株式会社ユナイテッドアローズ 代表取締役 社長執行役員 CEO 松崎善則
ブレない信念を軸に、新たな”お客様価値”の創造を
株式会社ユナイテッドアローズ 代表取締役 社長執行役員 CEO 松崎善則(まつざきよしのり)
■プロフィール
1974年生まれ、埼玉県出身。1998年4月に入社。ユナイテッドアローズ渋谷店からキャリアをスタートし、販売職や店長職、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ本部長などを経て、2018年4月に上席執行役員、同年6月に取締役 常務執行役員。複数の主力事業の統括責任者としてグループの成長に貢献した。2020年11月に取締役 副社長執行役員に就任、2021年4月から現職。
セレクトショップ国内最大手、長年老若男女多くの人に愛されるユナイテッドアローズ。そして同社の社長である松崎善則氏は2020年11月の副社長昇格から4ヶ月で社長に就任した。そんな松崎氏に、これまでのキャリアやファッション業界の課題、そして同社のブレない経営理念についてなど、お話を伺った。
正直、高校までは勉強があまり好きではありませんでした。だから、とにかく高校卒業後は、大人からとやかく言われず、早く自立したいと考えていました。高校2年生の時点で大学進学という進路は自分の選択肢にはなく、卒業後すぐに働こうと決めていたのです。
ただ、働くといっても世の中には様々な職種があります。どんな仕事が自分に合っているのか?ということはかなり悩みました。1番強かった想いは、何かしら実態のある仕事がしたいということです。自分のやっている仕事が、何らかの形で人から感謝されるような手触り感が欲しかったんですね。となると、目の前のお客様としっかり向き合える仕事が自分に合っているなと考え、サービス業で働くことを決意しました。
接客スタイルに感動したことから、UA入社を決意
結果、ファーストキャリアとして選んだのはホテルでの仕事でした。ただ、高校生の自分にはホテルでの仕事が本当に自分に向いているのか少し自信がなかったので、高校卒業後はホテルの専門学校に通いました。そして専門学校卒業後にホテルマンとして3年間働きましたが、段々と仕事に飽きてきてしまい、退職することになりました。
「さて、次はどこで働こう……」と迷っていた時に、ふとユナイテッドアローズの店舗に訪れたのです。思い返せば、これが僕の人生のターニングポイントでしたね。店舗に入ったとき、僕は強い衝撃を受けたと同時に、大きな感動を抱きました。当時、アパレルで働く販売員はお客様を少し上から見たような態度がありました。でもユナイテッドアローズは、むしろ温かさや品の良さを感じさせる接客対応でした。
また、顧客のことを「お客」ではなく「お客様」と呼ぶのも、当時の僕からするとかなり珍しく、ホテルでの接客にかなり近いものを感じました。こうした人の良さを肌で感じて、自分もここで働きたいと強く思いました。すぐに求人を探し、まずは店舗のアルバイトスタッフから始め、気づけば次第に社内でキャリアを積み上げていくことになりました。
大事にしているマインドは、「今日より明日を良くしたい」
キャリアを積み上げていく中で、いつしか社長就任という結果になりました。僕自身が役職にこだわったことは一度もないのですが、絶対に「今日より明日を良くしたい」という気持ちは強く持っていたため、仕事をする上での昇進は必要なモチベーションになりました。
「3年後に社長になりたい」などの具体的な目標はなかったものの、「いまよりよくなりたい」と思っていたからこそ、日々前向きに仕事に取り組めたし、いつキャリアアップのお話があっても引き受けられる準備をしてきました。
なお「今日より明日をよくしたい」というマインドの根底にあったのが、バックキャストという考え方です。これは、月・年単位で将来どうなっていたいかを考えて、そこから逆算して現在何をすべきか考えるというもの。個人としてどうなっていたいかだけではなく、チームとして、そして会社としてどんな姿が理想か、より範囲を広げて考える癖がついていたことが、社長就任の大きな要因になったと思います。
ブレない「お客様ファースト」
ユナイテッドアローズは、とにかく人に優しいチームだと思います。ファッション業界は小売業なので、お客様を第一に考え、親切でいなければなりません。だからこそ、働くスタッフの間でも親切なコミュニケーションが自然と生まれます。
あとは定価で買っていただく努力をするというのは一つ重要なことです。セールが絶対悪とは思いませんが、セール商品を販売することはそれ以前に定価で買っていただいたお客様を悲しませることに繋がってしまいます。そうなると、「わざわざ定価で買う必要ないな」と、お客様が離れていくことになりかねません。
だからこそ、商品に付加価値をつけることで、定価でも快く買っていただけるような努力をしています。付加価値は大きく、「ヒト・モノ・ウツワ」の3つに分けられると思っています。ヒトは接客、モノは提供する商品・サービス、そしてウツワは内装の設えなど、店舗でお客様が目にするものを指します。
小売業は、いかに細部を見せるかが、大事
「リテール=ディテール」という言葉があるように、小売業はいかに細部までこだわりを見せるかが勝負になります。例えば商品の置き方一つ取っても、角度や見せ方によってお客様一人ひとりの反応は異なります。そしてディテールについて考え続けることが、結果的にお客様と徹底的に向き合うことに繋がるのです。我々はこのディテールへの追求を日々こだわり、そして積み重ねることでお客様に喜んでもらえるよう努力しています。
また、ファッション業界の課題として、同質化が挙げられます。これは、多くの企業が、市場でヒットすると思える商品に自社商品を近づけていくことで生まれる課題です。この課題は根が深く、近年では商品だけでなく、販売促進の戦略や方法までも模倣されつつあります。これでは同質化が進んでいく一方です。
だからこそ、当社ではお客様第一という基本姿勢は変えずに、他社と差別化を図りながら新たな潮流を作っていける会社に成長させたいと考えています。過去の経験に委ねすぎず、変化を起こし続けることのできる組織でありたいですね。
大学生へのメッセージ
しんどい時、辛い時は、これまでにもあったと思うし、これから先もあると思います。ですがその期間が人生の全てではないですし、皆さんには絶対に明るい未来が待っています。そして、これからの時代を創るのは皆さんです。若いうちは誰からも失敗を責められることはないので、何にも臆せず果敢にチャレンジしていってください。
学生新聞オンライン2022年12月28日取材 慶應義塾大学3年 伊東美優
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