株式会社FS.Shake 代表取締役社長 遠藤 勇太

普段の食事に「楽しい」という付加価値を加えて、提供する。

株式会社FS.Shake 代表取締役社長 遠藤 勇太(えんどう ゆうた)

■プロフィール
島根県安来市生まれ。松江工業高等専門学校卒。いったん大手飲食チェーンに就職するも、1年半で退職。改めて、料理を勉強するため上京し、「服部栄養専門学校」に入学。
その後外食企業を何社か渡り歩き、2013年1月、創業。

首都圏を中心に、安くて美味いで大成功している居酒屋とりいちず。今期の年商は約80億、店舗数も今年中には100店舗を目指しており、その進化は止まる所を知らない。とりいちずをはじめ、様々な業種で食事の楽しさを提供する株式会社FS.Shakeの遠藤社長に他の追随を許さない「安くて美味い」を実現する秘訣について伺った。

自分で言うのもなんですが、学生時代はそれなりに頭が良かったんです。でも、島根県にある5年制の松江工業高等専門学校という学校に通っていたのですが、4年で中退しました。3年の時に白木屋で始めたアルバイトがとても楽しくて、学校に行かなくなったんです。しかし、20歳で白木屋に就職するも、すぐに辞めてしまいました。その時に親から「学校に行けば?」と言われて上京を決め、服部栄養専門学校で1年学んだ後、料亭に就職しました。でも、そこも結局1年で辞め、会社を転々として、外食計画株式会社で5年半働いたのちに独立しました。独立を決めたきっかけは、料理長として自由に仕事させてもらう中で、「もっとこうしたい」という欲が出てきたから。でも、経営について意見をいっても、なかなか聞いてもらえないことも多く、「だったら、自分で起業した方が良いな」と思うようになりました。ただ、この時に自分なりに研究して水炊きを作った経験が、今のとりいちずのコンセプトにつながっています。

■とりいちず成功の要因はここにある。勇気ある経営で店舗を拡大

とりいちずを創業したとき、当初はなかなか苦労しました。半年間ずっと赤字でしたから。最初は運転資金200万円で起業したんですけど、どんどん現金が減っていくのは怖かったです。その時にターニングポイントになったのが水炊きです。当時はまだ珍しかったこともあったのか、水炊きを導入してから爆発的に売り上げが伸び、なんとか黒字化することができたんです。その後、2期目も何とか黒字にして、3期目でやっとお金を多少借りられるようになったので追加で3店舗を経営しました。さらに4期目からはもっとお金が借りられるようになったので、黒字化して全額出店にぶち込むのを繰り返して、今12期目に達しています。今期はこれまでで最多の30店舗くらい出す予定です。
もちろん出店はギャンブルではないので、居抜きで出店するなど、コストをなるべく減らすことでリスクヘッジをしています。それでも僕みたいに借りられるだけお金を借りて、出店につぎ込むタイプの社長は、それほど多くはありません。事実、僕の周りは手堅く、慎重に出店するタイプが多いです。ただ、僕の場合は、「100店舗100億円にする」という目標があるので、最短で達成するには今のやり方でいくしかないと思っています。今はもんじゃとシーシャも合わせた3ブランドを経営していますが、単一ブランドで100億はなかなか厳しい時代なので、他の業態も持っていることがFS.Shakeの強みだと思います。

■衝撃的な安さと美味さを実現するための工夫

今の若者はよく「酒離れしている」と言われますが、僕はそうは思っていません。単に「ビール離れ」だと思っています。今のとりいちずは生絞りレモンサワーを150円で提供することで、他のお店とは違うインパクトを出せるようにしています。ドリンクの安さに加えて、お通し代を取らないことで他社との差別化をはかっています。お酒が安い店にありがちなのが、お通し代が割と高くて、会計時に「意外と高かった」と感じてしまうことだと思います。そんな感想にならないように、なるべく会計の時にギャップが起きないようにして、「また来たい」と思ってもらえるよう心がけています。味の面でも、もともと僕が料理人だったので、他の激安チェーンよりも美味しい料理を、自信をもって提供するようにしています。「美味しい」と「安い」を同時に実現するには、ロスを少なくすることが大事です。ロスが限りなく抑えられて、管理もしやすい鳥を使用することで成り立っていますね。原価率がそれほど高くないものを、お得に見せるように工夫し、お客様が喜ぶメニュー設定をしています。

■「とりあえずやってみる」という社風で、お客様に寄り添う店づくりを

働き方については、常に気を付けています。飲食業はもともと連休が取れない有休がとれないブラックな業種だったので、創業したときに、「従業員に連休をとってほしい」と休暇を取りやすいシステムを作りました。アルバイトの子達にも、「将来ここで社員として働きたい」と思ってもらえるような会社作りをしています。あと、とりいちずが若いお客様をターゲットにしている分、何を求めているのか意見を言ってくれる学生と働けるといいなと思います。実際に、その声を受けてお店に導入したのが、大盛りポテトと生無し飲み放題です。これは、お客様の声を生で聞いている社員からの要望で始めたのですが、想像よりも大きな人気を集めました。このように、自分たちにできそうなことはとりあえずやってみることを大事にしています。また、会社としては、目標だった年商100億が見えてきていて、来期には達成できそうです。その次は、海外展開を考えていて、東南アジアのフィリピンやベトナムに展開していきたいです。これらの国は平均年齢も若く、発展途上なので、「こういう店が欲しかった」というニーズに当てはまればブランドとして強く成長していけるのではと思っています。

■大学生へのメッセージ

自分にとって楽しいことや面白いことをやればいいかなと思います。「こういうことをしておいた方がいい」というのはありません。楽しいことが正義なので、学生にしかできない楽しいことをしてください。遊びでもサークルでも全力で楽しんでほしいです。なんでも全力出していたら、結局は仕事でも出せると思うので。僕はバイトに全力で取り組んだ結果、いまのような職業につくことになりました。皆さんにも、学生時代のうちに、何かを全力で楽しむ体験をしてほしいですね。

学生新聞オンライン2024年3月6日取材 上智大学2年 網江ひなた

武蔵野大学4年 西山流生/慶應義塾大学大学院2年 賀彦嘉/共立女子短期大学2年 猪本玲菜/上智大学2年 白坂日葵/上智大学2年 網江ひなた

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