元・内閣府副大臣 衆議院議員  平 将明

学歴・キャリアじゃない。大事なのはどう世の中を変えたか

前・内閣府副大臣 衆議院議員 東京4区 
平 将明 (たいら まさあき)

■プロフィール

1967年東京都生まれ、早稲田大学法学部卒業、サラリーマン生活の後に家業の大田青果市場の仲卸会社社長、東京青年会議所理事長を経て、2005年に初出馬・初当選し以来5期連続当選、経済産業大臣政務官、内閣府副大臣、衆議院環境委員長、自民党ネットメディア局長を歴任、現在は自民党内閣第二部会長(デジタル改革、科学技術・イノベーション、宇宙政策など担当)

意外にも、大学時代は熱心に勉強することはなかったという。
一度はサラリーマン、中小企業の経営を経験し、一体どのようにして今日に至るのか。
内閣府副大臣を歴任、『ニッポンを変える100人~2021年に注目すべきキーパーソン ~』等、活躍を続ける政治家になるまで、そして今後の展望を伺った。

私が学生の頃はバブル全盛期。当時はいい大学に行けば普通にいい会社に入れると言われていました。また、学生運動が最後の盛り上がりを見せていて、1年生と4年生の時には期末試験がストライキで流れてしまうような時代でした。大学生活において、多種多様な人と交流することが大切だと感じています。私の場合、所属していたバトミントン同好会での交流試合を通じて他大学の友人もできましたが不十分でした。ただ、妻とはこの同好会で出会いました。バドミントンに家庭教師のアルバイト、また、とにかく車が好きで、時間があれば家にあった車でドライブをしていました。勉強はあまりしませんでした。

■まさか銀行が潰れる時代が来るとは

私は学生時代から、政治のニュースを「僕がやったほうがもっとうまくできるのでは」と、かなり批判的な目線で見ていました。
そのような中で、会社勤めを経験して、家業の青果仲卸を継いだころ、ちょうどバブル崩壊による金融危機が起こります。会社が取引していたメインとなる金融機関の二つが破綻してしまい、経営は非常に大変でした。中小企業が倒産することはあっても、まさか銀行は破綻するとは思っていませんでした。あの時の資金繰りに奔走した苦労は決して忘れることができません。当然、私は会社が潰れないように経営努力してきたわけですが、銀行が潰れるのは私の責任ではないわけで、それは政治の責任でもありますよね。ただ、その当時の政治家の発言からは、中小企業の現場の実情、特に資金繰りの皮膚感覚がわかっていないのではと感じました。政治家になるきっかけの一つは、このような出来事を体験して、政治に経営感覚を持った人材が不可欠だとの思いが高まったからです。

■世の中を変えるために、自分で仕組みを作る

政治家になるきっかけのもう一つとして、政治を批判しているだけでは世の中は何も変わらないと思い、所属していた東京青年会議所にて、公開討論会実施に取り組みました。NPO法人のリンカーン・フォーラムが公職選挙法に抵触しない形でつくったメソッドをもとに、全国で展開していきました。それまでパンフレットやポスターの展示、名前の連呼だけだった選挙を、公開討論会を実施することで、有権者が候補者同士の討論を直接聞いて選べるようにしたのです。

2003年、東京青年会議所の理事長になり、先頭に立ってこれを実施した結果、公開討論会は当たり前に全国で行われる世の中に変わりました。また、政党には公募制度が入りました。与党のベテラン議員が連続当選し緊張感を欠いた無風の選挙区に、今まで選挙に立候補しにくかった女性や、世襲でない若くて元気な人たちが、野党の公募で選ばれ、公開討論会で力を発揮すると、ベテラン議員を退けて当選するようになりました。公募制度が野党に定着すると、対抗するために与党にも公募制度が拡がります。2005年には私自身が公募に応じて候補者となり、自ら創った公開討論会の舞台にあがり、政策を訴え、当選しました。
大物政治家の子息でもなく、東大出身の官僚でもなく、市場で朝早くから歯を食いしばって中小企業の経営をやっている私のような政治の世界に縁がない人たちには、議員になるチャンスはほとんどありませんでしたが、公開討論会や公募制度がそれを変えたのです。
世の中を変えるために、自分で仕組みと環境を創る。そしてそれができたら、自ら担い手としてそのフィールドに出ていく。世の中を変えるひとつのパターンだと思います。

■政治家こそ、宇宙に行くべき

このコロナ禍ではっきりしたことは、今後、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が加速していくということ。具体的に見れば、DXは、パブリックはデジタル庁創設であり、経済はデータ・ドリブン・エコノミーです。デジタル庁創設で民間のデジタル化もさらに加速し、国際競争力や生産性が高くなっていきます。同時にSDGsの17のゴール達成などSXの実現も不可欠です。SXは方向性、DXは手段と整理できます。DXが進むとIoTデバイス経由で集まったビッグデータを収集・保管・活用するために膨大な電力が必要になり、CO2を排出してしまう電源では、SXの達成が難しくなります。日本のどのような技術を使ってDXとSXを実現するかが重要なポイントです。日本の技術がポストコロナの世界をリードできるかもしれません。私が注目しているのは核融合炉、カーボンキャプチャーなど新しい技術です(詳しくはググってください)。また、菅内閣が今後進めていくデジタルガバメントのサーバーを宇宙で実現するアイデアもあります。太陽光で電力を賄う人工衛星データセンターは、打ち上げ時のCO2排出を除けば地球上の影響はカーボンニュートラルです。
さらに言うと、私は将来、国際宇宙ステーションでサミットをやりたいと考えています。私が宇宙担当副大臣の時に、H2Aロケット無事打ち上げ後にJAXAの理事長と種子島の居酒屋で話した際、彼が「政治家こそ宇宙に行くべき」と言っていたことがきっかけです。宇宙に行った人は明らかに「自国愛」だけではなく、「地球愛」に溢れて帰ってくると言うのです。世界の首脳たちが、青い地球を眺めながら食糧問題や気候変動、子供の貧困や紛争問題などを話し合えれば、今までとは全く違うレベルの解決策が宣言文として出てくるのではと思っています。そして、その「宇宙宣言」をベースに、サステナブルな地球を目指す枠組みとそれを実現するテクノロジーを供給することが大切だと考えています。

■大学生へメッセージ

もちろん勉強も大切ですが、いろいろな経験をすること、バックグラウンドや年齢の違う、多様性のある人たちと交流できる環境に身を置くように意識することが重要だと思います。また、「志」が大切です。志が高ければ高いほど、良質な仲間と、良質な資金が集まってきます。では、志をどうすれば高く持てるのか。志は自分の心の中で決めるだけであって、今この瞬間に「高い志」を持つことができます。自分で自分のリミッターをかけてしまう必要はありません。一生かけても為しえないような高い志がある人は、面白い人生になると思いますし、いろいろな経験を通して成長し続けることができます。

学生新聞WEB2021年1月25日取材 東洋大学 2年 伊佐茜音

早稲田大学 3年 原田紘志 / 日本大学 3年 辻内海成 / 東洋大学 2年 伊佐茜音 /東洋学園大学 1年 田澤涼夏/ 文教大学 2年 早乙女太一   

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。