株式会社福島野球団 代表取締役 岩村明憲(福島レッドホープス 監督)

野球で福島を盛り上げたい。目指すは“サーカス団”

株式会社福島野球団 代表取締役 岩村明憲(福島レッドホープス 監督)(いわむらあきのり)

■プロフィール

1996年ドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。
ゴールデングラブ賞、ベストナイン、日本シリーズ優秀選手賞受賞。
WBCにて2006,2009年金メダル獲得。2007年MLBデビルレイズに移籍し、2008年ワールドシリーズ出場に貢献。
2011年NPB(楽天)に復帰。以降はヤクルト、BCリーグ福島へ移籍、2017年現役引退。

プロ野球独立リーグのベースボール・チャレンジ・リーグに所属する福島県のプロ野球球団「福島レッドホープス」。球団の運営、監督を務めるのは、ヤクルトスワローズやアメリカ・メジャーリーグでも大活躍した元プロ野球選手の岩村明憲氏だ。今回はプロ野球選手になるまでの過程、球団経営の難しさ、福島への想いについて伺った。

■バットを振り続けた学生時代

幼少期の頃から、父と3個上の兄の影響を受け、自然にバットとボールを持っている学生でした。そして野球中継を見る中で活躍する選手に憧れて自分もプロ野球選手になりたいと思うようになりました。過去を振り返ってみると、高校時代の練習は二度とやりたくないほど厳しい環境でした。6時間の勉強、6時間の練習、その後の個別練習という日々です。何回か日を跨いで帰宅することもありました(笑)。何度も「辞めたい」と言ったことがありますが、プロ野球選手という夢を叶えるために我慢しないといけないことがある。我慢の先に夢があるからこそ、厳しい練習でも頑張って続けることが出来たと思っています。

■バット1本で雰囲気を変えたプロ野球選手時代

サヨナラホームランなどをはじめ、バット1本でその場の雰囲気を変え、多くの方に自分のプレーを注目してもらえるNo1の選手になりたいと思っていました。日本と世界といった環境に違いはありましたが、この目標は日々意識していたことです。日本でも海外でも強いチームや強い選手の戦い方を学んだり、自分がどういう立ち位置になるのが最適かなどを探し続けたりしていました。

■責任が伴う球団経営

「雇われている方が楽だったな」と感じることが頻繁にあるほど、経営は難しいです。売上の8割はスポンサー収入になっていて200社がスポンサーになってくださっています。ただ、監督業も兼業していることからお会いできていないスポンサーさんもいらっしゃるのが現状です。そこで出来る限り食事をする機会を作ったり、共通の趣味であるゴルフでラウンドする時間を設けたりしています。ゴルフでは約6時間を一緒に過ごすので人間性が出ます。そこで自分という人間を理解していただきながら、今期の反省点や来期以降の目標を伝えたりして、納得していただけるように尽力しています。

■選手の個性に苦戦する監督業

何に興味を持っているのかわからない20代を相手にするのは、正直、難しいことが多いです。ですが、遊びではなくお金をもらい野球をするプロとして、注意されることが少ない世代にも厳しいことを伝えています。わざと1回失敗を経験させ、悔しい感情を向上心に変えさせるタイプ、褒めることでより頑張ってもらうタイプ、あえて厳しく伝え反骨心で頑張ってもらうタイプなど、個性に合わせて指導方法を変えています。
もし心が折れてしまった選手が出てしまったならば、主に2つのことを伝えています。1つ目は本当に後悔しないかをきちんと考えてもらうことです。これまで投資してきた時間や周りが応援してくれたことを鑑みて、心の底から後悔が無いと言えるかを考えてもらっています。2つ目はどんな選手もミスをすることはあるということです。最近では大谷選手が凄いと言われていますが、生まれた瞬間から大谷選手として仕上がっているわけではないです。どんなに凄い選手でもミスはしますし、ミスは自分を成長させるチャンスであると伝えています。
また、プロ野球の世界では3割打者で凄いと言われています。つまり7回失敗できるのです。これは通常の社会人だとクビになりかねない話だと思っています。そのため1回でも失敗を減らせるように自身の経験談を伝え、指導をしています。

■福島の魅力を広める“サーカス団“に

福島レッドホープスが拠点としている福島は、東日本大震災の原発事故によって、本来なら受けなくてよい被害を受けてしまいました。愛媛県出身である私が福島レッドホープスの監督をさせていただくことになった理由も震災が関係しています。被災地巡りをしていた際、罹災証明書を保管するクリアファイルにサインをしてほしいと言われたことがありました。「こんな大事なものにサインすることは出来ません」と一度断ったのですが、「あなたのサインで私も頑張れる」という言葉をいただき、野球選手をやっていて良かったと心から思いましたし、何か力になりたいと思いました。そしてご縁があり監督、オーナーになったのですが、今後は福島県内、全国を回りサーカス団のような各地域を盛り上げる存在になりたいと思っています。NPBプロ野球もありますが、基本的に地方へ来るのは年に1回です。そこで福島レッドホープスが地域を回り、娯楽として地域創生の一助になりたいと思っています。ビジター戦で他県に出向く際には、食物などで風評被害を受けてしまった悪いイメージの払拭を引き続き継続していきたいです。

■大学生へのメッセージ

学生の時間は人生で何年かしか経験できない貴重な時間だと思っています。そのため、色々な人と出会い、そのご縁を大切にしてほしいです。もちろん何かで失敗してしまうこともあるかと思いますが、それも経験にしてほしいと思います。
また、私の座右の銘は、何事も苦しむことが礎になるということを指した「何苦楚魂」です。寝て起きてプロ野球選手、社長になっている人は誰もいないので努力をして苦しむことも必要だと思っています。寝る間を惜しんで努力をしないといけない時期もあるかもしれませんが、歯を食いしばって耐えることが大事です。
最後に伝えたいこととしては、是非福島に遊びに来て欲しいです。東京に一極集中して大変な状況になっている現代、地方を盛り上げる要素の一つにスポーツ、娯楽があると思っています。そのため、福島レッドホープスの試合観戦、温泉地巡り、美味しいものを食べに福島へ遊びに来て欲しいです。

学生新聞オンライン取材2022年11月3日 中央学院大学4年 田根颯人 / 武蔵野大学3年 西山流生

津田塾大学4年 大川知 / 武蔵野大学3年 西山流生 / 大妻女子大学3年 舘川佳苗 / 中央学院大学4年 田根颯人 / 学習院女子大学2年 小川莉実 / 津田塾大学4年 宮田紋子

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。