株式会社MORIYA CEO・俳優・アーティスト 坂東工

アートで笑顔の循環を

株式会社MORIYA CEO・俳優・アーティスト 坂東工 (ばんどうたくみ)

■プロフィール

俳優・ナレーター・アーティスト・起業家とパラレルキャリアを実践。『硫黄島からの手紙』などハリウッド映画出演。2011年、アーティスト活動を始動。株式会社MORIYA代表取締役。Amazon Prime配信リアリティーショー『バチェラー・ジャパン』『バチェロレッテ・ジャパン』全シリーズ司会進行。2018年12月、俳優・司会としての活躍が知られる一方、エネルギーを表現するアート作品「オーラアート」が注目を集めている。

10代から一人暮らしやアメリカでの16万キロの旅など様々な経験をし、ハリウッドで俳優デビュー。今では「バチェラー・ジャパン」「バチェロレッテ・ジャパン」全シリーズの司会進行、俳優、声の仕事やアーティストといった波乱万丈な人生を送っている坂東工さん。彼は数奇な経験を通し、「実体験することの重要性を痛感した」と語ります。彼のこれまでの過ごし方、仕事で心掛けていることについて伺いました。

家庭の事情により、10歳くらいから一人暮らしをしていました。親から毎月送られる3万円の仕送りに加えて、新聞配達などの様々なアルバイトでお金を稼ぎながら生活をしていました。ただ、銀行のATMに行っても小さな子どもだったので、ガードマンに止められることも日常茶飯事(笑)。日々の生活に追われていたので、「自分が将来何をしたいか」ということを考える余裕もありませんでした。そんな中、高校生の時に演劇の世界に触れ、演出家になりたいと思うようになりました。演出家は自分の想像力を活かして、創造する世界を伝えられる役割だと思ったからです。そこで、演出家を目指すため、日本大学芸術学部に進学しました。ただ、今となって思うことは、「学ぶことも大切だが、新しい世界に勇気を持って踏み出していくことが大事」ということ。

■オンリーワンの人生を歩むきっかけ

兄は一流大学に通い一流企業へ勤めるエリートで、姉はボストンへ留学する勉強家。そんな兄と姉を見て育ったので、いわゆる一般的な人生の進み方というものに触れる機会がなく育ちました。また、小さいころから一人で過ごしているので、自分のことを見守ってくれる人が誰もいませんでした。就職という選択肢も自分の中になかったので、自己発見のために、大学卒業後はアメリカ、ニューヨークに行きました。
アメリカでは約2年間、16万キロの旅をしたのですが、至近距離で冬眠前の危険な状態のクマに出会ったり、銃で撃たれたりと、危険なことにたくさん遭遇しました。この旅の道中、たまたま演劇学校の募集記事を掲示板に発見し、応募したのが表現者としてのスタートでした。それがもしもカメラマンの募集だったとしたら、今はカメラマンになっていたかもしれません。
当時の自分は、特に意図もなく、誰かに何かを教わったり誰かの真似をすることも得意ではありませんでした。オンリーワンの生き方を目指していたわけではなく、自分が得意なものは何だろうと突き進んでいると、結果的に自然とオンリーワンの存在と言われるようになって行ったのかもしれません。「自然に導かれていた」のかもしれませんね。

■「自我」から「社会貢献」の視座へ

現在は、婚活リアリティー番組の司会進行、エネルギーを描くアートの制作、俳優や声の仕事、会社経営、CM制作、ディレクションやプロデュース、講演活動など、幅広く活動しパラレルキャリアを実践してます。例えばアートの仕事ひとつ取っても、昔は魂を燃やし、上り詰める事を目指していましたが、今は心を開いて相手の方の人生を受け取り、自然体でアートを作り出す、そんな風に心を豊かにするような表現や働きに変わっていきましたね。
魂を燃やして仕事をするようになったきっかけは、アメリカでのオーディションです。オーディションは役を取り合う椅子取りゲーム。自分が一番だと思っていないと他の人に弾き飛ばされてしまいます。自分が出す言葉が自分を作ると思っていたので、突き抜けるハングリーさ、自分が一番であることを重要視して、毎日を過ごしていました。その結果2年間、アジア人俳優として売上が1位という快挙を成し遂げました。
ただ成果を得たものの、ふと振り返ってみたときに、自分の仕事の成功を喜んでくれる人が周りにいないことに気づきました。そこでふと、虚しくなったんですよね。自分が今やっていることと、本当にやりたいことの間に、大きな乖離を感じたのです。
本当のところは、誰かに喜んで欲しかった自分がいたのかもしれません。ある恩人に「お前そのままだと魂尽きちゃうよ」と言われ、周りを見てみると、確かに周りには多くの方が笑顔で作品を作り出していることに気づき、自分もそうなりたいとぼんやり思ったんです。
そんな時、偶然「絵を描いて欲しい」と言われて描き始めたのが、「オーラアート」の原型です。相手が発しているエネルギーを受け取り、「意図なく」ただただ感じるままに体を通して描く絵画です。相手に対して自分が心を開くことで、相手も心を開いてくれる。そして自分の中に相手が入り込むことで、僕はなんの構図も意図もなく、絵を描くことができる。
このような心の循環を通して、「関わってくださる方に豊かな心になっていただけるような表現をしていこう、サービスを提供して行こう」と思うようになりました。自分のことしか考えられなかった時代から、いつの間にか、自分ができることは何だろうという能動的な視点が育ち、社会貢献という視座へとシフトしています。

■今、この瞬間を大切にしたい

今後やりたいことは特に考えていません。それよりも今、この瞬間を大切にしたいと思っています。その時、その場にいる方に、より良い時間・空間という「体験」を感じていただきたい。また、常に型にはまることなく、面白いことを探すことができたらいいなと思っています。実はそのためには、自分が楽しんでいることも大切だったりしますね(笑)。

■大学生へのメッセージ

人生は思ったように歩んでいける可能性に満ちています。逆説的なことを言うようですが、だからこそ、色々なことを諦め、自分に誠実に生きてほしいです。諦めるという言葉にマイナスな印象を受ける人がいるかと思いますが、『諦める』は『明らかにする』から来ています。そのため、自分に向いているもの、向いていないものを明らかにして、向いていると明らかになったことを楽しんで欲しいです。
また、「人に対してマイナスな印象を与えないかな?」と考えることも大事なことでもありますが、自分が本当に素敵だと思うものを選択すること、やりたいと思うことを行動していく事の繰り返しが、自分と社会の豊かさにつながると思います。

学生新聞オンライン2022年12月19日取材 中央学院大学4年 田根颯人

東海大学4年 大塚美咲 / 立教大学2年 福田さくら / 中央学院大学4年 田根颯人 / 津田塾大学4年 宮田紋子 / 専修大学3年 竹村結

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