株式会社すかいらーくホールディングス 代表取締役会長 谷 真
人生の各シーンに寄り添い、幸せを生み出せる存在に
株式会社すかいらーくホールディングス 代表取締役会長 谷 真(たに まこと)
■プロフィール
1951年12月25日生まれ、富山県出身。1977年関東学院大学経済学部卒業後、すかいらーく入社。2000年ニラックス代表取締役社長、2007年同社社長兼すかいらーく執行役員、2008年すかいらーく代表取締役社長、2018年すかいらーくホールディングス代表取締役会長兼社長を経て、2023年同社代表取締役会長(現在)。
「価値ある豊かさの創造」という経営理念のもと、成長し続けるすかいらーくホールディングス。和・洋・中の各種テーブルレストランを中核事業に、数多くの人気ブランド店を展開している。今回は会社を支え続けてきた谷会長に、ご自身の学生時代のお話から会社の将来展望までを伺った。
「将来は建築の道に進みたい」という想いから、大学は関東学院大学理工学部に入学した。しかし、建築デザインというよりも数学との格闘。2年生が修了したタイミングで、経済学部に転部しました。大学には結局5年間通いました。休みの日は、小学生の頃から始めた山登りに熱中し、立山の山小屋で働いていました。1日に500人近い登山客が来るのに、山小屋にはアルバイトを含めて30~40人しかいないのです。そのために、少ない人数で仕事を回すにはどうすれば良いのか知恵をしぼりました。人をまとめる機会や説得する場面も多かったので、マネジメントの基礎を学ぶこともできました。同時に、山小屋生活で大勢のお客様やスタッフと接したことで高まったホスピタリティ精神は、今に活きていると感じます。大学卒業後、すかいらーくに入社を決めた理由は、強い心のときめきとビジネスとしての成長を確信したからです。レストラン業に対する心のときめきは、学生時代から持っていました。当時、ゴルフの帰り道に立ち寄ったレストランでの出来事です。泣いている子どもを見かけた従業員が子ども用の椅子とおもちゃをさっと持っていって、あやしている光景を見ました。そのとき、山小屋生活で実践していたものに似たホスピタリティに、心が強く動いたのを覚えています。また、外食産業に成長の可能性を強く感じたことも大きいです。当時、こじんまりとした定食屋やトラック運転手の方が行かれるようなお店はありましたが、一般の人がゆったりと使えるロードサイドのレストランはあまりありませんでした。必ず、このビジネスは大きくなるだろうと考え、数々の飲食業界の面接を受けました。数ある飲食系企業の中でもすかいらーくに入社を決めたのは、他社が出店数や将来性だけを語るなか、すかいらーくだけが「お客様を大事にすることが大切だ」と話していたからです。私自身、山小屋での経験から、心のときめきはシステムではなくて、人間しか与えることのできないと考えていたため、その言葉に感銘を受け、入社を決めました。
■テーブルサービスを実現するために
すかいらーくホールディングスでは、テーブルサービスオペレーションというスタイルにこだわって事業を展開しています。その背景にあるのは、「お腹を満たす」と「外食を楽しむ」の2つの要素です。それは単純にお腹を満たすためだけではなく、食事を通じて心のときめきを感じることへの価値を重要視しているからです。テーブルサービスオペレーションを遂行させる上で、5000人の社員と9万人のクルーのために人事制度にも力を入れています。日本全国に3000店舗を展開する現在、統一された人事制度のもと、異なる業態でも安定性を維持した運営を可能にしています。従業員に採用しているのは、研究熱心な人、自然が好きな人、社交的な人など、多様な人材です。企業としても、画一的な人材ではなく、自己分析を通じて自分の得意分野や個性を理解し、それを生かしてキャリアにつなげられるように考えています。また、採用時には経歴よりも個人の意志や努力を評価しています。かつて、一度面接で不合格にした応募者が、自分を信じる力と壁を乗り越える強い意志を示し、再応募で合格したこともありました。
■すかいらーくの国内外展開
近年、マーケットでも少子高齢化は急速に進んでいます。当社は日本国民の食生活や人生に寄り添いたいとの想いのもと、ライフスタイルに合わせたさまざまな業態を展開しています。女性グループでの集まりやお一人でゆったり朝からお過ごしいただける「むさしの森珈琲」などのカフェ店舗、ファミリーやシニア層にも親しまれる蕎麦屋などの新業態の出店がそうです。人生の数々のシーンにすかいらーくが存在することで、幸せにつながるように切に願っています。また、海外進出計画も実行しつつあり、現在、東南アジアやアメリカなど日本食の需要が高まる地域を中心に、出店を拡大しています。台湾での店舗数は約70、マレーシアでは5店目がオープンします。将来的には、すかいらーくという食を世界に広め、幸せなライフスタイルを提供することが私たちのビジョンです。
■大学生へのメッセージ
多くの学生さんは、それぞれ違うポテンシャルを持っていると思います。好きなことを仕事にするのももちろん良いですが、自分が持つポテンシャルを活かせる仕事を選択できたら、よりよい結果になると私は思います。そのためには、自分が他人よりも何が長けているのかを自己分析し、いま好きなことと社会に出てやりたいことのギャップを縮める作業が必要であるかと思います。不確かな状況に対応できる能力が求められる現在、自己改革を繰り返し、目の前の仕事を成し遂げるためのオペレーションの習得も大切です。そこから、内部結束を図るためのマネジメントの知恵と工夫が見えてきます。ぜひ、この学生時代という時間を使って、自身の生き方や考え方を見つめ直してみてください。
学生新聞2024年4月1日発刊号 津田塾大学1年 石松果林
この記事へのコメントはありません。