株式会社スピークバディ 代表取締役CEO 立石剛史

いちばん強くパッションがある領域で戦いたい

株式会社スピークバディ 代表取締役CEO 立石剛史(たていしつよし)

■プロフィール

慶應義塾大学在学中に会計士二次試験当時最年少合格。外資系投資銀行で上場企業の資金調達やM&Aアドバイザー業務に従事、香港駐在も経験。就職内定当時TOEIC280点だったことから、業務上必要な英語レベルに達するのに大いに苦労し、その経験が現在のサービス開発に繋がった。現在はTOEIC満点・英検1級。

累計300万ダウンロードを突破し、App Store教育ランキング1位を獲得したAI英会話「スピークバディ」。中学生の頃から大の英語嫌いで、全く話せなかったという立石剛史さんが、なぜ英会話アプリの開発に至ったのか。そこには、自身の挫折経験とそこから生まれたパッションがあったのだとか。

■史上最年少で会計士試験に合格

高校時代は内部進学だったこともありほぼ勉強せず過ごしていましたが、大学に入ってからは、公認会計士の勉強に多くの時間を費やしました。きっかけは、高校3年生の時、父の経営していた会社が倒産し、生活が一転したことです。「これからは自分で稼がなくては」と思い、本屋で仕事図鑑を読み漁っては、自分の力で稼げて結果の出せる仕事を探しました。そこで見つけたのが、経営コンサルタントです。経営コンサルタントになるには、会計士の資格が有利だと知り、商学部への進学を決めました。

大学1年の冬から会計士の資格勉強を始め、1日14時間みっちり勉強し、勉強の邪魔になるからと携帯電話から友人の連絡先を消したり、テレビの電源コードを抜いたりするほどでした。大学3年生の時、その努力がついに実を結ぶこととなります。会計士の試験に史上最年少で合格したんです。それまで小学校から内部進学で、あまり勉強してこなかった自分でしたが、この時初めて「自分もやればできる」と思えました。

■人生の転機は大病の経験から

大学卒業後は、外資系投資銀行に就職しました。ただ、外資系ということもあり業務には英語が必要。でも先ほどもお伝えしたようにほとんど中高で勉強していなかったこともあり、ただでさえハードな仕事に加えて、英語で本当に苦労しました。

人生の大きな転機となったのは、20代半ばで大病を患ったこと。現在は完治していますが、当時は突然死の可能性もあると告げられて、自分の人生を振り返りました。やりたいことをやって成果も出せたことに満足してはいましたが、死の瀬戸際に立たされた時、ふと「世の中に自分が生まれた意味があっただろうか」と思ったんですよね。私はその問いにはっきりYesと答えることはできませんでした。もし手術が成功して生きられるのであれば、今度は世の中の役に立つことがしたい。それで社会にインパクトを残したい。それで起業することを決意しました。

■友人の一言で英語学習アプリ開発へ

起業すると決めた上で、どんなサービスを展開するか。もともと「世の中にこんなサービスが有るべきなのでは」とよく考えていたこともあり、アイデア自体はいくつも浮かびました。そんな中、帰国子女の友人から「英語アプリを作ったらどうか」と提案されたんです。でも私は昔から大の英語嫌い。英語だけはするものかと、断固拒否という状態でした。実際、外資系の企業で働いていた当時、私自身が話せないコンプレックスを抱えながら必死に勉強を頑張っていたのですから。

でもまあ、ものは試しにやってみるか、とアプリを作り始めてみたら、とめどなくアイデアがあふれて来たんです。そして素人ながらに作った英語学習アプリが、2014年のApple年間ベストアプリになり、マインクラフトに続いて第2位を獲得しました。ユーザーの反応を見て、英語を学びたい人はこんなにたくさんいるんだと驚きましたし、同時に自分がこんなにも語学習得にパッションを持っているんだとも気づきました。

そこからの数年、機能を増やしていったり、他にも幾つかアプリをリリースしました。ただ、それぞれヒットはしたものの、「これで英語を話せるようになった」という声は聞こえてきませんでした。自分と同じように英語習得に励んでいるけれど、話せなくて苦労している人を助けたい。であれば、もっと画期的なもの・よりインパクトを与えられるものを出さなくては、と思いました。その一心で、再びアプリ開発に奮闘し、新たに生まれたのがAI英会話「スピークバディ」です。

■人ではなく、AIで学ぶ言語学習

私は英語学習に5000時間・500万円以上と、膨大な時間とお金を費やしたんです。だからこそ、もっと効率良く学べて英語が身に付くサービスが必要だと強く思っていました。でもAI英会話アプリを起案した当初は周りからは反対の声がたくさん挙がりました。音声認識技術もまだ発達し始めた頃で、スムーズに会話できるレベルではなかったこともあります。ですが、以前金融機関でIT関係の仕事を担当していたこともあり、音声認識やAIの分野はどんどん進化していくであろうと確信していました。そして何より、英語を話せるようになりたい人の役に立ちたかった。オンライン英会話をはじめ人間の講師との英会話は、高価で予約をとるのが大変だったり、講師が変わると英語レベルの確認に時間がかかったりして非効率だと感じていました。そして、間違えるのを恥ずかしく感じたり、気をつかったりもする。その点、AI相手だと気楽です。スピークバディは言語習得をサポートする会社として、人ではなく、AIで学ぶ社会を目指しています。今後も、人と区別がつかないくらい流暢に会話ができて、人よりもっと効率的・効果的に言語習得できるAI英会話の開発に取り組んでいきたいですね。

■大学生へのメッセージ

自分自身のキャリアを選択する際は、稼げるだけではなく、自分が情熱を持って取り組めるかどうかも非常に大事だと思います。「ikigai」という概念をご存知でしょうか。「得意なこと」「好きなこと」「世の中が必要とすること」「お金をもらえること」の4つが全て重なることで人は生きがいを感じられる、という考え方です。私も初めは金銭面を第一に考えていましたが、いま取り組んでいる事業は、この4つが重なることだと強く感じています。ぜひ、皆さんにも学生生活を通して、自分が情熱を感じるものを見つけてほしいですね。

学生新聞オンライン2024年1月23日取材 上智大学2年 白坂日葵

津田塾大学1年 石松果林 / 上智大学2年 白坂日葵

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