株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下 勝寿

時価総額1000億円企業を 一代で築いたその原点とは

株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長
木下 勝寿(きのした かつひさ)

1968年神戸生まれ。大学在学中に学生起業を経験。卒業後は株式会社リクルートで勤務。その後、コネもツテも無い状況から起業し、17年連続増収。5年で売上18億円→83億円。同業5倍の利益率。と、急成長を遂げ一代で東証一部上場企業にまで押し上げた。Forbesアジア「Asia‘s 200 Best Under A Billion賞」受賞。日本国政府より紺綬褒章受章。

お客様の“悩みを解消する方法を提供する”という考え方に基づき、化粧品・健康食品をインターネット上で販売している北の達人コーポレーション。お客様の悩みが解消されたときの喜びの声が原動力であると語ってくれた木下社長。“自分たちが自信を持って家族や友人にすすめられる商品を販売する”その原点を忘れずに成長し続ける同社。今後は世界を見据え、デジタルから生まれた消費財のグローバルブランドを目指すという。その熱い思いを伺った。

大学生の頃から起業をすることを決めていました。その当時から、遊びの延長線上や社会人の真似事ではなく、本気でビジネスがやりたいと思っていたので、起業意識の高いメンバーが多く在籍している“リョーマ”という関西の学生企業に入りました。
“リョーマ”では、サークル情報や合宿免許情報を紹介する「サークルカタログ」というものを作っていましたが、それはごく一部の仕事で、私は、大手広告代理店から回ってくる案件の企画書や提案書を書いたりしていました。その当時は、ほぼ毎日スーツを着て出社し、そこから授業を受けに行き、終わったらまた会社に帰ってくるというような生活をしていましたが、忙しくも非常に充実した日々でした。私が在籍していたときは“リョーマ“には20〜30人のメンバーがいたのですが、今はそのほとんどが経営者になっていて、半分くらいは上場しています。今も定期的に同窓会があり、その度に良い刺激をもらっています。

いったんは就職しそののちに起業

“リョーマ”出身の人たちは、大学を卒業したら自分で起業するか、もしくはリクルートで修行して起業を目指すかのどちらかの流れがありました。私の場合は、起業をする前に一般企業で修行をしたいと思っていたので、一旦リクルートに入社することを選びました。また、その当時、まだインターネットが普及していなかったのですが、近い将来デジタル化の流れが来て、マルチメディアで世の中が全て繋がっていくと想像をしていました。そうなったときにコンテンツが圧倒的に足りないことと、通販事業が伸びることを分かっていました。将来性の高いコンテンツビジネスと通販事業、どちらの道に進むべきか考えたときに、コンテンツビジネスを選択しました。リクルートに決めたのも、コンテンツビジネスが学べるというのも決め手のひとつでした。そして、営業として入社し5年が経ったころ、インターネットが急激に普及しはじめ、自分の中で起業のタイミングが来たと思い、すぐに退社を決意。当時住んでいた大阪で起業し、カニやメロンなど、北海道の特産品を取り扱う通販事業を始めました。
資金ゼロからのスタートだったので、自分でホームページを作り、注文も自分で受けていました。そして、ある程度軌道に乗ったタイミングで北海道に移り住みました。

北海道で本格的に通販事業を開始

北海道の特産品の一つに「てんさい」という砂糖の原料になる植物があります。これを原料にしたオリゴ糖食品を販売したところ、“便秘が治った”と、多くの声をいただくようになりました。それがまたたく間に口コミで広がり、記録的なヒット商品となりました。カニやメロンなどの美味しい特産品ももちろんお喜びの声はいただけますが、悩みが解消されたときのお客様の喜びの度合いは全く違ったものでした。そこから、おいしい商品だけではなく、「お客様のお悩みを解消できる商品をもっと増やしていこう」と思い、悩み解消型の美容・健康食品に注力するようになりました。
その当時は仕入れた商品を販売していたので、全国各地の様々な悩み解消型商品を探し回りました。そこで気づいたのは、世の中に出回っている商品の多くが「理論上効く」ものであって、「本当に効く」かどうかはわからないものでした。私たちの信条は、“自分たちが自信を持って家族や友人に勧められる商品を販売する”ことです。世の中に、おすすめできる商品がないのであれば「自分たちで作ってしまおう!」というところから、オリジナル商品の開発へと舵を切りました。今は、健康食品、化粧品、一部雑貨含め、約30商品を展開しています。
私たちは、ただ単純に健康食品、化粧品を作って売ろうという考え方は持っておらず、人の悩みを解消する方法を提供しようという考え方をしています。例えば、『アイキララ』というアイクリームを販売していますが、アイクリームを売ろうと思って作ったのではなく、目の下のクマや加齢によるたるみの悩みをなんとかしたいと思ったことが商品開発のスタートでした。解決さえすれば、口から摂取する健康食品、肌に付ける化粧品どちらでも良かったのです。様々な種類のものを色々な方向性から多数試作品を作ってモニターしてみた結果、一番実感度が高かったのが結果的に“クリームタイプのアイクリーム”でした。対外的にはわかりやすく健康食品、化粧品を販売していることにしていますが、お客様に対しては“悩みを解消する方法を提供する”という考え方で向き合っています。

デジタルから生まれたグローバルブランドに

20年前からインターネットが普及してきたことによって、世の中はいったんリセットされたと思っています。メディアに関しては完全にテレビや雑誌からネットに変わってきていますし、流通もほぼネットに変わってきています。しかし、メーカーブランドに関しては、まだリアルの流通の方が強いと思っています。今、徐々にDtoCという流れが出てきていますが、われわれ自身はデジタルネイティブの消費財のグローバルブランドになっていきたいと考えています。今は日本と台湾だけですが、今後、世界に向けて展開して行き、デジタルから生まれた第二の花王だとかP&Gになって行けたらいいなと思っています。

*message*

社会に出てからは学ぶ機会がないようなことを、大学の間でどれだけ学べるかということが重要だと思っています。そのためによく学生の皆さんにおすすめしていることは、アルバイトをするならクレームの多いサービス業を選ぶことです。クレームというものは価値観が違うときに生まれるものです。クレームの多い仕事に携わることで、色んな価値観を持った人と接することができ、なぜそのような考え方をしているのかを知ることができます。立場、年齢、環境の違いによっての多方面の考え方を知ることによって、社会人なって理不尽だと感じることも、「自分の価値観の幅が狭いだけかもしれない」ことに気づけるのです。社会に出てからクレームの多いバイトはできないので、大学のうちに色々な価値観を知る経験をしておくことをおすすめしたいです。

学生新聞2020年4月20日号より(日本大学4年 山下充良太)

日本大学4年 山下充良太/慶応義塾大学4年 山本アンナ/日本大学4年 藤澤歌奈/
慶応義塾大学4年 小川淑生

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