株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス 代表取締役社長 森崎鉄郎

持続可能な地域づくりのために私たちは変革し続ける

株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス 代表取締役社長 森崎 鉄郎(もりさき てつろう)

■プロフィール

立教大学経済学部卒業。1990年、東日本旅客鉄道株式会社に入社。2010年12月の東北新幹線新青森開業に向けて、2009年4月から盛岡支社営業部長を務め、2011年3月の東日本大震災の対応にも当たる。その後、東京支社びゅう事業部部長、本社営業部次長を経て、2019年6月より株式会社びゅうトラベルサービス(現・株式会社JR 東日本びゅうツーリズム&セールス)代表取締役社長に就任。

JR東日本グループの旅行会社として、JR東日本びゅうダイナミックレールパックの企画・販売などを行う、(株)JR東日本びゅうツーリズム&セールス。森崎社長は社長就任以来、大型台風の襲来やコロナ禍など、多くの危機に見舞われたが、マイナス状況から変革を起こし、黒字転換に成功。その経緯を伺った。

大学時代はゼミ、アルバイト、サークル活動の3つに注力していました。特に在籍していたゼミは自身のレポートに対して他のゼミ生や教授から容赦なく質問攻めされる形式だったので、毎回準備が大変でした。ゼミで学ぶ中で、「問題意識」を持ち、それに対しての「現状分析」を行い、「問題点」、「課題」を抽出し、その「対応策」を考えるというサイクルを徹底的に叩き込まれました。これは就職してから現在に至るまで、仕事をしていく上でのベースになっていると思います。 アルバイトについては地元のスポーツ用品店で働いていました。バイト歴が長くなるにつれて店長さんに頼られることも多くなり、マーケティングの初歩も経験できました。 私が就職したのは1990年ですが、当時のJR東日本は、3年前に国鉄から民営化されたばかりだったこともあり、JRを目指す学生はまだ珍しかったと思います。ただ、私の場合は、「この環境だったら、まっさらなキャンバスに新しい絵を描くような仕事ができるんじゃないか」と考え、入社を決めました。 新卒1年目、最初の配属先は岩手県盛岡市でした。地方暮らしの経験がない私にとって、東北での生活は凄く新鮮で、魅力的でした。そのときに、「もっと人々に旅の目的を届けられるような観光関係の仕事がしたい」と感じ、以来、幸運なことに鉄道事業というフィールドの中でも観光に多く関わることができました。 さらに東日本大震災を東北の地で体験したことは大きく、単にお客さまへ旅の手段を提供するだけでなく、震災後、東北の人々が作り直してきたもの、または作り上げてきたものを国内外の人々にお伝えする使命があると思い、今の仕事をしています。

■「観光流動創造会社」としての使命

当社の事業の中核を成すのが旅行事業ですが、主力商品となるのは、JRの列車のチケットと、宿泊施設を自由に組み合わせられる「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」です。この仕組みを導入する際、いくつかの変革を行いました。 まず第一に、購買時期によって商品価格を変動させた点です。従来の多くの旅行商品は、全て価格が固定されていました。しかし、私たちは、需要と供給に合わせた価格変動型へ変更したことで、お客さまだけでなく契約施設のニーズに合う価格設定が可能になりました。次にWEB販売のみにしたことです。従来は実店舗での対面販売が中心でしたが、実店舗もなくし、WEB販売中心のビジネスへと一気に切り替えました。これは対面販売ができなかったコロナ禍を経て、コスト面でも非常にフィットしたと思います。 さらに、これらの変革に合わせて、新たに設置したのが旅のコンサルティングや情報発信を行う「JR東日本駅たびコンシェルジュ」です。WEB購入のニーズが高まる一方で、特にシニア世代のお客さまは、WEBのみでは行き届かないこともあります。シニア世代が増えることを考えても、店舗はお客さまとともに旅の目的を創る場だと考え、導入に踏み切りました。 そのほか、我々のビジョンで大切にしているのが「地域共創」です。我々は「旅」の目的づくりを大事にしている会社なので、旅先となる地方は魅力的な場所であってほしいと考えています。仮に地域が衰退すればお客さまに旅の目的を提供できず、観光客が減り、さらに地方の衰退が進むという負のスパイラルが待ち受けていると考えています。特に、いま危機感を持っているのが、JR東日本管轄である東北エリアの衰退です。今後、より持続可能な地域づくりを目指して、東日本エリア、そして北海道・北陸の観光流動創造に取り組んでいきたいです。

学生の皆さんの目の前は、大きな可能性が開かれていると思います。これから先、どんな道も切り開けるポテンシャルがあります。その中で、ぜひ2つの姿勢を大切にしてほしいと思います。まず、自分の「信念」を持って、道を歩んでほしいと思います。そして、信念を絶やさないために「情熱」を燃やし続けることです。この2つが実現できる会社に出会えれば、大いに活躍できると思います。

■大学生へのメッセージ

最後にお伝えしたいのが、人生に大切な4 つの「気き」についてです。「大人の休日倶楽部」初代イメージキャラクターである藤村俊二さんの言葉を一部拝借したものですが、一つ目の気は「元気」です。これは身体的な元気だけでなく、心も元気でなければいけません。そして2つ目の気は、「やる気」です。仕事も勉強も遊びでも、1日一つでも何かポジティブなことを見つけられると、凄く前向きな人生になると思います。3つ目は、「勇気」です。社会人になるといろいろな場面で勇気が必要になります。勇気を出すことに躊躇しないでほしいです。4つ目は「時とき」です。限りある人生の中で、2度と同じ時は返ってきません。これからも「今」という時を大切にしてください。

学生新聞2024年4月1日発刊号 慶應義塾大学4年 伊東美優

武蔵野大学4年 西山流生/津田塾大学4年 大川知/上智大学2年 池濱百花/慶應義塾大学4年 伊東美優

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