株式会社CaSy 代表取締役社長 加茂雄一 

ビジネスとは、他者を愛し、力になりたいという想いから生まれる。

株式会社CaSy 代表取締役社長 加茂雄一 (かもゆういち)

■プロフィール
早稲田大学商学部在籍中に公認会計士を取得。卒業後、監査法人でキャリアをスタートさせた後、グロービス経営大学院を経て、2014年に家事代行サービスを行う株式会社CaSyを設立。2022年、マザーズ市場(現グロース市場)に上場。

「妊娠中の妻を助けたい」。そんな想いから生まれた、家事代行プラットフォームを運営する株式会社CaSy。IT技術の活用で価格と手間を抑えたサービスを強みとし、2022年に上場を果たした。他社にないITノウハウや社員を愛する想い、家事代行という選択肢を当たり前にするための施策とは。人間愛溢れる加茂雄一社長を取材しました。

華の大学生活から一転、勉強とアルバイトのハードな日々

大学1、2年の頃はフットサルサークルで活動をしたり飲み会をしたりと、とにかく大学生活を楽しんでいました。ただ、商学部だったこともあり、会計士の勉強に熱を注いでいる人が周りに多く、難易度の高い試験だったため自分もチャレンジしたいなと思ったことがきっかけです。また大学の卒業と共に親が定年退職だったため、それなりに収入の高い職に就きたいという想いもありました。そこで、3年の後半頃から専門学校で会計士の勉強を始めました。ただ、深夜のコンビニアルバイトもしていたので、毎日1、2時間しか寝ないような生活を送っていました。この時が一番勉強していましたね。毎日15時間くらい勉強する日々の末、4年の時に会計士の試験に合格することができました。

「一番身近な人を笑顔にしたい」出会ったのは、家事代行サービス

卒業後は、監査法人に就職。会計士の求人は時期によって波があるのですが、僕が就職活動をしていた時はどこもウェルカムな状態でした。また、会計士として自分自身に色を付けるため、グロービス経営大学院にも通い始めました。当時僕は自分の収入を増やすために会計士になりましたが、同世代のベンチャー社長と多く関わるようになり、自分視点ではなく利他の精神で志を持つ人たちから刺激を受けました。グロービスに行こうと決めたのは、この精神を学びたかった部分もありますね。
そんな中、誰か身近な人を笑顔にできるサービスを作りたいと思いました。その時に一番身近にいたのが、妊娠中の妻だったんです。当時僕は妻に代わって家事をやっていたのですが、あまり家事が得意ではなかったので、反対に妻にストレスを与えてしまう。そこで家事代行サービスを利用した際、僕も妻もお互いに余裕が生まれて家族に笑顔が戻ってきたように感じました。それと同時に「このサービスにはまだまだ改善点や将来性がある」と感じ、事業開発を決めました。

ネックに感じたのは、価格と手間。ITの活用で忙しい人達も使いやすいサービスへ!

従来の家事代行サービスの課題として気になったのが、価格と手間です。当時の価格相場は1時間4千円から5千円で、継続的に利用するにはかなり高額でした。また手間についても、コールセンターに電話をして日程調整をして営業の方と話し、スタッフとつないでもらう工程があったので、電話してから利用に至るまでは2週間ほどかかったんです。忙しい人が使うサービスにしては時間がかかりすぎると感じました。そこで、当時発展し始めていたメルカリやウーバーなどのシェアリングエコノミーの概念を家事代行サービスに応用できないかと考えたのです。インターネット上でお客様が登録をし、その情報を元にスタッフが応募するというシステムにすることで営業の人件費を削減でき、インターネット上でのマッチングで最短3時間後にスタッフを手配できるようになりました。

高いサービスの質と信頼性、低価格を実現したCaSy

サービスの質を高めるためにキャスト(CaSyの家事代行スタッフ) のエンゲージメント 向上にはかなり注力しています。家事代行業務は基本的に直行直帰なのですが、そこに会社が加わっていくため、キャストの書く日報に本部の社員がスタンプを押す仕組みや、お客様からのサービス評価によってキャストのランクが上がって時給 報酬アップやエプロンの色が変わるなど、キャストが成長や貢献を実感できる工夫を凝らしました。
また、家事代行サービスは信頼性が要です。会社を上場させたのは、会社の信頼を高めるためでもあります。キャストのサービス品質も信頼を高める上では重要であるため、毎月「CaSyサロン」という定期的な勉強会を開催しキャストに自己研鑽の機会を提供したり、お客様から低評価を頂戴してしまったキャストには本部でのスキルアップのための研修を受講いただく制度も取り入れています。会社が間に入ることでのサービスの質の向上、そしてITを活用したマッチングによって営業の手間と価格を抑えることで他社との差別化を図っているのです。

失敗経験から学んだのは、社員を愛することの大切さ

会社を経営する中で、社員の3分の1くらいが辞めてしまうという経験もありました。ちょうど上場を目指していた頃で、それまでの自由な社風から会社の行動指針をはっきりとさせようとするムードに移行している時期でした。また、僕自身が社員よりも株主に目を向けすぎてしまったということも要因だったと思います。その経験を経て、「社員がキャストやお客様に全力で目を向けられるよう、僕は社員を一番に大切にしよう」と決めました。

目指すのは、「人に頼む」という選択肢が当たり前の世の中

まだまだ家事代行を日常的に利用している人は日本では2~3%程です。家事代行という選択肢が当たり前になるような世の中を創っていきたいです。そのために、「MoNiCa(モニカ)」という家事代行向けのシステムを作っています。これはIT投資がまだできていない家事代行の中小企業に向けて、僕らの強みであるITを開放して業界全体をDX化させ、サービスを利用しやすい世の中を創ろうと試みです。今後、幅広い企業での導入を見込んでいます。

メッセージ

大切なのは、愛することです。僕は会社を経営する中で、人を巻き込むことの大切さを身をもって実感しました。巻き込む相手を愛することが一番大切です。力になりたい。笑顔にしたい。そんな風に目の前の大切な人のために自分がどう役に立てるか「利他」の気持ちで行動すること。そうすれば、社会に出てから多くの人を巻き込み、大きな笑顔を生み出す事を成せる人間になると思います。

学生新聞オンライン2023年2月16日取材 東海大学4年 大塚美咲

東海大学4年 大塚美咲 / 立教大学4 年 須藤覚斗  / 中央学院大学4 年 田根颯人

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