株式会社ハルメクホールディングス 代表取締役社長 宮澤孝夫

お客様の声に耳を傾け、シニア女性の幸せを共に創る

株式会社ハルメクホールディングス 代表取締役社長 宮澤孝夫(みやざわたかお)

■プロフィール

東京大学大学院工学系研究科修了後、野村総合研究所へ入所。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営大学院でMBA取得後、ボストン コンサルティング グループに入社。1996年、(株)テレマーケティングジャパン(現(株)TMJ)に入社し、2003年には同社代表取締役CEOに就任。2009年、いきいき(株)(現(株)ハルメク)の民事再生からの再建を委任され代表取締役社長に就任。2018年4月、持株会社株式会社ハルメクホールディングスを新設し代表取締役社長に就任し、現在に至る。

「50代からの女性がよりよく生きることを応援する」を企業理念に掲げ、女性シニア層の絶大な支持を得るハルメクホールディングス。発行する雑誌『ハルメク』は、全雑誌の中で販売部数No.1(日本ABC協会発行社レポート(2022年1月~6月))を記録する。そんな同社の宮澤孝夫社長に、これまでのキャリアや、現在の会社の地位を築いた秘訣について、お話を伺った。

大学時代の私は、東京大学大学院の工学部で航空宇宙学について学んでいました。小さい頃から好きだった飛行機の設計をしたいと、かなりの熱量を持って入学したのですが、実際の授業は思っていたものと違って。正直、授業の内容は少し退屈で、勉強のやる気がなくなってしまったんです。そこからは、飛行機やジェットエンジンの設計よりも、飛行機をつくる会社の経営に興味を抱くようになりました。社長になりたいと夢を抱くようになったのも、この時期でしたね。

■常に向上心と好奇心を持ち、経営のプロを目指す

大学卒業後、航空宇宙工学科専攻生にとって一般的な就職先としては重工系や自動車メーカーが挙げられる中、私は保守的な就職先に魅力を感じませんでした。そこで、大学で学んだ知識や技術が活かせることに加えて、新たに関心を持った経営について学ぶことができる野村総合研究所に入社しました。社長になるには、今まで培った理系の知識だけでは不十分なので、野村総研の留学制度を利用して、UCLAのビジネススクールに2年間通い、経営の勉強をしました。現地の「学んだ知識をすぐに社会で実践してみる」という教育方法に刺激を感じ、改めて経営を学ぶことの楽しさを実感した日々でしたね。 
帰国後、経営者としての自分はまだ三流だと感じ、一流の経営者を目指すためにボストンコンサルティンググループに入社しました。私の経営知識の基礎はここで築けたと思っています。知識を蓄えると、他会社の支援をするだけでなくて、今度は自分が当事者となって会社を経営したいと思うようになりました。そこで、発展途中のテレマーケティングジャパン(TMJ)に入社し、自分の力で会社を大きく展開させる経験を積みました。実績も出て安定した頃、今度は経営破綻した会社の立て直しに乗り出しました。TMJで、小さな会社を大きくさせることには成功しましたが、その次に、傾いた会社の再生ができれば、本当の経営のプロだと言えると思ったからです。こうして、自分の経営者としての腕を試すため、オファーがあったハルメクホールディングスの社長に就任しました。

■魅力は、唯一無二のビジネスモデルと徹底したお客様理解

立て直しのための取り組みは、大きく二つ。一つ目は、今や他社との差別化となるビジネスモデルの確立です。当時から当社の事業は、情報コンテンツ、物販、イベント運営の三つの柱で成り立っていました。私はこの三つの事業がそれぞれ独立して運営されていることを問題点だと捉えました。そこで、全ての事業を関連させて一つのサイクルを組もうと、各事業の役割を再定義しました。具体的には、情報コンテンツは、質の良い記事を届けて新規のお客様獲得を目指すこと。物販は、そのお客様のニーズを捉えた商品を販売し、事業運営の資金調達をすること。イベント運営は、雑誌『ハルメク』の人気企画をもとにイベントを開催し、お客様と実際に交わって信頼関係を築くこと。結果、全ての事業が互いに好影響を与え合い、当社が誇るビジネスモデルとなりました。二つ目は、お客様の理解度の向上です。葉書アンケートをもとにお客様であるシニア層の調査をすると、社内のシニア層に対する先入観が浮き彫りになりました。根拠のないシニア層のイメージは捨て、実態に基づいた情報発信や商品開発を心がけると、自然と利益が伸びました。現在では、アンケートだけでなく、実際にお客様と対面してニーズを理解する場を設けたりして、ハルメク読者の本音に寄り添った記事や商品、イベントを提供しています。そのおかげで、「ハルメクは私の友達」だと感じてくれる読者の方が増え、「私たちもハルメクをより良くしたい」と積極的にアンケートに回答頂いていることも、大変ありがたいです。この双方向のコミュニケーションが当社の特徴ですね。

■本音を共有してくれる人と働きたい

新入社員に対しては、「シニアを幸せにしたい!」という強い思いがある人を採用したいです。「50代からの女性を幸せにする」という当社の企業理念に共感してくれる人が大前提で、面接では、建前ではなく本当にその熱意があるかどうかを見ています。現に、当社の社員は本当にそう思っている人ばかりですから。日本女性の半分以上が50歳以上である今、シニアが幸せに暮らせる社会の実現は重要です。しかし、シニアのターゲッティングに事業機会を感じる人よりも、お客様のためにユニークなものを創り出すこと自体に面白みを感じてくれる人と働きたいです。
また、社員に対しては、能動的に考えて自分の意志を持つことを期待しています。私は、組織のヒエラルキーに左右されず、社員全員が対等であることを念頭に置いています。だからこそ、社員には自分の意見を持っていてほしいし、会議ではそれを共有してほしいですね。

■大学生へのメッセージ

自分の世界を絶えず広げると良いでしょう。好奇心を持って、何事も経験し、視野を広げることで、自分の考えを持って話せるようになりますから。意思を持って話す人は、就活の面接時に好印象ですよ。事前に面接の質疑応答を想定して準備している学生よりも、その場で自分の言葉で語ることができる人を採用したくなります。私がロサンゼルスに留学した経験で考え方が変わったように、挑戦することで一歩成長できます。大学生活の中で、皆さんが自分の価値を高められることを応援しています。

学生新聞オンライン 2023年4月4日取材 上智大学2年 吉川みなみ

慶應義塾大学 4年 伊東美優 / 立教大学3年 緒方成菜 / 専修大学4年 竹村結 / 上智大学2年 吉川みなみ / 立教大学4年 須藤覚斗

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