キユーピー株式会社 代表取締役 社長執行役員 髙宮満

社会・仲間・利益を大切に、食を通じた健康への貢献を目指す

キユーピー株式会社 代表取締役 社長執行役員 髙宮満(たかみやみつる)

■プロフィール

1961年東京都生まれ。1987年東京水産大学(現・東京海洋大学)大学院を卒業後、キユーピー株式会社に入社。技術研究本部で外食・惣菜のメニュー開発やマヨネーズの開発などの部署を経て、2005年以降は商品開発本部、研究所、マーケティング本部などを担当。2019年上席執行役員、2020年キユーピータマゴ株式会社 代表取締役社長、2022年キユーピー株式会社 代表取締役社長執行役員に就任、現在に至る。

マヨネーズ、ドレッシング、パスタソースなど、気づけば食卓のあちこちで目にするキユーピー商品の数々。技術研究本部で入社してから二度の転機を経て、昨年春に社長へ就任した髙宮満社長に、今後キユーピーが目指す姿や働く上で求めることについて伺った。

東京の浅草で育ち、生き物が好きだった私は、東京水産大学へ進みました。大学では食品加工の授業を受けていましたが、ほとんど勉強せずアルバイトに時間を費やしていました。大学の掲示板で募集を探して、家庭教師や伝票整理、冷凍庫でカニを分ける仕事なんかもしていましたね(笑)。
勉強は、入社後に学び直しました。例えば、“缶詰の製造について”。何度の熱をかけると腐らないのか、どのような規定があるのか、そもそも何のために缶詰があるのかなど、学ぶべきことが沢山あります。大学時代は、この「何のために」という目的意識を持って学べていませんでした。皆さんも「この授業がなぜ必要なのか」という目的を意識するとと授業への向き合い方が変わるかもしれません。

二度の転機を経た社長が目指す、キユーピーのあり方

漠然と食べ物に関わる仕事がしたいと思っており、研究室の先生から推薦されたご縁で、キユーピーに入社しました。希望は営業部でしたが、大学院で食品衛生の研究をしていた経験から、入社後配属されたのは技術研究本部。シェフもいる中で研究するのですが、料理の経験がない私はわからないことだらけでしたね。たとえば、「アシェ」という言葉をご存じでしょうか。これは、(玉ねぎなどの)「みじん切り」のことですが、当時の私にはなんのことだかさっぱりわかりませんでした。作業名も分からず、仕事に対してなかなか目的意識が持てずにいました。
そんな私に、二度の転機が訪れます。1つ目は、社会人4年目で自分の研究内容について社長プレゼンをした時です。「君の研究は社会に役立つことだ。そして話も面白くて、応援したくなる」と、自分の仕事は価値があると褒めて頂けたことは非常に嬉しく感じました。
2つ目は、キユーピー マヨネーズを担当した時です。その当時は、自分が会社の中心にいるという錯覚に陥るほど、仕事にのめり込むようになりました(笑)。その後、新商品開発に携わった40代後半くらいから、自分の仕事に対する喜び以上に、仲間の成長に対する喜びを感じられるようになりました。
こうした二度の転機を経て、仕事にやりがいを見出すようになり、お惣菜やファインケミカル、キユーピータマゴなど、あらゆる経験を積んでいきました。そして2022年春、キユーピー株式会社の社長へ就任しました。
就任後は、当社が実現したい3つの事について全社員に向けて動画でメッセージを伝えました。
1つ目は「お客さまに喜ばれる商品やサービスを通じて社会に貢献しよう」。最も大事なのは誰かの役に立つことです。ありがとう、美味しかったと感じられる食の提供で、社会に貢献していきます。
2つ目は、「仕事を通じて成長、悦び合える仲間になろう」。環境が厳しくなると直近の時間軸で判断してしまいますが、仕事を広く長い目で見て成長し、悦び合える仲間意識が大切です。
3つ目は、「利益を稼ぐ会社になろう」。利益=商品やサービスの価値を認めていただいた証です。その利益で環境に向きあい、未来へ投資していくことで、さらに世の中の役に立つことができると考えています。
現在、仲間である社員たちは苦労しています。マヨネーズは主原料の植物油が高騰し、以前の約3倍の値段になっています。さらに卵も、鳥インフルエンザの影響で厳しい状況です。営業も生産も苦しい中で仕事をしています。でも、幸いキユーピーには確立したブランドと商品があります。私はプライベートで会った人に自分の社名を出して、「何の会社ですか」と尋ねられたことは一度もありません。それだけ強固なブランドと商品を先人達が育ててくれたのだと、いつも感謝しています。
食品は、食べ比べて買うことが少ないからこそ、ブランド認知が確立していることは有難いことです。私は社長としてグループの事業所約150カ所を回り、「ブランドと商品を持っているのだから大丈夫だ! 大変な環境だからこそ自信をもって堂々としよう!」と仲間たちを鼓舞しています。俯瞰して全体を見て、皆の不安を払拭することが社長の仕事だと思っています。

新たな食卓の提案へ、自己実現と期待役割を求む

キユーピーの役割は「食を通じた健康への貢献」です。創始者の中島董一郎は、欧米人に比べ日本人の体格が貧弱なことを鑑み、美味しさを追求するだけでなく「食を通じて日本人を健康にしたい」という想いを持っていました。今後も食を通じた未病・健康への貢献で、より一層世の中の役に立つことができると考えています。
また、当社コーポレートメッセージとして「愛は食卓にある。」を掲げていますが、近年共働き世帯が増え、食卓の概念も変わってきているため、一人で食べてもおいしく健康な食事を届ける必要もあると考えています。「食卓=食べ物と向き合い幸せになる空間」として捉え、時代のニーズに合わせた食卓の提案をしていきたいですね。
そのために、キユーピーグループの社員には、意識してほしい事を3つ伝えています。
1つ目は、「自己実現」です。グループには1万人を超える社員がいますが、全員に必ず聞くことがあります。それは「あなたは何をしたい?」という質問です。なかなか答えられない人が多い。ところが「小学生の時何になりたかった?」と聞くと、ほとんどの人が答えられるのです。その気持ちを忘れないで持っていてほしいですね。自分は何がしたいのか、自分の存在価値をどこで示すのか。これは仕事においても生活においても一番強く持つべきことです。
2つ目は、「期待役割」です。会社に意味のない人、仕事はありません。研究開発部では「玉ねぎのみじん切りを作るのか」と思いましたが、それが私に期待された役割だったわけです。今の自分は何を期待されているのか認識するだけでも違うので、ぜひ意識してほしいですね。
3つ目は、「自己実現と期待役割が重なる努力」です。両方かみ合って力を発揮できる状態が理想です。そのためには、やりたいことを叶えつつ、期待に応えられるような努力が必要です。
今後は、さらなる海外展開や新たな食生活の提供もしていきます。ぜひ私達キユーピーと食を通じた健康への貢献をしていきましょう!

大学生へのメッセージ

とにかくいろいろなことに興味を持って行動してほしいですね。相田みつをさんの言葉に『とにかく具体的に動いてごらん。具体的に動けば具体的な答が出るから』という言葉があります。ここ数年、コロナで活動制限されていたからこそ、躊躇しないで、まず行動してみてほしいですね。一歩を踏み出すことが、道を切り開くきっかけになると思います。

学生新聞オンライン2023年1月30日取材 専修大学3年 竹村結

慶應義塾大学 3年 伊東美優 / 立教大学 2年 福田さくら / 専修大学3年 竹村結 / 日本女子大学 4年 神田理苑

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