株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎 

自己を表現できるアイテムとの出会いを生み出していく

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎(なかやまりょうたろう)
 

■プロフィール

2006年に株式会社サイバーエージェントに入社後、社長運転手の傍ら新規のオンラインメディアを立ち上げ、その後ベトナムでのベンチャーキャピタル事業を担当。
2013年に現在の株式会社マクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」をリリース。2019年12月には東証マザーズに株式を上場。大企業、中小企業、スタートアップ、個人チームなど、規模を問わず、それらが生み出すアタラシイものや体験を応援購入できる場としてサービスを拡大中。
一般社団法人ベンチャー型事業承継の理事として日本全国のアトツギの背中を押す活動も推進している。

アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」を提供する株式会社マクアケ。今ではクラウドファンディングという概念も一般的になってきたが、立ち上げ当初は理解されず、産業界への浸透が進まなかった。それでも日本の優れたアイデア・能力・技術が生まれていく土壌づくりを実現し、いまやクラウドファンディングではなく新商品が生まれる「応援購入サービス」と新しく定義した中山亮太郎社長に、20代の過ごし方からMakuakeを立ち上げて今に至るまでのエピソードを伺った。

■弁護士事務所のバイトで気づいた自分のワクワクするもの

「二十歳になったら家を出ろ」という家訓があったので、一人暮らしを始めると同時に自分で生計を立てていくために弁護士事務所でアルバイトをしました。弁護士になるという格好つけた言葉を言って法律学科に進みましたが、実は弁護士が何をしているかわかっていませんでした。弁護士になるためにはすごい時間と勇気をかけて勉強していく必要もあって、そこにフルダイブする前に、リアルな弁護士の仕事を知りたいと思い、大学の友人から弁護士事務所のバイトを紹介してもらいました。実際に働いてみると、自分には弁護士という職業がそんなに向いていないかもしれないと思い始めました。逆に、弁護士の先生に相談しに来る企業の方の新規事業の話や新しい施策や打ち手の話にとてもワクワクしていました。そこで、自分は事業や会社をつくっていく人のほうが向いていることに気づけました。

■事業づくりという経験値を積むためにサイバーエージェントへ

新しい情報に触れている友人から「事業をつくるならサイバーエージェント」と言われ、会社説明会に行きました。当時社長は30代前半でものすごい勢いがあり、ここなら20代から事業をつくれる会社であると確信し入社しようと決めました。内定が出てからも、藤田社長の「渋谷で働く社長の告白」という本に影響を受け、「将来起業したいんだったら営業力だ」とすぐに株式会社USENでのアルバイトにエントリーし、営業の経験をしました。しかし、営業はそんなに甘いものではないこと、稼ぐ力が足りていないこと、事業として利益が出る仕組みづくりがわかっていないことを自覚し、修行を積むべくサイバーエージェントに入社しました。

■事業経験を積みながら自分の哲学を固めたサイバーエージェント時代

希望通り入社1年目から、大手企業とのアライアンスに関するメディアの立ち上げで現場リーダーといった、他社では経験のできないことを経験しました。アライアンスメディア事業は4年でeコマースを紹介するメディアとして日本で圧倒的No.1にすることができ、成功事業のトラックレコードができたという経験でした。
そのあと、どんな事業をつくりたいかを考え始めました。幅広い事業でいろんな人と関わっていくなかで、世界の隅々に価値を残していけるような事業をつくれる人間になりたいと思いました。しかし、東京でずっと働いていたため、まだ世界地図が頭に思い描けていませんでした。これは何かまずいかもと思った矢先に、ベトナムでの投資事業・VC事業のポジションが空いてVCに抜擢していただきました。27歳の時にベトナムに移り住んで、2年半ほどベトナムのスタートアップ、ベンチャー企業にVC投資をしました。そこで生活している中で、使っていたiPhoneやパソコン、日用品などに日本のブランドはほとんどなく、悔しさを感じました。インターネットの生態系は僕がいなくても大きくなっていきます。しかし、日本のモノづくり力やコンテンツ力における新しい何かが生まれていく土壌は、まだ全く出来上がっていませんでした。そういったところに手を打とうと考えました。

■机上の空論ではビジネスは動かないことを実感したマクアケ立ち上げ期

今でいうDXやD2Cのように、当時クラウドファンディングは盛り上がるだろうと言われており、政府も後押ししていくという流れがありました。そして、私自身もその領域であれば思い描いていた、日本から新しいものが生まれていく土壌づくりを実現できるかもしれないと思いました。しかし、現実では、資金を人から募集するというクラウドファンディングの解像度が低く、「新製品をつくるのにオンラインで募金?」「赤い羽根のようなノリ?」と言われたりもしました。産業界での浸透がなかなか進まず、仮説とのズレに苦しみました。机上の空論でビジネスは動かないこと、なにより応援してくれる顧客がいることが大事であることを再認識し、現地現場の本当のニーズを聞いていくようになりました。そこで見えてきたのは、事業者は何か新しい商品を出そうとするときに、まず在庫をつくり、それから人が来るお店に並べてもらうか、もしくは自分で人が来るお店をつくる必要があるというものでした。Makuakeの在庫リスクをとる前に先にお客さんに購入してもらい、商品をつくることができるという仕組みこそが、事業者にとって本当のベネフィットがあると気づきました。そこで、「新商品を先行販売しませんか」というわかりやすい伝え方に変えることができ、すぐにマーケットの理解が進んでいきました。

■360度のニーズに向き合って辿り着いた応援購入というコンセプト

何か新しいことを仕掛けていきたい事業者だけにターゲットを振り切って、便利なツールを提供することもできました。しかし彼らの本音は、応援してくれる新しい顧客と出会いたいというもの。事業者に喜んでもらうためにも生活者と徹底的に向き合う必要がありました。今の時代の生活者は目に見える情報だけではなく、背景にあるストーリーを含めて消費しています。ただ何かアイデアが載せられて決済手段が付いていて、人がたくさん来るという既存のサービスはたくさんあります。そこにどういった切り口が一番通るのかをたくさん検証して、言語化して、いっぱいメモして、それを何百回も繰り返しました。しっくりくるようなそれぞれの訴求ポイントを数年間追求し続けて、ようやく今のコンセプトにたどり着きました。

■学生へメッセージ

今見えているすごい産業や会社がずっとすごいわけではないです。15年前くらいにインターネット産業は胡散臭い産業だと思われていました。だからこそ、自分の価値観を信じたほうがいいと思います。それを正解にすればいいんです。仕事は自己表現だと思っています。変な当たり前やしがらみは取っ払って、自分を最も表現できるお仕事を選んでほしいです。

学生新聞オンライン2021年11月11日取材 創価大学4年 山内翠

創価大学4年  山内翠 / 津田塾大学4年  川浪亜紀 / 国立音楽大学1年  岡部満里阿 / 日本大学4年  辻内海成

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