株式会社カカオジャパン 代表取締役社長 金 在龍

日々悩みながら乗り越える 頑張った人が報われる会社に

株式会社カカオジャパン 代表取締役社長
金 在龍(キム ジェヨン)

1976年6月生まれ。2006年からNHN Japan株式会社にてHangame, LINE, comicoのサービスを経験。その後、カカオジャパンでの新規事業立ち上げに携わるため、2015年5月より現職。
2016年4月、電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」をリリース。

今や1日200万人が利用する電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」。金社長は学生時代に40ヵ国もの国を旅行し、旅をすることで一人ひとりの違いに気づき、認め合うことの大切さを学んだという。これまで歩んでこられた道のりを伺った。

大学時代は一人でよく旅行に出かけました。40ヵ国ほど行きました。周りからは不思議がられましたが、とにかく楽しかったのです。旅をすることで一人ひとりが違うということを実感しました。世界に出ると文化も違うし感覚も違う。どちらが正しいということではなく、違うということが分かった。旅をすることで違いに気づき、認め合うことの大切さを学びました。アルバイトもよくしましたが、効率の良い仕事は何かということを常に考えていました。
悩むのは良いことです。悩み続けていると少しずつ進歩していきます。何かに悩んだり考えたりしていると何かが見つかります。夢を持っている人と持っていない人がいますが、夢を持っていないのもまたいいことです。夢がないのはある意味いろいろな可能性があるとも言えるからです。

ITの広さへの魅力と今の仕事

大学卒業後、スポーツが好きだったのでスポーツ関係の会社に入りました。そこでスポーツマーケティングを学んだのですが、大学1年の時にネットが流行りだし、広告の新しい拡散の仕方に興味を持っていたということもあり、NHN Japan株式会社(現LINE 株式会社)へ転職しました。ITには壁がありません。
50円とか100円で売っているものがたくさん集まれば10億円くらいになる。小さい金額だけど数が集まればものすごい量になる。しかもやすやすと国境を越える広さが 魅力だと思いました。仕事はいつも苦しいものです(笑)。そういう時に思うのは「苦しい時は上り坂」という言葉です。人は成長している時は上り坂を登っているのです。だから苦しいのです。ですので、私は苦しいことに対して嫌だとは思わないのです。もし挙げるとすれば、苦しかったのは、この会社に来てスタートする時でした。NHNにいる時に、カカオの創業者(NHNの創業者でもある)にカカオにこないかと声をかけられたのですが、行くのを迷っていました。環境の変化に対する恐怖があって、ゼロから何かを始めるのが不安でした。ただ、当時、38歳だったのですが、40歳までには何かにチャレンジしたいという思いもありました。何が大事かを改めて問い直したときに、人が大事だと思ってカカオに行くことを決めました。一緒に頑張ってきた仲間がいたのでチャレンジしてみようと思ったのです。

漫画アプリ「ピッコマ」を立ち上げる

ゼロからピッコマを始めた。当時、アプリで漫画を出している会社はたくさんあって、周りよりスタートが遅れている中でどうやって挽回すればよいのか悩みました。2015年5月に入社して、翌年の4月に漫画アプリ「ピッコマ」を開始しました。開始当初は、漫画作品は80作品程度でした。1年間準備をして、サービス開始から約2週間後の1日の売上は200円や300円程度でした。そこから作品を1作品増やすごとに少しずつ売上が増えていき、3ヵ月目になって1日利用者は3000人ほどになったのです。
その時に「7月末までに利用者を1日1万人にしたい」と社員の前で公言したのです。その時の社員の顔には無理という言葉が書いてありました。しかし、結果的には7月28日に1万人を達成したのです。この達成することの楽しさを味わった私たちは確実に成長しました。そして、1万人を突破した後、わずか10日で2万人を突破しました。
このように苦労を重ね、達成することの楽しさを知ったのが私たちにとって大きな財産になったと思います。

頑張った人が得する会社に

自分は褒められると伸びるタイプです。認められた時が一番幸せな瞬間です。だから頑張った人が得する会社を作りたい。「勤勉・誠実」の2つは大切にしたいですね。また、人にはそれぞれ強みと弱みがあって、強い部分を組み合わせることでもっと強くなると思うんです。だから弱みを補うより、強みを伸ばしていくことが大切だと思っています。
課題は私たち自身の高齢化です。お客様は10代、20代が中心なのに作っているのは30代。それを承認するのは40代。
ユーザーが求めるものをきちんと提供できているかが課題ですね。お客様の当たり前は私たちの当たり前とは違う。
だから私たちはその穴を埋めなければならないのです。時代に生き残るのは「力が強いもの」ではなく、「変化に対応できるもの」だと思います。

*message*

人って誰かと比べがちですが、まずは自分を好きになってください。人には必ず良い面がありますので、自分自身に大丈夫と言ってあげてください。自分に自信がある人は大変なことも乗り越えられます。あとは日々悩むことをして欲しいです。悩むことで何かに繋がるからです。

学生新聞2020年4月20日号より(文教大学1年 北島麗音)

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