女優 花瀬琴音

自分ができることをただひたすら一生懸命に

女優 花瀬琴音 (はなせことね)

■プロフィール
2002年生まれ。主な出演作は 映画「すずめの戸締まり」海部千果役(2022/声優)、TOKYO MX「異物-アナザーストーリー-」(2023)、MV 優里「恋人じゃなくなった日」(2023)などがある。

「安室奈美恵さんに憧れ、小学生のときに芸能の世界に足を踏み入れた」と語るのは、女優の花瀬琴音さん。今では映画『すずめの戸締まり』の海部千果役や『遠いところ』の主人公・アオイ役など様々な場所で活躍している。若くして芸能界へ入った彼女の今後の展望や、映画『遠いところ』の見所についてお話を伺った。

■安室奈美恵に憧れ芸能界へ

私が芸能界を本気で意識し始めたのは、小学生の頃です。きっかけは、歌手の安室奈美恵さんの存在でした。小さい頃に彼女の歌声に魅了され、「将来は歌を職業にしよう」と思い、芸能スクールに入ったのです。
しかし、早い段階で「自分には歌の才能がない、安室ちゃんになれない」と思い知らされました。その瞬間に歌の道は断念し、女優の道に進むことを決意しました。デビューするまでは舞台を通じて様々な経験を積みました。

■仕事を辞めたいと思ったことは一度もない

映画、テレビ、ドラマなど、全ての映像の中に残るのは私ですが、その裏側には両親をはじめ、監督やアシスタントさん、メイクさんなどいろんな方々のサポートがあり、それなくして素晴らしい作品ができないと感じています。
一方で多くの人に支えられているからこそ、「絶対に自分がミスしてはいけない」とプレッシャーを感じることもあります。毎回、本番で最大限のパフォーマンスをするため、何回も練習に練習を重ね、撮影が終わり完成を見るまで安心できません。このようにお仕事をしていて責任感を感じる場面は多々ありますが、それでもこの仕事を辞めたいと思ったことは一度もありません。
多くの方に支えられているという強い思いに加えて、小さい頃に思い描いた「なりたい自分」になれていることが、私の中で大きな原動力となっています。もはや、自分にはこの職業しかないと感じています。今後も、長い間支えてくれた親に恩返しをしつつ、携わってくれた人たちと一緒に笑うために、作品を背負って成長していきたいと思っています。

■映画『遠いところ』について

映画『遠いところ』への出演が決まったときは全く実感が湧きませんでした。作品の舞台が沖縄だったのですが、「私、本当に沖縄にいくの!?」とも思いましたね(笑)。アオイは若い頃から子供を育てたり、旦那に暴力を振るわれたりと自分では想像ができない様々な苦労を経験してきた非常に強い女性です。私の日常とはかけ離れている中、どうやって演じたらよいのか悩みました。
撮影の1ヶ月半前から沖縄で役作りをさせていただいたのですが、沖縄に入ってから驚いたのは習慣、方言、食生活、コミュニケーション方法、すべてが私の中の常識と全く違うことです。夜が東京と比べて明るかったり。撮影に入る前に、アオイのような境遇の方に会うことができ、お話しさせていただいたことで、ようやく役柄に対する実感も湧きました。撮影前の沖縄での1ヶ月半は本当に有意義だったなと思います。
撮影現場では、実は撮影に入る直前まで台本をもらうことができませんでした。これは監督の「作品というよりはリアルを届けたい」という意向でした。初めは非常に不安でしたが、撮影前の沖縄滞在の経験をそのまま活かすことができ、嬉しかったです。流れに身を任せ、「演じる」よりは「表現する」ことを意識して撮影に臨んでいました。
演じる中で難しかったのは、やはりアオイと私の間に共通点が全くない事です。
私の中では非日常だけど、アオイにとっては当たり前の環境。否定はせず、全てを取り入れ、受け入れ、彼女の思いに壁を作らないように努力し、常にアオイへリスペクトの気持ちを忘れずに演じていました。

■この作品で描いている問題は、自分のそばにある問題

この作品を観て「これはフィクションではなく、現実世界で実は自分のすぐそばにある問題なのだ」と感じてもらえれば、嬉しいです。また、舞台である沖縄にしかない独特の雰囲気、空気感やきれいな海など、その美しい風景に心に残っていただけるのではと思います。
余談になりますが、作中にアオイのトイレでのシーンがありますが、監督に「トイレでのシーンは撮らして欲しい」と熱量高く言われました。私の中では「どうしてそこまでトイレのシーンにこだわるのだろう」と疑問に思っていたのですが、作品が完成したときに初めてそのシーンが「ありのままの日常」を表現する重要な役割を担っていることに気付きました。その場面があることで、この映画を観る人がこれは「映画のために作られた映像」ではなく「今もどこかで起こっている現実」であることを認識することができるのだと感じました。このように細部までこだわって作られた作品ですので、是非劇場で見て頂けると嬉しいです。

■大学生へのメッセージ

映画『遠いところ』は私と同世代の若い人たちに一番見てもらいたいです。これからの未来を作っていくのは今の学生の方たちです。
映画を通して、今まで先人たちが目を背けてきた現実を見つめ、今日本が抱えている問題を知ることで、「なにか自分にできることはないかな」と考えるきっかけになって欲しいなと思います。

学生新聞オンライン2023年6月15日取材 中央大学2年 前田蓮峰

<作品紹介>
タイトル:『遠いところ』
公開日:7月7日(金)全国順次公開6月9日(金)沖縄先行公開中
監督・脚本:工藤 将亮
キャスト:花瀬 琴⾳
石田夢実、佐久間祥朗、長谷川月起/松岡依都美
主題歌:“Thanks” by 唾奇
製作:Allen、ザフール
【作品公式サイト】 https://afarshore.jp
【公式 SNS】https://twitter.com/afarshore_jp
【配給】ラビットハウス https://usaginoie.jp/
©2022 「遠いところ」フィルムパートナーズ

日本大学4年 石田耕司 / 立教大学3年 緒方成菜 / 中央大学2年 前田蓮峰

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。