ソースネクスト株式会社 代表取締役社長兼 COO 小嶋 智彰

常識に捉われない、開発者とユーザーを結ぶ製品を開発

ソースネクスト株式会社 代表取締役社長兼 COO 小嶋 智彰(こじま ともあき)

■プロフィール

1977年東京都生まれ。2000年に京都大学文学部卒業、カリフォルニア大学にてマーケティングを学び、帰国後2001年にソースネクスト入社。BitDefender社、SunMicrosystems社(現オラクル社)などの大型提携のプロデュースや筆まめ、筆王、B’sRecorderなどの買収案件を手がける。ヨーロッパやアジアでの販売責任者、SourcenextB.V.(オランダ)CEOなどを経て現在に至る。

AI通訳機で有名なPOCKETALKを筆頭に、優れた商品を生み出し続けているソースネクスト株式会社。昨年発売のリモート会議に対応した360度会議室用ウェブカメラ、MeetingOWLは、コロナ禍のニーズに見事にマッチし、ヒット商品になったという。この販売に至るまでのスピード感の秘訣や小嶋社長の価値観・今後のビジョンについて伺った。

 塾の講師や家庭教師などを週に7日行うほどのアルバイト漬けの毎日でした。卒論で経済戦争の歴史を取り上げたことから、経済・経営学に興味を持ち始めました。そこで3年生からやり直し、経営学を専攻することに。英語の資格が1点不足し取得できなかった悔しさから即座にカリフォルニア大学に留学を決めました。留学先の隣の大学では、ピーター・ドラッカーさんが講義をしていて何度か参加したことがあるのですが、授業後には学生が質問のために列を連ね、主体的に参加している姿が非常に印象に残っています。当時ドラッカーさんは90歳を超えているにも関わらず、若者に自分の人生経験や夢を与えていることに、非常に感動しました。普通の人生経験では味わえないことをしている姿に魅かれ、自分もそ んなふうに経験や人生を伝える人になりたいと感じたのです。そのためには経営の道を歩むのが最適だと考え、経営者を志すようになりました。
 帰国後は、若いうちから経営に携わることができる企業を選びました。当時の弊社は、タイピングをゲーム感覚で覚えるソフトを提供していたのですが、既存の枠にとらわれない面白い発想だと感じたことも選考を受けたきっかけの一つです。最終面接の内定後、会社のトップと話すことも会社を理解するうえで大事であると感じ、社長に会いたいと伝えました。すると即座に面談の機会を提供してくれたのです。社長の人柄にも魅かれて入社を決めました。

■徹底した実力主義の社風

 入社後は、海外製品を商品開発に取り入れる仕事を担当し、入社4年目には会社の上場に立ち会う仕事も経験しました。海外交渉の際、海外企業のCEOと直にお話しする機会は貴重でしたし、仕事外の経験談を聞くことができた のも楽しさの一つでした。これまでいろいろな部署を経験してきましたが、苦労したと感じたことはありません。もちろん契約した商品の売れ行きが悪いなど多くの失敗を重ねてきましたが、失敗は次に活かせると思い、長期的な視 点で取り組んでいました。28歳のときには役員となり、自分が社長の立場ならどうするのかを常に考えていました。  今後の事業展開ですが、現在、売り上げの9割が国内販売であり、海外は割しかありません。この売上比率が5:5となるように、グローバル展開を図っていきたいと考えています。そのためには自分自身も海外に飛び出していこうと思っておりますので、次の世代に繋げられる体制を構築することが今後の課題であると考えています。
 今後の事業展開ですが、現在、売り上げの9割が国内販売であり、海外は1割しかありません。この売上比率が5:5となるように、グローバル展開を図っていきたいと考えています。そのためには自分自身も海外に飛び出していこうと思っておりますので、次の世代に繋げられる体制を構築することが今後の課題であると考えています。
 弊社は、POCKETALK を筆頭に、筆まめ・筆王など製品の名前が会社の名前以上に認知されていますが、社員は140名と少数精鋭です。実力主義の社風で名前も上下関係なしに、「さん」付けで呼び合うようにしています。マイルドで呼びやすいということに加え、実は立場が逆転してもこれまでどおりの呼び名でいいため、互いに気を使う必要がないことからもそのようにしています。そこには実力主義が大前提であることを社員が常に意識できるようにという意図があります。社員の男女比は6:4です。管理職も同じ比率となっており、性別に関係なく、実力をもとに評価しており、徹底しています。  

■お客様に寄り添う 製品づくり

 年間約20〜30の新製品を生み出すためには100にも及ぶ失敗があります。その失敗が新規製品を生み出すことにもつながっています。私たちの役割は、この商品開発者側とユーザー側とを結び付けることです。そのためには、企画やマーケターのみが商品企画や販売促進に関わるのではなく、社員全員がお客様に寄り添うことのできる製品企画に携わる環境の構築を心掛けています。具体的な取り組みとしては、社員一人ひとりがマーケティングアイデアを提案するMI制度というものがあります。社長に就任後、これまで日報で行っていたものをSlack活用に変え、秒単位でアイデアを発信できるようMI制度を加速させています。

■変化を楽しみ、スピード感を重視

 IT業界はスピード感が重要です。弊社の事業がパソコンソフト、スマホアプリ、IoTと変化を遂げていることからも分かるように、世の中は常に変化し、それにともない事業内容も変化していきます。変化は当たり前としてスピード感を重視し、楽しめる人が適しています。また、企業理念を重視することも必要です。製品は永続的ではありません。製品に魅かれたから志望するというだけではなく、自分はその企業理念に共感できるかどうかを考えてみてください。

■message

 学生時代に大切なのは、引き出しを多く作ることだと思います。留学や他大学の人と話すなどを通じて、多様な価値観を持つことが大切です。そうすることで、常識にとらわれていないかどうかなど、物事に取り掛かる際に考えることができるようになります。いつもと違う視点で物事を捉えるという経験を積むことで、客観的な物の見方が身に付くようになります。

学生新聞2021年10月号 横浜市立大学 4年 小熊結菜

文教大学3年 早乙女太一/明治大学3年 山本真人/横浜市立大学4年 小熊結菜

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