JCOM株式会社 特別顧問 石川雄三

「デジタル×フィジカル=パーフェクト」

JCOM株式会社 特別顧問 石川 雄三(いしかわ ゆうぞう)

■プロフィール

1985年 第二電電株式会社に入社(現在のKDDI株式会社)。
KDDI㈱代表取締役執行役員副社長などを経て、2019年6月にジュピターテレコム株式会社 代表取締役会長就任(現在のJCOM株式会社)。
2022年4月より特別顧問。

国内最大のケーブルテレビ企業であり、1995年の創業から放送・通信業界を牽引してきたJCOM株式会社(J:COM)。ビジネスにおいて既存の分野の深堀と新しい分野の開拓が重要とおっしゃる石川顧問に、私たち学生が社会に出てからの心構えや、今、行動すべきことを伺った。

■様々な知識をインプットした学生時代

大学では商学部に進学しました。学生時代はバンド活動には熱心でしたが、決して勉学に熱心な学生ではありませんでした。就職活動についても、周囲が一生懸命活動しているときも、海外旅行に1か月間行ったりと、あまり真面目に就活もしていませんでしたね。また、当時は人前で話すのが得意ではなかったので、面接では苦労しました。

そんな中でも、本はひたすら読んでいました。特によく読んでいたのは、偉人や社会で活躍した人物の本です。「知識」が自分の身を助けると感じていたため、社会人になってからも本は良く読んでいました。

大学卒論のテーマは財閥の解体を扱い、財閥や企業の財政に関する知識も深めていました。この勉強により、「この会社は●●財閥の傘下に入っている」「この会社とこの会社が、同じ財閥だからつながっている」などという企業系列の地図が頭に入っていたので、通信の法人営業をやっていた頃、非常に役立ちました。

■常に上の環境を目指して成長する

私が新卒で入社したのは、横浜にある不動産・建材系商社の会社でした。ものづくりというよりは「商業をやりたい」という思いが強かったのです。また、「自分が人に勝てるものは何か」を考えたときに、営業なら負けないという根拠のない自信がありました。また、サービスを自分で広めていくことに夢を持っていました。その後、営業以外の仕事にも挑戦したいと考え衣料資材のメーカーに転職をしました。ここでも幸い成果をあげることができ、これからはより会社や自身の成長が見込める夢のある仕事がしたいと思うようになりました。
そこで、通信の自由化によって誕生した、電気通信事業者の第二電電(現・KDDI)に入社し、それが今の仕事につながっています。

■常に新しいことに取り組む

仕事では業績が伸びることが一番のやりがいです。しかし、業績は急に伸びるわけではありません。ときには、従来の枠組みを破って新しい取り組みに挑戦したり、仕事の仕組みを変えたりしないといけません。“既存の部分を深堀するのと、新しい部分を探索する”所謂「両利きの経営」が企業を経営する上では、非常に重要です。

変化することを怖いと思う方もいるかもしれませんが、世の中自体が常に変化しているため、現状にとどまること自体がリスクなのです。次の成長のきっかけを見出し、社員と一緒に取り組んで少しずつ成果が見えてくる、そんな時に、仕事のやりがいや楽しさを感じますね。
もっと言えば、進化すること自体が楽しいのかもしれません。

これまでに、たくさん失敗してきましたが、失敗することで沢山のことを学び、次の自分を作っていくと思っています。だから、何度失敗しても、懲りずに挑戦し、幸いにもいくつかのプロジェクトを成功させることができました。

挑戦の例を挙げると、通信会社は膨大なデータを持っていますが、そのデータをお客さまにとって価値あるものに昇華させることはかなり難しく、最初は何度も失敗しました。たとえば、お客さまの情報から、その方が求めるものを導き出すのは、時間と労力を要する作業です。この情報分析自体にまず膨大な時間がかかりました。また、データから導き出した客観的なお客さまのニーズを、社員やパートナーの方々に理解をしてもらうことにも非常に苦労しました。理解してもらうために、目的や理念を共有することと、実際に効果が出ていることを数値で示すことを、何度も繰り返しました。その結果として、デジタルの力を使って効率的にビジネスモデルを変えることが出来、社員やパートナーの方々の賛同を得られるようになったことは、大きな喜びでしたね。

■フィジカルとデジタルの二つの力を合わせ持つ

J:COMの魅力は、様々なビジネスの基盤となるフィジカルな力とデジタルな力を掛け合わせて、お客さまに大きな価値を提供できるということです。
amazonやアリババといった会社は非常に大きなデジタルの力は持っていますが、フィジカルな力はあまり持っておらず、その強化に着手し始めています。
一方で、J:COMはもともと地域に密着したサポート体制があり、1万人以上の社員が地域で活動する強力なフィジカルの力を持っています。近年はデジタルの力も強化し、顧客データや視聴データなどを活用したレコメンド機能や、放送と通信をシームレスにつなぐデバイスの開発やオンライン診療やMaaS等、デジタルの力で地域の課題を解決する取り組みも進めています。
また、弊社は約1,400万世帯に届くコミニティチャンネルを運営し、情報発信するメディアとしての側面もあります。さらに映画製作・配給、テレビ通販事業など、多様なビジネスを展開しています。デジタルとフィジカルの力を軸に、これらの様々な分野を組み合わせていくことで、お客さまにより大きな価値を提供できます。このことがライバルに対して大きな差別化になっていると感じています。

■一緒に働きたいのは、利他的な人

私が一緒に働きたいと思う方は、能力以前に誠実であって志を高く持っている方。また、取引先の利益までも考えられるような利他の心を持った人と働きたいと思っています。さらに言えば広い視野を持っていることも大事だと思います。多くのことに興味を持って、それに取り組む意欲と勇気を持った方に入社していただきたいと考えています。

■message

社会に出て過ごす時間は学生時代よりも遥かに長いのです。学業はもちろん大切ですが、会社に入ってからの過ごし方の方がはるかに大事だと思います。どんなに専門的なことを大学で学んでも、社会でそのまま通用するわけではないので、その専門性やコミュニケーション能力などを磨いていく必要があります。逆に言えば、今自信がないことでも、本当にやりたいという意欲があれば実っていきます。夢を持ち努力を続けることでなりたい自分になれる。それは、私自身や周りの人を見ていて実感します。挑戦する意欲を持ち、それを継続することにより人生は実りあるものになると信じています。

学生新聞オンライン2022年2月10日取材 明治大学3年 酒井躍

明治大学3年 酒井躍 / 日本大学3年 大橋星南 / 日本大学4年 辻内海成 / 日本大学2年 石田耕司 / 日本女子大学3年 神田理苑 / 東海大学3年 大塚美咲 / 明治学院大学4年 小嶋櫻子 / 立教大学3年 須藤覚斗 ※撮影時のみマスク外しております。

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