作家 赤川次郎
好きなことを仕事にできる幸せ。70年以上変わらない想い
作家 赤川次郎(あかがわじろう)
■プロフィール
1948年、福岡県生まれ。1976年『幽霊列車』でオール讀物推理小説新人賞を受賞。「三毛猫ホームズ」シリーズなどミステリーの他、サスペンス、ホラー、恋愛小説まで幅広く活躍。1980年『悪妻に捧げるレクイエム』で角川小説賞、2016年『東京零年』で吉川英治文学賞を受賞。『セーラー服と機関銃』『ふたり』『いもうと』『天国と地獄』など著書多数。
■小説家になろうと思ったきっかけは何ですか
実は一度も「作家になろう」と思ったことはないのです。というのも、手塚治虫さんの漫画に影響を受け、小さい頃から物語を作るのが好きでした。3歳のころから中学校に上がるくらいまで漫画を描き続けていたのですが、絵の力が追い付かず、我ながら下手だなと思って描いていました。
デッサン力のなさを嘆いていた中学3年生の頃、『シャーロック・ホームズの冒険』という本に出合ったのです。それまでは意味も分からずに難しい本ばかり読んでいたのですが、人を楽しませる小説があることを知って、こういうエンターテインメントものなら自分でも書けるのではないかと思い、小説を書き始めました。それ以来、60年間ずっと書き続けています。
最初はともかく好きで書いていただけで、どこかに投稿するという意図は全くなかったのですが、高校卒業後の就職先で出会った同僚から詩集を出そうと誘われ、自分たちで作ったものを会社の社員に配ったのです。そうしたら「面白いね」と言ってもらえて、自分の書いたものを面白がってくれる人がいるのだと思い、それがきっかけで脚本や小説の募集に応募するようになったのです。
■小説に対する思いを聞かせてください
もともと物語を作るのも話を書くのも趣味なわけですから、趣味を仕事にできるのは本当に幸せなことです。締切があるので何でも好きなようにはできませんが、締切がないと書かないですからね(笑)。
小説を書く上で大切にしていることは、読者に媚びないことです。エンターテインメントですから、読者に喜んでもらうのは大事なことですが、媚びるのとは違います。媚びてまで書くようになれば、書くことを楽しいと思えなくなってしまいます。そうなればおしまいです。やはり自分の好きなことを好きなように書き、それで読者がついて来てくれればありがたいなという思いでおります。
■大学生へのメッセージをお願いします
本を読んだり美術展に足を運んだりして、人生の先輩たちが素晴らしいといったものの変わらない良さを見つけてほしいと思います。良いものにいつも触れているというのは大事なことです。自分がとてもかなわないと思うものに出会っておくことで人は努力をするようになるものです。
学生新聞2022年10月1日発刊号 東京農業大学3年 畑千絢
この記事へのコメントはありません。