株式会社ニトリホールディングス 取締役執行役員副社長 武田政則

住まいの豊かさを世界の人々に提供する。

株式会社ニトリホールディングス 取締役執行役員副社長
株式会社ニトリ 取締役
武田 政則(たけだ まさのり)

■プロフィール

1966年生まれ。東京都出身。2004年、株式会社ニトリ入社。商品部のゼネラルマネジャーなどを務めた後、2020年、株式会社ニトリ代表取締役社長に就任。2024年には海外事業の管掌に専念することで、海外事業における意思決定を迅速化し、実行スピードの向上を図る。

住まいのトータルコーディネートを提案するニトリ。「お、ねだん以上。」というよく耳にするフレーズのとおり、高品質でありながらお手頃価格で商品提供ができる秘訣はどこにあるのか。商品の開発秘話やニトリが成長し続けられる秘訣をニトリホールディングス武田副社長に伺った。

家具のデザイナーになりたいとずっと思っていました。ただ、デザイナーになるにしても世界のビジネスをやるにしても英語はやはり必要だと思っていたので、英語を勉強していました。また、当時、さまざまな装飾様式のあるイギリスやフランスに家具などのデザインを見に行ったりもしていました。学生時代にやって良かったと思ったのは、アルバイトです。さまざまな職種のアルバイトをしましたが、世の中には自分が思い描いていたよりもたくさんの仕事があることを知りました。その中でいろいろな人と出会い、接客応対を学んで対人スキルを身に付けたことが今につながっているのだと思います。社会人としてのスタートは、ライフスタイルを提案する会社でした。倉庫の改善業務から始まり、最終的には商品開発の責任者になりました。その後、独立しようと考えていたときに、友人にニトリという会社があることを教えてもらい、実際にお店を見に行ったのです。並んでいた商品を見ると、私が考える原価くらいで売られていたので非常に驚いたのを覚えています。しかし、正直なところデザインはあまりよくなかったのです。そこでニトリの商品を低価格のままもっとおしゃれにしたらすごいビジネスになると思い、入社を決めました。

■「お、ねだん以上。」の秘訣

ニトリでは製造から物流、倉庫内のオペレーション、販売も全て自前で行っています。現在、ベトナムに2つの自社工場を構えており、そこには年間約250万セットのカーテンを作る、世界で一番大きな工場があります。その工場では、品質が良くてその時期に一番安い糸を選び、編んだり染めたりする作業も全て自社工場で行っています。通常はそれらの作業を外注する場合も多いのですが、内製化することにより、他社よりも品質が良くて安価なカーテンを作ることができるのです。その結果、他社との差別化が可能となったのです。それでもカーテン工場は3年かけてようやく黒字になった程度です。しかし、この3年間はたとえ赤字でも将来大きく利益が出ると信じてやってきました。赤字でも絶対に諦めないのは2032年にニトリは3000店舗に拡大するというビジョンを掲げているため、そのときに大量に商品を作れば利益率が上がることがわかっているからです。ニトリ商品の多くは自社製品です。そのため、社員たちがこれをお客様に届けたいと思えば、売り場は100パーセント自分たちの意思どおりになります。そして一番いい商品をお客様におすすめすることができるのです。このような理由で今後の投資や売上も計算ができ、10年後に必ず成功するという将来が見えるのです。

■「諦めない」ことが成長の秘訣

一緒に働きたいと思う社員は、Change(変化)、Challenge(挑戦)、Competition(競争)、Communication(対話)の4C主義を楽しめる人です。特に、さまざまなことに好奇心を持つ人を歓迎します。ニトリの店舗で働いていた社員が、数年後に突然新卒採用部や広告宣伝部などに配属されることもあります。そのようなときにもニトリの社員は皆好奇心があり、順応性も高いので、どの仕事も楽しむことができるのです。社員たちに常々言っているのは、「諦めないかぎり失敗はない」ということです。私自身も諦めなければ必ずできると信じています。社員たちも部署が変わっても楽しんで仕事をこなしているのは、この考えがあるからでしょう。

■世界の「ニトリ」になる

現在は海外への進出も加速させていて、10年後には海外だけで2000店舗以上にしたいと考えています。製品を作っている場所と売っている場所の距離が近い方が物流費がかからず、お客様が買いやすい値段で商品を提供できます。今はベトナムやタイに自社工場があるためアジアを中心に展開していますが、今後はアメリカやヨーロッパにも進出していきたいと考えています。さらに家電の開発にも力を入れています。家具と家電を買うのはライフイベントのタイミングとして非常に近いものなので、両方を同時にご購入いただける状態を提供したいのです。家電量販店のように品揃え量にこだわるのではなく、ベストプライスでおすすめ商品を絞り込み、売ることを目指していこうと考えています。さらに、トータルに生活をコーディネートしていくためにアパレルやホームセンターなどの事業領域も拡大していく予定です。

■大学生へのメッセージ

学生のうちにさまざまなところに行って多くのものを見て欲しいと思います。日本の住まいは決して豊かではありません。欧米の家などを見てどれだけ日本よりも素敵な家に住んでいるかがわかると、物事が全く違って見えます。将来のビジョンがしっかりとしていて、自分も企業と共に成長できるような場所を選び、やりたいことを実現していってくださいね。

学生新聞2024年4月1日発刊号 国際基督教大学1年 若生真衣

国際基督教大学1年 若生真衣/日本大学2年 米満光里/立教大学3年 緒方成菜

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