株式会社ABABA 代表取締役CEO 久保駿貴

結果だけでなく、過程も評価される社会へ

株式会社ABABA 代表取締役CEO 久保駿貴 (くぼ しゅんき)

■プロフィール

兵庫県明石市出身。岡山大学理学部卒業。4年次に「就職活動のプロセスを評価する」をミッションに最終面接での「お祈りメール」を「エール」で応援し、他社の最終面接まで進んだ方を採用できるスカウト型サービスABABAを創業。教員免許保持。経済産業大臣賞、SDGs日本賞受賞。東京MX「堀潤モーニングFLAG」にてコメンテーターも務める。

最終面接まで進んだ就活生のみが登録できる新卒特化のダイレクトリクルーティングサービス「ABABA」を提供する株式会社ABABA。結果だけでなく、就職活動の過程が評価される社会の実現を目指す同社代表取締役CEOである久保駿貴さんに、創業の経緯や事業展開、そして将来の目標についてお伺いした。

■見聞を広げるために英会話の勉強と海外でのバックパック生活

最初は関西大学に入学したのですが、2年間通った後、3年生から岡山大学に編入しました。以前から興味のあった気象や天気の勉強をしたいと思ったからです。大学ではE.S.Sの部活に入っていて、英語でのスピーチ大会に出場しました。他にも部活の先輩の話に影響されて、長期休みの期間は東南アジアでバックパッカーもしていました。

■二度の失敗と友人の姿をみてABABAを創業

大学入学当時は会社を経営するビジョンは、強く持っていたわけではありませんでした。そんな中、大学2年生のときにオリンピックに向けて通訳ガイドの法律が改正されたんです。以前は有資格者だけしかガイドはできませんでしたが、資格なしでもできるようになりました。そこで「通訳ガイドのマッチングサービスを作ってみたら面白そうだな」と思って、チップ型の通訳ガイドのマッチングサービスを始めたのです。その後、コロナの影響で外国人観光客が全く来なくなってしまい、事業展開はできませんでしたが、よい経験になりました。
その後は一般社団法人を立ち上げ、コロナで打撃を受けた飲食店向けのクラウドファンディングのサービスを提供しました。しかし、既存のサービスとの差別化がうまくできなかったこと、サービスのデザインが良くなかった影響などで、こちらもひっそりと閉鎖されました。そして、大学4年生の6月頃、仲の良い友人が希望していた企業の最終面接で落ちて、鬱病に近い状態になってしまいました。その友人の姿を見て、「最終面接まで行けたことを評価してくれるサービスがあると良いな」と思い、現在のABABAのサービスの開発をスタートしたんです。
ABABAという名前はその友人が選考に落ちた際に、「あばばばば」と実際に言っていた(ラインで送られてきた)ことから困っている人の気持ちを忘れないようにとそのまま社名にしました(笑)。

■「経過」を付加価値に変えて、人材のサイクルを生み出す

ABABAは最終面接まで進んだ学生と企業をマッチングさせるサービスです。今までは企業の最終選考に落ちてしまうと「落選した」という結果だけしか残らなかった。しかし裏を返せば、最終選考まで残れるほど優秀な人とも捉えられます。つまり選考に落ちた際に送られるお祈りメールが、一種のお墨付きに変わるんです。選考した企業は学生への負担を減らせるし、他の企業側からすれば優秀な学生をすぐに見つけられるし、学生側は今までの努力や時間が無駄にならないというWIN-WIN-WINのサービスとなっています。また、このサービスは、長期的な人材の流動性を生み出すサービスにもなります。
企業は新卒採用で送られてきたデータは個人情報になるので、最終的には破棄されます。データが破棄されれば、その人達との縁が途切れてしまいます。しかしABABAを通していただければ、データを一旦預かれるので縁が途切れません。企業側も新卒で別の会社に入った学生が、成長してその会社と再び縁に恵まれる可能性を作れますし、学生も最終選考まで残った思い入れのある企業とまた関われるという循環が作れるのです。
現在の日本は少子高齢化ということもあり、人材不足が大きな問題となってきています。その問題をカバーするためにも、企業が退職者を大事にする文化が出てきており、ただ「会社を辞めた人」と認識するのではなく、またどこかで一緒に仕事をできるようにと縁を保てるような仕組み作りが進んでいます。ABABAはそういった時代の流れにもあったサービスになっているのではないでしょうか。

■学生だからこそできるアピールを活用

ABABAのサービスを採用してもらうための営業は、全てTwitter上で行いました。
困っている就活生を助けたいというサービスなので、メッセージを送る際には、テンプレの文章を送るのではなく、気持ちを込めて一人一人に合わせた文章を書きました。創業当時は自分自身も学生だったので、「自分も学生ですが、がんばってます!」というアピールをしたり、人事部の方のTwitterを1年分調べて、学生の熱意に答えてくれそうな人にアプローチするなどの取り組みも行いました。また、マネタイズに関しては成果報酬型で行なっています。導入の障壁を減らすため、利用料でお金をいただくというよりは、企業が学生を採用できたら報酬をもらう形を導入し、より多くの企業さんに使っていただければと思っています。

■チームに来てほしいのは、何事もポジティブに物事を見られる人

ABABAとしては、苦しいことがあってもポジティブに変換できる人と一緒に働きたいです。私たちはベンチャー企業ですが、苦しくても頑張らなければならない状況もあります。ネガティブな発言や他人の悪口を言う人はチームの雰囲気を悪くしてしまうので、何事もポジティブに物事を考えられる人がほしいです。そういった人を見極めるためにもABABAでは面接のフローに「飲み会」があります。飲みの場だと「つい」の発言が多くなるので、見極めにはうまく使えますね。また、就活生には「最終面接に落ちても道があるよ」と伝えたいので、SNS運用や宣伝ができる人に来てほしいですね。

■地方学生の起業先駆者として国に貢献できる企業を創る

株式会社ABABAは、将来的には1兆円企業を創ること目標にしています。
日本を代表する企業であるTOYOTAが時価総額30兆円と言われる中、TOYOTAさんに続くくらいのグローバルで戦える企業を作りたいと思っています。
自分は兵庫県の明石市出身で、両親は共に一般人で経営とは全く関係ありません。そんな起業とは無縁だった人でも起業ができるのは、日本に生まれたからでもありますし、これまでの先人の皆様が日本経済を支えてくれたからこそだと思います。自分が起業するチャンスを与えてくれた日本という国に貢献するためにも、時価数兆円を超える企業を自ら作って、税金を収めていきたいですね。それに加えて、地方の大学から起業する人の挑戦を潰さない環境を作りたいと常に考えています。学生起業をする人の中には、私のように岡山大学などの地方大学出身者が起業するケースは、ほとんどないと思います。ありがたいことに、地元では地方大学の学生起業家として僕をロールモデルにしてくれています。ただ、期待が高い一方で、失敗してしまうと次世代の地方からの挑戦者にも迷惑がかかってしまうので、今後も、失敗しないように最後までやり続けていきたいですね。

学生新聞オンライン2023年11月14日取材 武蔵野大学4年 西山流生

立教大学4年 須藤覚斗 / 武蔵野大学4年 西山流生 

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