喜び、発見を感じながら楽しく生き生きと、そしてのびのびと成長できることを第一に考えています。また、医療・福祉事業では、一人ひとりが人間らしい尊厳を持ち、最後まで楽しく安心して生活できる社会を目指しています。
学研が医療・福祉事業へ進出した背景には、少子化によって教育市場が縮小していくという将来への危機感がありました。教育事業だけでなく、高齢者人口の増加を見据えて、新たな事業に挑戦する必要があると考え、2003年から医療・福祉事業を本格的にスタートさせました。
この事業が成長した理由は、学研が創業以来大切にしてきた「ゼロから一を生み出す」文化があったからだと思います。また、「教育事業をしている学研」という信頼が、利用者の方だけでなく、働く職員にも安心感を与え、学研を選んでいただける理由になりました。
また、教育事業と医療・福祉事業の売上を50対50に保つことを目標に掲げ、一つの事業に偏らない多角経営を意識しています。

■未来を見据えた挑戦

私は、会社の経営を短期的に考えるのではなく、中長期的な視点で考えることを大切にしています。少子化による教育市場の縮小を経験したように、今後は高齢者人口も減少していくため、2030年ごろまでに医療・福祉事業も将来の変化に適応できる体制を整えたいと考えています。また、一つの事業に依存するのではなく、教育と医療・福祉のバランスを保ちながら経営を進めていくことも重要だと思っています。そして、その先も見据え、国内だけでなく海外への展開も進め、いずれは国内と海外の事業の比率も50対50を目指したいと考えています。

■大学生へのメッセージ

私は、大学生活の4年間は自分自身に投資できる、貴重な時間だと思っています。社会人になってからでも仕事に役立つ勉強はできますが、将来役立つか分からないことを一生懸命に自由に学べるのは学生のうちだけです。だからこそ、勉強をおろそかにせず、幅広い知識を身につけてほしいと思います。また、アルバイトをするなら、社会性やコミュニケーション能力、そして自分の将来に役立つことを得られるものを選んでみると、新しい知識や視点が手に入れられるのではないでしょうか。学生時代は勉学に勤しんで夢を探し求め、社会人になったらそれに向かって果敢に挑戦する人生にしてほしいです。

学生新聞オンライン2026年7月17日取材 神戸市外国語大学3年 森垣一椛

東京家政大学3年 篠田陽菜乃/法政大学1年 山田賢彦/神戸外国語大学3年 森垣一椛/城西国際大学3年 渡部優理絵/かえつ有明中学校2年 狩野百福/京都芸術大学1年 猪本玲菜/東京女子大学3年 浮田梨紗/津田塾大学4年 山下さくら

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