資生堂インタラクティブビューティー株式会社 DX本部オムニエクスペリエンス推進部 テクノロジーコンテンツグループグループマネージャー 増田卓矢

リアルとデジタルの融合がマーケティングの新しい価値を生む

資生堂インタラクティブビューティー株式会社 DX本部オムニエクスペリエンス推進部 テクノロジーコンテンツグループグループマネージャー 増田卓矢(ますだたくや)

■プロフィール
2008年、楽天に新卒入社。Webディレクターとしてサービス開発に従事。サービス運営、モバイル事業など複数の立ち上げを経験。2017年、ユニクロへ転職。オンラインサイトのサービス開発、UI/UX改善や商品検索・レコメンドエンジン開発を担当。2019年、資生堂入社。主にARを用いたバーチャルメイク、画像解析による肌測定などビューティーテックを用いた化粧体験向上に従事している。

資生堂は創業150周年を迎える。これを機にデジタルトランスフォーメーションを加速すべく、アクセンチュアとの合弁会社として立ち上げたのが、資生堂インタラクティブビューティー。今後、資生堂はどのようにデジタル化を推進していくのか。DX本部の増田マネージャーにマーケティング戦略を伺った。

当社は2021年にできた新しい会社です。資生堂とアクセンチュアとの合弁会社で、資生堂のデジタルトランスフォーメーション強化のための戦略的子会社です。私は当社においてDX本部でオムニエクスペリエンスを推進していく立場にあります。

■オムニ体験によって販売促進する

オムニエクスペリエンスは「オムニ体験」と言われているように、リアルとデジタルを融合した新しい形をお客様に体験してもらおうとしています。特に「肌パシャ」というデジタルコンテンツは、スマホやタブレットで自分の肌を撮影して肌の状態を調べることができます。店頭において美容部員がお客様の肌カウンセリングをする際にも使用しています。
最初はデジタル上のみでの使用を想定していましたが、ローンチ後はコロナ禍があって店頭での非接触状態が保たれるということで、店頭でも導入されるようになりました。
現在はECだけでなく、店頭販売においても「肌パシャ」利用者の購入率が高くなってきており、リアルとデジタルの両方の領域で販売を促進させることができたと考えています。

■デジタルマーケティングが面白い

売上がCMに左右されるフロー型のマーケティング手法だけでは少し物足りないと考えています。まず、ソーシャルネットワークを活かしたストック型のマーケティング手法を用いながら、いろいろな角度から細かくアプローチをし、常に資生堂を身近に感じられる状態にすることが大切だと思っています。フロー型とストック型とを上手にリンクさせながら購入数を可視化できるように新たな手法を模索しているところです。
媒体に関してはさまざまなものを利用していますが、リンクを貼ることができるLINEやTwitter と、美容部員の活躍によるインフルエンサーマーケティングなど、効果の測定が詳細にできるものは特に注目しています。また、化粧品のモデルチェンジは他の商材と比べて比較的期間が長いので、お客様へのアプローチの仕方としては同じ商品でも異なる使い方を提案したり、見せ方を工夫したりしながら伝えていくことが大切です。どのアプローチに関しても正解はありません。だからこそ探求し続けていかなければならず、そこに大きなやりがいを感じています。

■老舗企業としてのイメージを生かす

資生堂は2022年で150周年を迎えました。150年も会社が続く理由としては、常にイノベーションを起こしているからであり、それを支える豊富な販売データとさまざまな販売チャネルがあるからだと考えています。そしてそれを適切に処理し、解釈できる優秀な人材が揃っています。肌データや購買データ、行動データなどのビッグデータを収集し、ECやリアル店舗へ多角的に提供できるチャネルもあるため、価値創造が非常にしやすく、その影響は多方面に広がっていくのです。
特に、ID(会員)がブランドを横断しているため、お客様のイメージがつかみやすくなっています。今後はこうした豊富なデータをもとに、スピード感を重視しながら資生堂のもつ安心や信頼といった企業イメージを大事にしつつ、デジタルとの融合を図っていければと考えています。

*message*

社会にあるいろいろな事象に対して常に疑問をもつことが大切だと思います。たとえば、近年は多くの企業がECを推進し、デジタル上で商品を紹介するようになり、紙媒体でのカタログを廃止する動きがあります。
その方向性は今のデジタル化やお客様の動向をとらえると正しい動きのように思います。しかし、私とある企業の間では、そうではありませんでした。
私は、子どもたちと紙のカタログを一緒に見ながら商品を選びたかったのです。私にとっては紙カタログを使ったとても楽しい時間だったのですが、その時間が無くなってしまいました。このときこの企業はどんな判断をすればよかったのでしょうか。私のようなケースは少ないだろうし、デジタル推進のために紙カタログ廃止は正しかったのでしょうか? 皆さんだったらどう考えますか?
このように、ある事象に対して企業や自分がどのように関わっていて、それに対して自分がどう考えたのかを深く追求することが大切です。世の中の事象を自分事化していくことによって、視座が高くなっていきます。そのような機会を増やすことで見える景色が自ずと違ってくるはずです。

学生新聞2022年10月1日発刊号 津田塾大学4年 宮田紋子

東洋大学3年 濱穂乃香/津田塾大学3年 佐藤心咲/日本女子大学4年 神田理苑/津田塾大学4年 宮田紋子/中央学院大学4年 田根颯人

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