株式会社神戸物産 代表取締役社長 沼田博和

どんなに遠くても行きたいと思わせる業務スーパーの秘訣

株式会社神戸物産 代表取締役社長 沼田博和(ぬまたひろかず)

■プロフィール

1980年兵庫県生まれ。2005年京都薬科大学大学院を修了後、同年大正製薬に入社。2009年神戸物産入社。2010年STB生産部門・部門長を経て2011年に取締役に就任。2012年から現職。2018年から外食事業推進本部の担当役員でもある。

日本全国に業務スーパーをフランチャイズ展開している神戸物産。業者や一般家庭はもちろん、学生の文化祭・学園祭での需要も高く、幅広い世代に愛される理由は、フランチャイズの仕組みを持ちながら、圧倒的な低価格とプライベートブランドで魅力あるスーパーに成長させているからこそ。株式会社神戸物産の沼田社長に、その経営方針や学生時代のお話を伺った。

大学生時代は薬剤師の資格を取るため、「人生で一番勉強した」と言えるくらい勉強をしました。大学院時代は実験が多くて自分自身でタイムスケジュールを組めたので、薬剤師の資格を取ってからは24時間営業の薬局で深夜アルバイトをして、昼間は大学院の実験に打ち込んでいました。
薬剤師になろうと考えていたのですが、大学院の研究室で薬剤学の実験を楽しいと感じたことから思考の幅を広げようと就職活動をし、大正製薬に就職しました。そこから結婚を機に転職を考えました。2人とも地元が関西だったことと、大学生の時に業務スーパーを身近に感じていたことから、悩んだ結果、新しいことに挑戦しようと思い神戸物産に入社しました。4年間、社会人の経験をしたものの全くの異業種だったので、考え方の違いがあり、ゼロベースでやらないといけないので苦労しました。31歳で社長になったのですが、その時点では社長になるスキルは全く備わっていなかったと思います。経験しながら学ぶことで、危機感も感じながら、よりスピーディに成長出来たと思います。準備を整えてからではなく、一歩を踏み出したからこそ分かったこともあると強く感じました。

■100m先の競合店を越えて1km先の業務スーパーに来てもらう

神戸物産のビジネスモデルは、小売業ではなく、主に卸売業と食品製造業です。プライベートブランドに位置付けている自社グループ工場で製造したオリジナル商品や自社輸入商品に加えて、メーカーが作るナショナルブランド商品をフランチャイズ運営している業務スーパーに卸しています。フランチャイズの仕組みを持っている点が特徴で、業務スーパーに加盟したいと思っていただけるように、魅力的なプライベートブランドの商品開発を行っています。また、日本にいる外国人の方々にも、日本にいながら自国の味を食べてほしいとの思いから、世界各国から直接輸入している商品の取り扱いも多いです。食品スーパー業界では、プライベートブランドの売上構成比率が約10%ですが、弊社では約30%ですので、他社と比較してもプライベートブランドの売上が突出しているといえますね。
業務スーパーは安く買えることが、お客様にとってのメリットです。安く販売するために、弊社で注目しているのが販売管理費です。ちょっと難しい言葉かもしれませんが、これは売上原価以外の人件費や水光熱費などの費用を意味します。業務スーパーはダンボールのまま陳列されていることが多いのですが、ダンボールでの陳列を行うことで、バックヤードから商品を持ってくる手間をなくし、人件費も抑えられるようにしました。そのほか、生鮮食品より冷凍食品が多いことも販売管理費を抑える秘訣ですね。冷凍食品は賞味期限が長いので、食品ロスの対策も行いやすく、販売価格を抑えることができています。
昔は交渉力がなかったので、ナショナルブランド商品はトップブランドの商品は高く買うしかなく、結果的に自分たちが満足できる価格でお客様に提供できず、取り扱いできないことも多かったです。でも、今は1,000店舗以上のスケールメリットにより交渉力もついて、一部のトップブランドをお客様に対して自信を持って出せる価格で提供できるようになりました。
基本的に目指しているのは、100m先の競合店を越えて1km先の業務スーパーにお買い物に来ていただけるような店舗づくりです。そのためには、独自性のあるプライベートブランド商品の開発や商品の安さに徹底的にこだわり、業務スーパーでしか提供できない価値をお客様にお届けし、お客様の来店頻度を上げることも大事にしています。

■日本だけでなく世界の人の胃袋を満たす

目指しているのは「食の総合企業」です。1億人の胃袋を満たすのはもちろん、海外の方にもっと日本の食材に興味を持ってもらえるよう、海外のニーズに応えたいです。今、日本食が注目されてきているので、海外ユーザーの方にも品質と価格をベストな状態で商品をお届けするための方法を突き詰めようと考えています。いまは海外に業務スーパーの店舗を少しずつ増やして、現地の方がどういうものを求めているかをリサーチしている状況です。
新卒採用では、学業よりは内面的な点を重視しています。特に素直、真面目、謙虚、前向きという四つはとても大切ですね。神戸物産の業務スーパー自体が、業界でもだいぶ変わった考え方を持っている会社なので業界経験者でも即戦力にならないこともあります。だからこそ内面がちゃんと整っていて、素直に吸収できて前向きに知識経験を求めながら、一緒に成長できる人が良いですね。

■大学生へのメッセージ

学生時代は社会に出る前の準備期間だと思います。もちろん学部での勉強はすごく大事だと思いますが、そこに留まらずこの今の時期だからこそできる経験とかをたくさんして欲しいと思っています。お金などの面もあるので好き勝手何でもできるわけじゃないと思いますが、遊びも含めていろんな経験ができる時期なので、アグレッシブに経験を重ね、その中でいろんな知識を得てほしいです。

学生新聞オンライン2023年11月30日取材 國學院大學1年 寺西詩音

武蔵野大学4年 西山流生 / 立教大学3年 緒方成菜 / 國學院大學1年 寺西詩音 / 法政大学3年 島田大輝

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