ビッグローブ株式会社 代表取締役社長 有泉 健
フロンティア精神でオンリーワンを目指す
ビッグローブ株式会社 代表取締役社長 有泉 健(ありいずみ たけし)
■プロフィール
山梨県出身。1984年、KDD(現KDDI)入社。世界初のGPS搭載携帯電話の商品化に向け、位置情報を算出するサーバーシステムなどを設計。ソリューション推進本部長、執行役員を歴任。2017年1月、ビッグローブ株式会社代表取締役社長へ就任。
実家の鉄工所の跡継ぎを断り大学へ進学。今でこそ当たり前に利用されているITだが、業界の成長を18歳にして予想。衛星、通信の開発を中心に、独自の嗅覚を頼りに今もなお躍進し続ける。トップではなくオンリーワンを目指すという有泉社長に、BIGLOBEの将来展望を伺った。
学生時代はネットもコンビニもない時代でしたので、下宿で日夜実験レポートを書くことに追われる毎日でした。
親には高校卒業後には家業の鉄工所を継ぐように言われていましたが、大学に進学しました。大学では今後コンピューター業界が成長するだろうと予測して工学を専攻し、リニアモーターカーなどで利用されている超伝導について研究していました。この技術があれば新しいコンピューティングの世界を創り出せると考えました。常温に近い状態で超伝導現象をいかに起こすかという研究を大学院生になってからも続けていました。
就活を始めた当時、業界ではコンピューター&コミュニケーションが流行っていました。当時の花形は衛星通信。私はミーハー的な感覚で国際電信電話株式会社(KDD。現在のKDDIの前身会社の一つ)を選び、通信の世界に一歩を踏み出しました。
■技術者からマネジメントの世界に
入社後は茨城衛星通信所のシステム運用の現場で3年半ほど働きました。主に衛星での無線設備の運用に携っていました。その後、東京の本社で衛星通信設備の設計担当になり、衛星本体そのものを世界各国と協力しながら作りました。打ち上げた後に、地上で衛星のモニタリングをしながら姿勢制御する機能なども設計していました。
このように、入社後は現場と設計を8年間やった後に、人事部へ移動。人事部は当初2年の予定だったのですが、会社の合併などが重なり、結果的に4年半になってしまいました。当時、IT業界ではインターネットサービスが学術用から商用化し、産業革命が起きていました。このまま現場を離れていては技術者として死んでしまうと思った私は、技術者に戻るために必死で上司を説得し、ようやく戻ることができたのです。そして2000年から17年間法人向けのソリューション事業に従事しました。私自身が成長できたのは、この事業に携わったことが非常に大きかったと思っています。お客様の本心やインサイトを知るには、直にお会いして話すしかありません。お客様に納めたシステムがトラブルを起こして怒られる、改善する。お客様の欲しいものができる、喜ばれる。
この繰り返しが自身の経験値、モチベーションとリレーションという財産になります。
2017年1月、BIGLOBEの社長に就任し、現在に至ります。上司からはいつも「担当5:上司3:経営者2」の目線がリーダーにとって必要な目線であるとアドバイスを頂き、意識して実践してきました。
■ブラックオーシャンを手に入れる
新たなソリューションを思いついた際に、上司から「これはどうして売れるの? 強みは? 差別化は?」と必ず聞かれました。レッドオーシャンでは、マーケットの規模感があっても差別化できなければ同質化によっていずれ衰退します。BIGLOBEに来て驚いたことは、コンシューマー事業は法人事業と違って競合他社がひしめいていました。そんな中で勝ち残っていくためには次の2つの考え方が大切です。1つ目はSTP分析によるBIGLOBEの戦略分析を行い、差別化しながら実践することです。2つ目はバックキャスティングによる思考法を身に付けることです。つまり、2〜3年先の未来のあるべき姿から今どうすべきかを考えるのです。先を見据えて自分たちのtobeを決め、そのためのtodoを決めるというバックキャスティングの教えがとても役に立ちました。
皆さんのBIGLOBEのイメージは通信事業だと思います。それはインターネット黎明期からフロンティア精神を持ち、数多くの事業を手掛けてきたからだと思います。
しかし、通信事業の成長が飽和状態になってきた今、もう一度フロンティア精神を発揮し、バックキャスティング手法で未だ世の中にない、これから必要になるものを世に先駆けてやっていこうとしています。その筆頭となるのが社会環境事業です。現在、具体的に手掛けているのは、健康経営に資する法人向け温泉トラベル事業、AIを活用したビルのエネルギー制御事業、地球に負荷をかけない自然環境を活用する再生エネルギー事業があります。ビルのエネルギー制御は、日本ではまだ例のないAIを活用した消費電力の効率化です。また、再生エネルギーは、設備が大掛かりになりがちな太陽光・風力ではなく、水や土、生ゴミの堆肥から電気を集電するシステムを作り、世界で未だに電気が使えていない13億人の人々に届けたいと思っています。
*message*
学生の皆様には海外に行くことをオススメします。海外に行ってビジネスをクリエイトするWAYを学んでほしいのです。日本の物作りの技術は素晴らしいですが、それらを掛け合わせてビジネスにする能力がものすごく低いです。Uber はまさに良い例で、新しい技術は何一つなく、位置情報とメールのみで世界最大のタクシー会社になろうとしています。若い人こそ海外へ出て発想・思考に触れ、日本発で世界初を増やしてほしいと思っています。
学生新聞2022年10月1日発刊号 関東鍼灸専門学校3年 竹原孔龍
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