株式会社ロッテ ロッテノベーション本部マーケティング部デジタル担当部長 宮内利光
お客様をファンに。デジタルメディアをさらに活用
■プロフィール
早稲田大学社会科学部卒業後、株式会社ロッテへ入社。営業として卸店やスーパーマーケットの本部を担当したのち、リテールサポート部門、商品開発部などを経て、2016年より自社オンラインショップの実務責任者を担当。2019年11月より現職にて自社オンラインショップはじめホームページやファンサイトなどのオウンドメディアを統括。
「お口の恋人ロッテ」というキャッチコピーを耳にしたことがない人はいないだろう。「Ghana」「爽」「雪見だいふく」「XYLITOL」など、ヒット商品に枚挙の暇はない。また、ロッテといえばプロ野球千葉ロッテマリーンズを想起する人も多いはず。そんな大企業ロッテにおいて、デジタルマーケティングを担当している宮内さんに話を伺った。
われわれは、主にオウンドメディアやオンラインショップの企画・マネジメントを担当しています。もともとホームページは宣伝部の管轄だったのですが、オウンドメディアを連動して運用する事を目的にロッテlandやロッテオンラインショップとともに、現在はわれわれの担当で運用を行っています。
お菓子業界に特徴的なのは、「商品名と会社名が意外と一致しない」という点です。例えば「コアラのマーチ」などはCMソングで「ロッテコアラのマーチ」と歌っているので一致しやすいのですが、その他の商品に関しては、皆さん、「これはロッテの商品だ」という意識はあまりないのではないでしょうか。このような点を考えると、まずはロッテという会社の製品だという認知を持っていただくというよりは、各ブランド(商品名)に対して愛着を持っていただき、ロイヤリティーを高めるしかありません。その一環として弊社では、単純に商品情報を出すだけでなく、例えばオウンドメディア内にて各商品をモチーフにしたゲームを作ったり、お菓子の空き箱で工作をする企画を行うことで、商品への接点と増やしてもらい、結果としてロイヤリティーを高めてもらえるような施策を行っています。
■お客様にアプローチする方法の変数が増大
昔の広告は、テレビやラジオ、雑誌や看板が中心でしたが、昨今では動画投稿サイトやホームページ、アプリに加えて、各種文字ベースのメディア等、露出箇所が際限なく広がってきています。そのため、それぞれの広告の効果を追って分析することが非常に難しくなっています。オンラインでやり取りの完結する商品の場合は分析できる点もあるのですが、お菓子というのは基本的にオフラインでご購入いただくものですので、このあたりは本当に難しいですね。
ただ、今後デジタルメディアの活用でできることは少なくありません。例えば、弊社の公式LINEの登録者は1200万人を超えていますし、各ブランドのSNS登録者数も順調に伸びてきています。こうしてSNSアカウントを通じて「どうファンにできるか」という取り組みがとてもしやすくなります。これはお菓子という商品の特性上、とても重要なことなんです。例えば家電などでは、事前にしっかりと下調べをして、あれこれ悩んで最後に「よし、これだ」というものを購入しますが、お菓子の場合は、ふらっとコンビニやスーパーに入って、たまたま目に入ったものを手にとる、いわば衝動的な購買が非常に多いですよね。ですから、その回の衝動的な行動の際に弊社の商品を思い出してもらえるかが大切だと考えています。
■ヒット商品を育てる難しさ
昨今特に、ロングセラー商品は作りにくくなってきています「。ロングセラー商品はこうやって作ります」と答えられたらかっこいいんですけど、知っている人がいるなら教えてほしいというのがホンネです(笑)。ですが、弊社に限らず、各メーカーの稼ぎ頭は何十年選手の商品ですので、やはりどのメーカーもロングセラー商品を育てたくてほしくてうずうずしていると思います。
お菓子業界に限らず、ヒット商品を作るのが難しい理由のひとつは、面白い広告が必ずしも購買に繋がる訳ではないからです。どんなに面白い企画を打ってSNSでバズっても、どんなに豪華なキャストを用意してCMを打っても、それを見て「あ、これ買いに行こう」とならなきゃ意味がない。そして残酷なことに、莫大なお金をかけたCMでも、見た翌日までそれを覚えている方はほんの一握りです。これは本当に難しいところですね。
■message
私たちは、デジタルの広告とアナログの広告(リアルの広告)とを分断して考えてはいません。それは、お客様がそれらの広告をデジタルかアナログかでは意識していないからです。そして、そんな中でデジタルの分野で大活躍するのが、何を隠そう皆さんのような世代の方々です。今の若い方々は、「デジタルネイティブ」と呼ばれ、デジタルを何の気なしに使いこなしています。そのような方々が主導して取り組みをしないと、これからはお客様たちへの訴求できないと思うんです。あの台湾の、天才と呼ばれるデジタル担当大臣オードリー・タンさんでさえ、「新しい事に対しては若い人には敵わない」とおっしゃっているくらいですから。柔軟なアイディアや発想、型にはまらない考え方。若さゆえに持ち合わせているものを武器にして、挑戦をしてください。
学生新聞別冊2021年4月号 慶應義塾大学4年 小川淑生
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