株式会社ニトリホールディングス 代表取締役社長 白井 俊之

完成されたものは面白くない、常に成長し続けること

株式会社ニトリホールディングス 代表取締役社長 白井 俊之(しらい としゆき)

■プロフィール

1955年生まれ。北海道出身。1979年、株式会社ニトリ入社。店長や物流部・人事部のゼネラルマネジャーなどを務めた後、2014年、株式会社ニトリ代表取締役に就任。2016年株式会社ニトリホールディングス代表取締役社長に就任。2020年北海道大学(数理・データサイエンス教育研究センター)の客員教授に就任し、全学のデータサイエンスに関する講義なども行う。

「お、ねだん以上。」と言えばニトリ。それくらい耳に馴染んでいるフレーズであり、見事に実践していて絶大な人気を誇るニトリホールディングス。代表を務める白井社長に、ニトリが時代とともに成長してきた秘訣、ニトリが選ばれる理由についてお話を伺った。

 今と昔では、社会は大きな変化を遂げたと感じます。直近年の変化は、数百年分ほどの変化に相当するのではないでしょうか。私の学生時代は携帯電話もなければインターネットもなくすべてがアナログでした。また、当時は長時間働くことが当たり前で、残業がなくて早く家に帰ってくるとかえって家族に心配されるような時代でした。

■ニトリの成長とともに歩んできた道

 私がニトリに入社した当時は、100人規模の小さな会社でした。私たちの就職活動は、「リクルートブック」という就活雑誌に載っている情報から面接に行く会社を選んでいました。「働くならば、変化のある面白い会社がいい!」と思っていた私は、「完成されたものほど、つまらないものはない」といった夢を語るような言葉がたくさん書かれていたニトリの会社情報が目に留まり、面接を受けに行くことに決めたのです。面接に行ったらその場で内定をもらい、就職活動はニトリの一社だけで終わってしまいました。その場で採用か不採用かがすぐに決まるというところも、今の就職活動とは大きく違いますよね。先ほども言いましたとおり、当時はあまり会社の情報を知る手段がなかったため、「これから大きく成長するんだ」という強い想いを持つニトリに惹かれ、規模のことは考えもせずに入社しました。しかし、新入社員歓迎会の席で、新入社員を含めても100人ほどの会社であったことに気が付きました。実際に仕事を始めてみて「自分たちも主力として仕事を積極的に進めていこう」という覚悟が日に日に強まりました。そして、入社して3年が経ち、1店舗の店長を任されるようになった私は、新入社員から頼られる経験も増え、責任感から仕事が面白くなっていきました。店舗も順調に増え、売り上げも好調になり、目指すところに向かっているのかなと感じるようになっていました。その後は物流部のマネジャー、新設店舗のプロジェクトリーダー、店舗運営部や商品部の責任者、人事部責任者、専務などを経て、2016年にニトリホールディングスの社長に就任したのです。その頃には、すでにニトリはお客様に頼りにされる、大きな会社に成長していました。

■ニトリがお客様に選ばれる理由

 ニトリがお客様に選ばれてきた理由の一つに、常に「お客様の立場に立った商品を提供しよう」という気持ちを持っていることがあげられると思っています。ニトリはお客様に対して正直な会社を目指しており、ブランド名ではなく、商品そのものの価値をお客様に伝えることを愚直に続けている会社です。重要なのは、その商品をお客様が良いと思っていただけるのかどうかです。商品の良し悪しはお客様が判断することで、企業側がどれだけの手間暇をかけていようが、お客様にとってはあまり関係のないことです。我々から見た良いものではなく、お客様にとって良いものを作ることを我々は大事にしています。そのため、商品一つひとつが、より適正な品質で、よりお求めやすいお値段でお客様に提供できる会社になるように、常に成長しようと心がけています。  一般的な会社では、人気のヒット商品はそのままで、人気のない商品を改良しようと試みると思います。しかしニトリでは、ヒット商品をさらに改良し続けています。たとえば、わが社のヒット商品のひとつに枕があります。5〜6年前、2990円で提供していたのですが、あるときセールとして1990円で販売したところ、とても多くお買い求めいただけたのです。そこでもっとお求めやすくご提供できれば、さらに多くのお客様にお買い求めいただけるはずだと考え、全く同じ品質で値段を下げたところ、4倍以上もお買い求めいただけました。これは、4倍のお客様がニトリの商品を気に入ってくださり、商品を利用してくださったということで、お客様の評価を可視化することができたということでもありました。このように本当に価値のあるものをお客様へ提供することが、我が社の誇りなのです。人気の商品をさらに改善し、成長させようという向上心を持ち、それを今まで続けてきていることが、ニトリの魅力、原動力なのだと思っています。

■message

 目標を持ち、自分自身がその目標に向けて努力し続けることが大切です。ニトリでは「年計画」という、達成したい目標を年ごとに掲げています。今は、第2期30年計画達成に向けて社員一同、一丸となって頑張っています。誰にでも容易に実現できそうに見えるものは、実は競争が激しく、したがってチャンスも得にくいものです。一方、一見不可能に思われる目標であっても、努力していれば、応援してくれる人も増え、チャンスも広がるということです。目標は実現の可能性の高低で設定するのではなく、達成したいと思うものを掲げ、まずは果敢に挑戦すること。失敗してもいいのです。まずは挑戦してみましょう。自分に合う仕事は、自分がまだ知らない分野の仕事の中にあるかもしれません。自分の新たな興味や可能性に向けて、得意分野を切り開いて行ってください。

学生新聞2021年10月号 津田塾大学 2年 佐藤心咲

津田塾大学2年 佐藤心咲/津田塾大学4年 松本麗奈/明治大学3年 山本真人/日本大学 4年 辻内海成/慶應義塾大学 1 年 在原侑希

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。