株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO  堀場 厚

世界で勝ち抜くために、“おもしろおかしく”

株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO 
堀場 厚 (ほりば あつし) 

プロフィール

堀場 厚 (ほりば あつし)

1971年  甲南大学理学部卒業後、堀場製作所の米国JVオルソン・ホリバ社に入社。
1972年  カリフォルニア大学アーバイン校に入学し、77年同大学大学院工学部電子工学科修士課程を修了して堀場製作所に帰任。
1992年  代表取締役社長に就任。社長就任時の年間売上高約400憶円の規模から、売上高2000憶円、世界28か国と地域に展開するグローバル企業に成長させた。
2010年 フランス共和国 レジオン・ドヌール勲章 シュヴァリエ受章。
2019年  旭日中綬章を受章。

世界中のあらゆる産業を支える分析・計測システムを提供する堀場製作所。特に自動車や半導体産業は、“HORIBAがなければ動かない”といっても過言ではない。京都発のグローバル企業が成長した原動力は何か。堀場厚会長にその神髄を伺った。

■「あなたはどうしたいのか?」と日々問われた米国赴任時代

私は甲南大学理学部を卒業後、渡米しました。米国子会社でサービスマンとして働くなかで、開発業務にもっと携わりたいと考え、現地の大学に編入、その後大学院に進みました。当時はアメリカの大学での膨大な勉強量に驚きましたね。日本の大学とは比べ物になりませんでした。最初の一か月は「いくら勉強してもこれをこなすのは無理!」と諦めかけましたが、学部一の秀才の友達ができて、いっしょに勉強をすることで学習効率があがり、無事卒業することができました。必死で学び、大きな壁を乗り越えたことで、自信を持てるようになりましたね。この経験があるから、いまプレッシャーや困難にも耐えられるのだと思います。 また、日本では肩書が重視されますが、アメリカでは肩書よりも、「あなた自身はどうしたいのか?どう考える?」と、常にその人自身の意見が問われ、それらが重視されます。この文化から、私は自分の意思をしっかりと主張する大切さも学びました。

■独創的で、常にベストであるために

世界で戦うには1人ひとりが、自分自身の持つ知識を基に創造的に考える知恵と、そこから新たなことに挑戦するチャレンジマインドが必要不可欠です。堀場製作所の社是は、“おもしろおかしく”です。社員一人ひとりが自ら情報を集め、そこから‘常にベスト’を尽くして物事に取り組む。上司からの指示を待って動くのではなく、自らの意志と責任をもって仕事に取り組むオーナーマインドが大きな力になっています。だからHORIBAは世界でも決して負けません。

■HORIBAが世界で勝てるのは、“批判精神”があるから

HORIBAグループの社員の約6割が外国人達で、その中でも一番多いのが約900人のフランス人です。京都とフランスには、「プライドが高い、他人に迎合しない」という共通点があります。プライドが高いというと悪く聞こえますが、言い方を変えると、京都では、人の真似はしない、他とは違う、ということが重要視されます。HORIBA社員も、いい意味で批判精神を持っているのです。
独創性を重視するため、業務の内容にもよりますが、当社では仕事を一から細かく教えるやり方はあまりしません。自分なりの答えを見出せるような指示をだし、それぞれのマニュアルを作り上げてもらっています。そうやって育った社員は、自らの仕事に誇りを持っており、強いのです。
だから、「自分はこれをしたい!」と強く思っている尖った人と一緒に仕事がしたいと思っています。そうでないと、グローバルに戦うことはできないでしょう。日本社会では無難であることが求められがちですので、結果として日本の企業全体が弱ってきている気がします。
HORIBAが世界と戦えるのは、批判することも、批判されることも気にしないほどの尖った人財がいるからだと思っています。
世の中全体が技術面、そして経済の面でも劇的に変革する時代なので、同じことをしていてもスピード感がない企業・人財は今後生き抜いていくのは難しいですね。

■大学生にむけてメッセージをお願いします

学生時代は、自分のしたいことを思いっきり楽しめる時間があると思います。何もしないのはもったいないので、例えば都会に住んでいればそこから飛び出して、自然に触れてみてください。
耕して、種をまいて、水をあげて、肥料をやって、イノシシに食べられないように守って、実ったものを収穫すること。これは人生も同じです。感性を磨くためにも、こういった自然の営みの厳しさと喜びを、時間をかけて実際に体験してほしい。
コロナウイルスの影響が落ち着いたら、生きているとはどのようなことなのかを考える旅に出るのも良いと思います。20代の感性や経験が将来必ず生きるので、ひたすら経験を重ねてください。


学生新聞WEB 2020年11月27日取材 共立女子大学 3年 北之原真奈

日本大学 3年 大橋星南 / 明治学院大学 3年 菅井七海 / 共立女子大学 3年 北之原真奈 / 明治大学 2年 山本真人

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