森ビル株式会社 取締役社長執行役員 森浩生

ヒトの営みの全てを支える「森ビル」で東京を“再開発”

森ビル株式会社 取締役社長執行役員 森浩生(もりひろお)

■プロフィール

東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て森ビル株式会社へ入社。2013 年より取締役副社長執行役員、株式会社森ビルホスピタリティコーポレーション代表取締役社長へ就任。2011年より一般社団法人東京ビルヂング協会理事、2016 年より日本国際貿易促進協会副会長、2021 年より公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン副理事長、一般社団法人日本ホテル協会会長を務める。

麻布台ヒルズという「グリーン」と「ウェルネス」をコンセプトとした全く新しい「街」を創出し、世界中から人や企業を呼び込もうと取り組んでいる森ビル。取締役副社長執行役員である森浩生氏に、森ビルの現在の取り組みやこれまでの自身のキャリアについてお話を伺った。

中学から大学までテニスに全力を注ぐ学生でした。中学時代は全国大会で優勝、高校時代は国体出場、大学ではキャプテンを務めました。就活の際には大手企業から選手としてきてくれないかと打診されるくらいテニスに夢中でした( 笑)。学生時代に「何かをやり遂げるために打ち込んだ経験」と「テニス仲間と良い関係がつくれたこと」は、非常に良かったと思っています。

就職先は、企業の血液として日本経済に貢献できる銀行に決めました。当時の銀行はゼネラリストの育成を目指し
ていたため、半年かけてさまざまな部門を経験した後、在籍していた9年間では窓口業務、証券会社への出向、株式の運用を行うディーラー業務、マクロに業界を調査する産業調査部など、多様な経験を積むことができました。その後、結婚を機に銀行を退職し、森ビルに入社しました。

■森ビルはヒトの全ての営みを支える存在

森ビルは働く場所、住む場所、買い物する場所、公園など、あらゆる都市インフラを作っており、銀行とは別の形で社会貢献ができると考えていました。転職後のギャップを挙げるとすれば、ゼネラリストとスペシャリストの違いだと思っています。銀行は多くの部門に移ったり海外勤務があったりするので、比較的視野が広いゼネラリストが多い印象です。対して当時の森ビルは、各専門領域の知識に強みのあるスペシャリストが多いと感じました。森ビルは衣食住、ヒトの全ての営みを支える存在だと思っているので、今は広く社会の動向を知れる人材を増やそうとしています。私自身は設計・営業・管理・運営などを幅広く見る立場にいたことがあり、わからないことは積極的に聞き、他人頼みではなく自分で考えて判断していくことを意識し仕事をしてきました。

森ビルの強みは非上場企業ということもあり、「やるべきことをやる」という点にあると思っています。森ビルが都市の再開発をする際のテーマの一つが“職住近接”です。東京と海外の諸都市を比較すると、昼間の人口はそこまで差がないのに対し、東京都心部は夜間人口が大幅に減ることがわかっています。職住近接の都市づくりを進めることで、通勤ラッシュの減少や、移動に関わる使用エネルギーの減少につながります。また、今の東京・日本とアメリカやシンガポールなどの国際都市を比べると、ラグジュアリーサービスを受けることができるグローバルレベルのマンションが少ないという現状があります。グローバルレベルのマンションが増えることで、世界のトップ人材が日本に集まり、日本経済の発展につながると思っています。

今建設中の「麻布台ヒルズ」にあるアマンレジデンスを含むMORI LIVINGの住宅は、従来の日本の住宅マーケットにはなかったラグジュアリーレジデンスとして誕生します。コロナ禍の影響で外国人の方々が日本に来れない状況だったので営業面で苦戦するかと思っていましたが、非常に好調です。強固なセキュリティや安全性、さまざまな付帯施設やサービスなどがグローバルプレーヤーのニーズと合致しているのだと思います。

また、森ビルでは、六本木などの昔から多くの人々が住んでいる既成市街地で地元住民の方々と一緒に街づくりしています。そのため、六本木ヒルズは建設完了までに約17年、「麻布台ヒルズ」では着工までに約30年を費やしています。よりよい街づくりをするためには、時間や労力がかかっても、多くの人々と共に進めることが大事です。これも「やるべきことをやる」会社であることを物語っていると思います。

■〝自分で仮説を立てられる人〟と働きたい

一緒に働きたい人の特徴は主に2点あります。1点目は、森ビルには都市づくりにおけるパーパスやミッション、ビジョンが明確にあります。これに共感して働ける人です。共感することで、自分の業務の先にある社会的な意義を知ることができ、困難に直面してもがむしゃらに働くことができます。2点目は、社会が急速に変化している中で、自分の頭で考え、自分なりの仮説を立てることができる人です。これができれば、「仮説のどこが合っていて、どこが間違っていたのか」がわかるようになります。しかし、これができていないと、商品とマーケットがずれたときなどに、「そもそもの前提が誤っていたのか」「マイナーアジャストメントで足りるのか」が判断できません。

このように、「自分の仕事に社会的意義を見出せる人」や「仮説を立てることができる人」と一緒に働きたいですね。

■message

私たち世代の日本の教育では、答えがある問題に取り組み、「いかに正しい答えを出せるか」「いかに早く答えられるか」で評価が決まるシステムでした。これではイノベーティブな仕事ができないと思っています。そのため、皆さんには答えがない課題に対して、自ら考えて、自分なりの答えを創り出してほしいと思います。これは他人に教えてもらってできるようになるものではありません。日々の生活の中で強く意識しながら、自ら進んで取り組んでみてください。

学生新聞2023年4月1日発刊号 中央学院大学 4年 田根颯人

川村学園女子大学4年 岡崎美諭/中央大学2年 松島鈴音/國學院大學3年 島田大輝/立教大学4年 須藤覚斗/中央学院大学4年 田根颯人/法政大学3年 鈴木悠介

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