弥生株式会社 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘
中小企業を支え日本をより良くしたい
弥生株式会社 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘 (まえやまたかひろ)
■プロフィール
1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)及びシンガポール国立大学の経営大学院修了。プライスウォーターハウスクーパース税務事務所(現 PwC税理士法人)にて国内およびクロスボーダーの税務コンサルティングに携わる。2007年弥生株式会社入社、2011年退社。その後、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて日系企業の海外子会社再建、国内事業再編等の支援業務に従事。2020年に再び弥生に入社し、取締役管理本部長に就任。2023年より代表取締役 社長執行役員。税理士・公認会計士資格を保持。
会計初心者でも簡単にできる会計ソフトウェアの開発、販売、サポートを行う弥生株式会社。起業・開業や事業支援などを通じ、会計ソフトの枠を超えたサービスを展開している。前山社長は新しい弥生を「挑戦」と表現し、進化を目指す。2度弥生に入社された「出戻り組」である前山社長に、会社と製品の魅力、そして目指す弥生の未来について伺った。
■ゼミに熱中した大学時代
大学はゼミ中心の生活でした。内閣府の顧問なども務めていた島田晴雄先生の経済学部のゼミに所属していました。先生は、1人の人間として社会を生きるためには、複雑な世の中を体感し、様々な観点から物事を見るべきだとよくおっしゃっていました。そのため、ゼミでは理論を学ぶだけではなく、イベントにも積極的に参加して世の中の流れを理解することに努めていました。
実家が会計事務所であることから、会計にはもともと興味があり、公認会計士の資格を取得しました。公認会計士に合格した人の多くは監査法人に就職しますが、私は違う道を進みたいという思いから、プライスウォーターハウスクーパース(現 PwC税理士法人)の税務部門に就職を決めました。
■弥生へ2度、入社した理由
実は2007年と2020年に弥生に入社しているんです。初めての入社はPwCで出会った先輩の紹介がきっかけでした。その後、一度弥生でのキャリアを中断し、海外留学をして経営を学びました。将来、言葉による制限で、やりたいことが制限されることがあったら嫌だと感じていたことが留学を決めた理由です。語学の面では結構苦労しましたが、会計という自身の強みで人とのつながりを築くよう努力しました。
2度目の入社は、前社長に戻ってこないかと声をかけていただいたことがきっかけです。二つ返事で引き受けました。その理由は、私が会社として弥生を好きだったからです。
同時に、弥生の事業と親和性のあるバックグラウンドを活かし、以前とは違った形で会社に貢献できるのではと思ったからです。私は会計事務所の家で育ち、実際に弥生の製品を使っていたため、ユーザー視点での改善に役立ちたいと考えていました。また。馴染みのあり仲間とまた一緒に仕事ができることにも、魅力を感じていました。
最初はCFOという財務責任者として入社しました。会社の数字を管理し、レポートすることや、社内外で適切なコミュニケーションを行うことが求められる仕事です。経営陣の一員であるCFOになるにあたり、公認会計士としてのアプローチや、留学で培った経営の知識を活かし、会社の課題を解決したいという思いがありました。入社後は、予想外の苦労もありました。例えば、親会社を含むステークホルダーとの調整です。自分たちがやりたいことを主張しながらも、関係者がが求めることを理解し、バランスを取ることは想像以上に難しかったです。
■弥生ならではの魅力
弥生の社員に共通していることは、愛社精神とプロダクトへの愛情です。また事業を通じて、中小企業を支援して、日本や経済を良くしたいという想いを持っていますね。熱い想いを持っている社員が揃っている会社は珍しいと思います。
製品に関しては、専門家である会計事務所の方だけでなく、会計初心者の事業者の方にも使いやすいというフィードバックをいただいています。製品そのものだけでなく、購入いただいた後のサポートにも力を入れています。特に、カスタマーセンターは年間120万件のお問い合わせがあり、多くの方に利用いただいています。インタラクティブなやり取りをタイムリーにできるカスタマーセンターの存在は、お客様に安心感を持っていただいているのではないでしょうか。
■莫大なユーザー数を活かしたサービス
我々の1番の強みは、310万以上という登録ユーザー数と蓄積されたデータです。我々のソリューションは、多くの中小企業の方に使っていただいています。中小企業は日本の経済を支えています。私たちは、そんな中小企業のお客様が、幸福感を持ち元気になれるようお手伝いしたいと思っています。今までは、お客様の業務を効率化することにフォーカスをあてて、その中で幸福感を実現する努力をしていました。
しかし、お客様の幸福度を上げ続けるには、業務の効率化だけでは限界があるため、事業自体の成功を支えることも必要だと感じています。
我々が目指しているのは、ユーザーにマッチした情報を提供していく取り組みです。Googleが個々のユーザー情報を得て、広告に反映させているのと同じようなイメージです。弊社ソリューションは中小企業の多くの方に使っていただいており、クラウド上には全国の中小企業の業務データが一円単位で保存されています。データを読み解くことで彼らの経済活動を把握することが可能です。中小企業は大企業と比べて、競合企業で何が起きているか把握しづらく、競合との業績の差の理由がわからないことも多い。そこで、我々が共有している多くの経済データを参考に、中小企業の方々に経営情報をフィードバックし、次のアクションに生かしてほしいという展望があります。
■大学生へのメッセージ
大学生のときしかできないことは本当にたくさんあります。自身の興味関心の赴くままに、楽しいと思えることを見つけて一生懸命取り組んでほしいです。
採用の際には、物事に対して前向きに取り組める人かどうかを重視しています。新しい環境でも積極的に学びながら主体的に成長しようという意識を持った方と一緒に働きたいですね。
学生新聞オンライン2024年1月15日取材 津田塾大学4年 大川知
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