ラクサス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 児玉 昇司

地球にやさしいシェアリングサービスで世界を変えたい。

ラクサス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長
児玉 昇司(こだま しょうじ)

プロフィール

児玉 昇司(こだま しょうじ)
広島市出身。シリアルアントレプレナー。個人投資家。累計120億円以上を調達。早稲田大学EMBA修了。2015年、毎月定額でブランドバッグが無限に使い放題になるシェアリングサービス「Laxus(ラクサス)」をローンチ。会員数は40万人、流通総額は630億円を突破してさらに拡大中。毎月の会員の継続率は95%以上を維持。

「何者かになりたい」という思いから18歳で起業。やがてお金を稼ぐことだけでなく、世界を変えたいと思うようになった児玉社長。当時では考えられなかったシェアリングサービスが今後到来してくることを見据え、様々な反対意見を受けながらも、ラクサスをローンチ。そこには自ら考え、学び続ける姿勢があった。/em>


もともと医者になりたくて、医学部を目指していました。高二の時にA判定をもらって「これは受かるな」と思って遊んでいたら、案の定学力が落ちて、受験できずに終わってしまい、それがすごく劣等感でしたね。大学に入った後も「今じゃない何かがしたい」「何者かになりたい」という思いが強くて、18歳のときに家庭教師の派遣会社を起業しました。大学に通うことは目的じゃなくて手段だなと思って、結局6か月で辞めましたね。

■お金を稼ぐだけじゃセクシーじゃない


家庭教師のマッチング、中古車販売、アウトソーシングといった会社を起業していって、20代でお金の稼ぎ方はある程度習得しました。10代の頃はお金を稼ぎたいという思いがあったのですが、2000年代にスティーブ・ジョブスが“Change the World”と言って出てきたのを見て、我々もお金を稼ぐだけじゃなく、世界も変えたいと思うようになりました。ラクサスを設立した2015年は大量生産、大量廃棄の時代。中国の人件費が上がったら、次はベトナム、バングラディシュ、アフリカといった感じで、とにかく安く物を作って捨てるという風潮だったので、それをもっと “エシカル”にしたいと考えていました。そのためには、社会的に影響力を持っているラグジュアリーブランドのトップティアから落とし込んでいかなければならないので、その中でもシェアして一番抵抗感のないブランドバッグでローンチしました。

■本音を引き出すアンケート

ラクサスの立ち上げの時、「6800円でバッグを借りるか」と社員にアンケートを取りました。Aグループでは、「今は40万円もするバッグよりも、2、3万円くらいでラグジュアリーなものがかっこいい」「高いのはダサい」といった声が上がり、誰も頷かなかった。でも「一つずつ持って帰っていいよ」と言ったら、みんな40万円のバッグを選んだんです。これはおかしいぞと思い、Bグループには「あなたの知人はこのバッグを借りますか」と主語を変えて質問したらYesの声が続々と上がったんです。要するにアンケートでは知人っていうのが本当の自分なんですよね。だからアンケートは嘘を前提にどう本音を引き出すかというゲームだと思っています。実際に、ほぼ新品の40万円前後のバッグを3000万円分売り出したところ、宣伝なしに50個も借り手がありました。これならいけると思いましたね。

■目的と手段をはき違えない

ある投資家に「ブランド品って買わないと意味ないよね。借りてどうするの?」と言われたことがあります。でもここで思ったのが、カバンの一番の目的は「物を持ち運ぶこと」であって、「買うこと」ではないということ。「買うこと」は手段なんですよね。あらゆる物事、目的と手段が反対になっていることが結構あるので、まずはそこを見抜かなければなりません。手段を増やすことは歴史的に考えてもいいことなんですよ。例えば食事もお店へ行って食べるということ以外にも、テイクアウトや出前といった手段が出てきたり。今から私がやろうとしてることはそうした手段を増やすことであって、この人の言ってることは間違ってるなと気づきました。常識は18歳までにコレクションされた偏見の集まりなので、他人から言われた常識にも突っ込んでいく姿勢が大切です。

■アイディアって偶然じゃないんです

「よく閃いたね、そのアイディア」と言われることがあります。でもアイディアって偶然じゃないんですよ。換言すれば、「良いインプットがあれば、良いアウトプットができるよね」って話で。私の戦略はほぼ全部パクリなんです。あらゆる戦略を読んで、「これとこれが今解決したい課題に近いな」と思えばそれを当てはめる。オリジナルな戦略はないんです。でも決断となると、いろんな知識や情報がないとできないでしょう。ラクサスでは、社員が勉強したことを報告しあうグループチャットや、推薦図書のレポートを書くことによる昇給制度を設けるなどして、社員の自主的なインプットを促しています。

■“エシカルに生きる”という価値観を広げる

ラクサスの最初の顧客は富裕層なんです。やはりそういう層にとって、お金があることはもはや尊敬に値しなくて、「私はエシカルに生きていますよ」と見せることがかっこいいんですよね。「アニマル皮じゃなくてフェイクレザーが当たり前でしょ」という価値観です。自然素材で環境に優しいと思われがちなコットンも、実はインドで赤ちゃんを負ぶったお母さんたちが枯葉剤で皮膚がボロボロになりながら生産している。こうした背景を欧米では普通にメディアで報道するけど、日本は広告費で守られているので報道しない。こうしたなか、我々のようなプラットフォームが目立っていくことは、地球にやさしいという考えを持つ人が増えることに繋がると思っています。今後は今やっていることをもっとグローバルに拡大していきたいですね。

■message

受験の時、「大学に入りさえすればもう勉強しなくていい」という言葉を500回くらい聞きました(笑)。今でもこういった塾の先生との約束を守っている人はたくさんいると思います。実際に、米国のエグゼクティブの平均学習時間は土日関係なく二時間なのに対して、日本人はたったの六分。大学は「これからも勉強し続けなさいね」ということを学んで卒業するわけなので、とにかく勉強し続けて欲しいですね。求めるのは、自分の頭で考え、学習し続ける人です。

学生新聞WEB2020年12月21日取材

 津田塾大学 2年 宮田紋子

日本大学 3年 辻内海成 / 津田塾大学 2年 宮田紋子 / 国際基督教大学 4年 鈴木菜桜 / 早稲田大学 3年 原田紘志

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