学校法人関西大学 理事長 芝井 敬司
自分を小さな枠に収めようとせず、でっかい夢を持とう
学校法人関西大学 理事長 芝井 敬司(しばい けいじ)
■プロフィール
1984年より関西大学に着任し、’94年文学部教授、2002年文学部長、’06年副学長、’16年学長を歴任。’20年10月から学校法人関西大学理事長に就任。現在、文部科学省大学設置・学校法人審議会特別委員をはじめ、学外の要職を多数務める。
2022年6月に大学昇格100周年を迎える関西大学。私立大学では14番目の開校という長い歴史を持つ大学である。近年はカーボンニュートラルやダイナミックな国際化を図ることを念頭に大学経営を行っているという。この関西大学に40年近く奉職されている芝井理事長にこれからの大学の在り方についてお話を伺った。
■どのような学生時代を過ごしてこられましたか
高校生のときから興味を持っていた歴史や哲学、思想を学ぶために京都大学文学部に進学しました。1・2年次は教養科目を学び、3年次からは西洋近世・近代を研究できる越智先生のゼミに所属して、仲間や院生とヨーロッパの近世・近代について議論しました。当時はまだ学生紛争が残っている時代で授業が成立しないときもあり、同級生4人で集まって読書会を開いたりと、友人と学問を深める大学生活を送りました。
大学卒業後はそのまま京都大学文学研究科に進みました。ドクターは、普通は3年間かかるところを1年目が終わったときに、当時主任教授だった越智先生が「来年から助手を」と言われ、助手をやることになりました。その後、関西大学の先生からのお誘いで西洋史の近代分野の教員として関西大学に移り、それから38年間ずっと関大におります。
■理事長の役割と取り組みをお聞かせください
私立大学の理事長の役割は法人の代表者として契約したり、経営や財務の面で責任を持ったりすることです。責任が重いのでやりがい以上に苦しいという気持ちが強いですね。特にコロナ禍でどう判断するのかを決断するのがすごく苦しい。一昨年は「遠隔授業になって光熱費を使っていないだろうから返金してほしい」と言ってくる学生を、学長として説得しなければなりませんでした。関西大学は医学部も看護学部もないので大学拠点接種も思うようにはできません。そこで、20年くらい協定を結んで連携・協力している大阪医科薬科大学の学長に協力をお願いしたところ、「頼まれると思っていたよ、お受けしましょう」と言ってもらい、30593人にワクチン接種を実施できました。理事長になってから職員にも呼び掛けているのは、明治時代のジャーナリスト・翻訳家である黒くろ岩いわ涙る い香こうが大切にしていた「簡潔、明瞭、痛快」という仕事のモットー。私もそういう仕事をしていきたいです。
■目指す大学像についてお聞かせください
まずカーボンニュートラル。組織として引き受けるのは当然ですが、大学ですから教育・研究の部分で引き受けることが重要です。カーボンニュートラルのことを理解し議論して、そこから何かを創造することがどこまでできるかが課題だと思っています。そして、ダイナミックな国際化。これは実はずっとやりたいと思っていました。海外とキャンパスを結んだり、海外の学校から指定校で来てもらえるようにするなどです。日本の大学の研究機関のイメージと世界のユニバーシティのイメージのずれがあるのでそこを埋めていきたいです。
また、スタートアップ企業も一生懸命支援していきます。現在は1件あたり30万円、100万円、1000万円をスタートアップ用に用意し、支援しています。自分のやりたいことやアイデアがある学生の背中を押すのが大学の大きな役割です。
大学に昇格して今年で100年になります。関大は日本で14番目の私立大学で、戦前
に設立した長い歴史を持つ大学です。100年前に提唱された「学の実化」(=学理と実際との調和)という建学の精神を軸に人材を育てています。
■大学生へのメッセージをお願いします
社会や会社がどんな学生を求めているのかを学生は気にする必要はありません。私に対して社会が何を求めるのかではなく、私が何を求めているのか、私がやりたいことは何かを大切にしてください。
そしてでっかい夢を持ちましょう。それがすごく大事な時代になりつつあります。もう少しのびやかに自分の人生を描いていってほしいです。人生100年時代ですから自分を枠の中に収めようとせず、学生時代は夢を語り、広げることに時間を使ってください。
学生新聞2021年4月1日発刊号 創価大学4年 山内 翠
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