一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行

「最高にかっこいい人でありたい」という想いが、原動力に

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行(さいとうまさゆき)

■プロフィール

1978年に奈良県生駒市で生まれる。2000年3月に立命館大学卒業後、コンサルティング会社に入社し飲食業のコンサルティング、事業再生等を手がける。その後、介護業界に転身し、老人ホーム会社の取締役運営事業本部長、デイサービス会社の取締役副社長を経て、2013年8月に株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。2018年6月に法人種別・サービス種別の垣根を超えた介護事業者の横断的組織である一般社団法人全国介護事業者連盟の設立に参画、2020年6月に理事長に就任。そのほか介護団体・法人の要職等を兼任し、介護業界の発展に心血を注いでいる。

法人・サービス種別の垣根を越えて、介護業界の事業者をまとめる団体「全国介護事業者連盟」を運営する斉藤正行さん。ベンチャー企業のコンサルタントから、「人のためになる仕事がしたい」と介護業界へと転身。現在に至るまでのその軌跡と、仕事に取り組む上で大事にしている姿勢について伺いました。

■井の中の蛙だと思い知った。刺激的な出会いと環境が自分を変える。

20歳の途中くらいまでは学校に行き、バイトをして友達と遊ぶといった至って普通の大学生活を送っていました。通学に2時間弱かかっていたので、その時間でとにかく本をたくさん読んでいましたね。移動中の読書に夢中になるあまり、そのまま大学に行かずに帰るなんてことも(笑)。幅広いジャンルを読んでいたので、それは今の仕事や人生観にも影響を与えてくれたと思います。
そして就職活動が迫る中で自身の将来について考えるようになり、議員向けの学生インターンシップに応募し、小池百合子都知事の元でインターンに参加しました。インターン期間が終わった後も小池さんに「しばらくうちで働かないか」と声をかけて頂き、秘書見習いという形で1年間働きました。同時に、 NPOの立ち上げや運営の仕事もしていました。この環境では、自分がいかに井の中の蛙だったかを思い知らされました。自分は何でもそつなくこなせるタイプだったのですが、ここでは学生でベンチャーの起業をしている先輩や20代で議員として活動しているような人が当たり前にいて、自分との圧倒的な差を身に染みて感じました。この時、僕の負けず嫌い精神が燃え、それからというもの「自分のような凡人が天才に勝つには努力するしかない」という想いでほとんど遊ぶことなく、仕事に打ち込む大学生活となりました。

■自分の価値観や美意識に照らして、最高にかっこいい人でありたい

大学卒業後は、ベンチャー企業のコンサル会社に入社しました。学生インターン時代の出会いから、僕自身もベンチャーの起業に興味がありました。とはいえ突然起業することはできないため、まずは会社にはいって下積みをしようと、敢えていわゆるブラック企業を選んで入社しました。
基本的に休みは月2、3日、平均退社時間は深夜1時といった、筋金入りのブラック企業生活でしたね(笑)。マネジメントやビジネス、コンサルティングの知識全般はもちろんですが、何より仕事への基礎体力は相当身につきました。この時よりしんどいことはほぼその後経験することはなかったので、介護業界に移ってからは自分としては8割くらいの仕事量でも周りからは「働きすぎだ」とドン引きされることも。かなり免疫力が付きましたね。
当時の自分を突き動かした原動力は、常に「他の誰でもない自分の価値観や美意識に照らして、最高にかっこいい人でありたい」「世のため人の為になることと、ドデカいことをしたい」という理想像を思い描き続けること。これが自分の生きる目的であり、人生の軸となっています。

■人の為になりたいと、介護業界へと転職

そして、実務を自分で推進していきたい、経営層に加わっていく環境で仕事をしたい、とアンテナを張っていったところ、僕の「人の為になる」という軸と合致している介護業界と出会いました。はじめに入った介護の会社では26歳で従業員兼取締役という立場でマネジメントの一端を担いました。そして7年間で介護施設を2か所から約150か所にまで増やし、3年で上場も果たすことができました。ここで働いていく中、僕の中で社会の問題が次から次へと見えて来るようになり、どんどんと介護事業にのめり込んでいきましたね。そして介護の在り方について、現場視点で厚労省と協議しながらあるべき姿にしていかなければならないと感じました。しかし、この上場企業の中で活動利益につながりにくい取り組みを進めることは難しい状況・立場でありました。僕は人生の中でこの大きな仕事を絶対に成し遂げるのだと決めていたので、2社目の会社に副社長として移ることを決意しました。

■声が届きにくい業界。だからこそ、現場視点で改革を続ける。

我々のような介護の業界団体は、実はありすぎるくらいたくさん存在しているんです。法人種別やサービス種別ごとに団体が細分化されていて一つ一つの団体が小さいため、声が国に届かないという実態です。だからこそ、皆が集まって大きな塊になる必要があります。そのために僕らは現場の声を届け続けているのです。同時に、我々は、社会保障制度を持続可能なものとするために、単なる介護報酬の増額を求めるのではなく、生産性の向上や規制改革などを現場視点によるルール見直しを提言し続けており、改革を続けてきています。

■求める人材は、イノベイティブな人材。

「自ら社会を良くしていきたい」「イノベーションを興していきたい」という人たちと一緒に働いていきたいです。人口構造上、介護職員を増やしていかなければならないことは確かです。その中でも僕は、介護業界でイノベイティブなことができると思っています。1つの軸は、DXやICTの技術を活用し、生産性を高める現場改革をしていくこと。他の業界に比べるとプレイヤーが少ないため、ある意味チャンスでもあります。そういう発想で社会を良くしていきたいという意欲のある人と一緒に働いていきたいですね。

■Message

介護と聞くと、大学生の皆さんにとって遠い未来の話で関心がないかもしれませんが、いずれ必ずと言っていいほど関わる話ですので是非アンテナを張ってみてほしいです。また、ビジネス的な視点でもチャンスに溢れている業界でもあります。そして、学生のうちにやりたいことはとにかくチャレンジし続けてください。皆さんが思っている以上に世の中は広く、人生は一瞬です。楽しみ方は人それぞれですが、必ず「自分流の軸」を見つけて、他者と比べるのではなく頑張り続けてほしいです。

学生新聞オンライン2022年11月30日取材 東海大学4年 大塚美咲

國學院大學3年 島田大輝 / 成蹊大学4年 岡田美波 / 日本大学3年 和田真帆 / 東海大学4年 大塚美咲 / 専修大学3年 竹村結

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