長澤まさみ 理想のゴールはまだまだ先、だからこそ走り続ける

女優 長澤まさみ(ながさわ まさみ)
2000年第5回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞し、同年女優としてデビュー。以来、話題作に多数出演。近年では『コンフィデンスマンJP』シリーズ、映画『マスカレード・ナイト』『SING/シング:ネクストステージ』『シン・ウルトラマン』など。最新作映画『百花』が公開中。
10月より、主演ドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」がスタート(カンテレ・フジテレビ系/月曜22時〜放送)。
12歳で受けたオーディションのグランプリ受賞をきっかけに芸能界デビューを果たし、数多くの作品で圧倒的な存在感を放っている長澤まさみさん。今年は4年半ぶりとなる連続テレビドラマの主演も決定した。そんな華々しいキャリアを持つ長澤さんに、日々心がけているマインドや仕事への想いなど、真摯にお話いただいた。
幼少期からよくドラマは見ていて、物語を楽しむということが好きでした。小学6年生の頃に事務所のオーディションに合格したのですが、当時はまさか自分が女優になれるとは思ってもいませんでした。 デビューして約1ヵ月後にすぐ映画の撮影が始まったのですが、とにかく周りの役者さんたちに付いていくのに必死でした。これは女優業に限らずどのお仕事にも共通して言えることですが、自分が求める理想のゴールにずっと辿り着かないことが仕事のやりがいだと私は考えています。
それこそデビューしたての頃は、一つの作品を演じ切ることがゴールだと思って仕事をしていました。しかし作品が影響力を及ぼすのは撮影終了後です。作品を撮り終えることがゴールではなく、ゴールはその都度変わっていくものだと思うようになりました。ずっと先にあるゴールに向かって日々走り続けるからこそ、それがモチベーションとなって頑張れるのだと思います。
自分に素直に、〝等身大〞でいること
多くの人と関わる中で、常に等身大の自分で居続けることは難しいと思います。人と関われば自分の中にいろいろな感情が生まれるのは当然のことだからです。そして人は物事に真剣に取り組めば取り組むほど、たくさんの感情が能動的に湧き出るものだと思います。その中で私は自分の性格を理解することが凄く大切だと考えています。どんな状況のときに自分がどんな感情になるかを理解していれば、自分の感情をコントロールできるようになります。これは決して自分の感情を隠して人と接することではなく、自分の想いに素直になるための方法です。私も10代、20代の頃は感情的になりすぎてしまったりして上手くいかないこともたくさんありました。でも皆さん、もっと自分に素直になってもいいのです。その後に、そのときの自分を客観視して振り返れば、新たな発見や成長にもつながるし、自分のことをより深く理解するきっかけにもなります。
日々の生活が自分を形作る
忙しい中でも丁寧な暮らしを心がけています。身の回りの整理整頓や朝の掃除など、毎日行うことをルーティン化することで、自然と脳がスッキリするんです。やはり日々の生活は自分を形作るものなので、どれだけ時間がなくてもきちんとしようと意識しています。また、人と比べることはしません。 他人と比較して「自分なんて……」と感じてしまう経験、多くの人にあると思います。でもそれって自分のやる気を下げてしまうだけで、自分にとって何もプラスになることがないんですよね。どんなことも人それぞれペースがあるので、自分のペースで努力できていれば他人との比較は必要ないんです。 忙しいときこそ自分をじっくりと見つめ直すことが本当に大事だと考えています。自分のご機嫌を自分で取れるようになったら、人生もっと楽しく有意義になると思います。
ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』について
お芝居ってその場限りの生ものなので、保存が効かないんです。その瞬間に撮れたカットは、細部まで完璧に再現することはできません。演者一人ひとりがどれだけ役作りをしても、共演者との化学反応によってまったく違うシーンになることもしばしばあります。だからこそ私はその化学反応を楽しみながら、そこにある感情と真剣に向き合うようにしています。また今回演じた役は、自分が求める「正義」に真っ直ぐ突き進んでいく女性の役なのですが、私自身とても共感の多い役でした。自分自身と演じた役の状況は違えども年齢的に同世代で、仕事に対して次のステップアップをしたいという想いは共通していると感じました。そしてこの作品は本当に個性豊かなさまざまなキャラクターが登場するので、どの世代の方にも共感していただけると思います。ぜひ毎週、楽しみにご覧いただきたいです。
外の世界を見る大切さ
今の学生はコロナ禍での学生生活で、多くの人が我慢の時期を過ごしていたかと思います。そして物事が制限される中で、考え方や行動も内向きになっている人が多いのではないでしょうか? そこで私がお伝えしたいのは、視野を広げて外の世界を見てみること。私が皆さんと同世代のときに衝撃だったのが海外との文化の違いです。当時は撮影で主にアジア圏の国を訪れる機会が多かったのですが、そのたびにたくさんの驚きがありました。そしていろいろな国の人と触れ合うことで、自分のモラルや考え方のみが正解ではないんだということを、根本から学ぶことができました。人との出逢いは本当にかけがいのないものです。ぜひ広い世界に自ら飛び込んでみてください。
学生新聞2022年10月号/小学生新聞2022年9月号 慶應義塾大学 3年 伊東美優

『エルピス―希望、あるいは災い―』
(カンテレ・フジテレビ系・10月期・月10ドラマ)
主演・長澤まさみ× 眞栄田郷敦× 鈴木亮平
脚本・渡辺あや× 監督・大根仁による社会派エンターテインメント!
スキャンダルによって落ち目となったアナウンサーとバラエティー番組の若手ディレクターらが、死刑が確定した連続殺人事件の真相を追う!
https://www.ktv.jp/elpis

写真撮影:カメラマン 広田成太
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