第79期本因坊戦第1局 前夜祭
一力遼本因坊に本因坊戦初登場の余正麒八段が挑戦する、囲碁の第79期本因坊戦挑戦手合5番勝負第1局が5月14日、東京・上野「東京国立博物館」で開幕する。
1873年(明6)に開設されて152年を迎える同館で、初めて囲碁の対局となる。対局前日13日の前夜祭にお伺いさせていただいた。
初防衛を目指す一力は2年前に井山裕太本因坊(当時)に挑戦した本因坊戦で、福岡県太宰府市「九州国立博物館」での対局はある。「歴史ある本因坊戦を歴史ある国立博物館でできるのは嬉しい。博物館と同じ台東区の中学、高校に通っていたのでゆかりがあります。余八段とのタイトル戦は初めてですが、ベストを尽くして頑張りたい」と決意を表明した。
対する余は16年王座戦、17年十段戦、22年十段戦、王座戦、23年王座戦とタイトル戦に挑戦しているが、本因坊戦は初めてだ。今期の挑戦者決定トーナメントでは結城聡九段、小池芳弘七段、井山王座、芝野虎丸名人を下して勝ち上がってきた。「博物館での対局を楽しみにしてきました。厳しい戦いになると思いますが、自分らしく精いっぱい頑張りたいと思います」と述べていた。
両者の熱い決意表明で14日の対局に期待が高まる。
また前夜祭に出席していた主催者、関係者に囲碁の魅力や学生へのメッセージをいただいた。
■毎日新聞社 代表取締役社長 松木健
東京国立博物館という伝統ある施設で、囲碁の対局ができることをとても嬉しく思っています。囲碁も東京国立博物館も歴史ある伝統的なものなので、若い人たちに是非触れていただき少しでも多くの人に囲碁の魅力を知っていただきたいと思います。
■日本棋院 理事長 小林覚
囲碁は何もない碁盤を2人でキャンパスに絵を描くようにしていくもので、自分で構想を練ることで新しい世界が広がっていきます。形が見えない碁を作り上げることが囲碁の魅力です。碁を通じて様々な想像図や知恵が広がりますので、将来何かする時に役に立つと思います。
■関西棋院 理事長 池坊雅史
19×19の361マスで、こんなに人の哲学や宇宙観が反映されるゲームは世界にないと思います。囲碁はとても深い世界ですので、若い人たちに是非興味を持っていただきたいです。勉学も重要ですが、こういった日本の伝統文化も重要です。ぜひ大学時代に、囲碁や将棋、華道、茶道、香道などの日本文化と接してください。
■東京国立博物館長 藤原誠
囲碁は日本の文化ですが、姿は見えるが形としては残らない無形文化です。博物館では絵画や書、彫刻など有形文化の保存と展示をしています。有形か無形かの違いはありますが、日本文化を大事にしていかなくてはいけません。日本文化の柱とも言える囲碁のタイトル戦第1局を初めて東京国立博物館で行えることを誇りに思いますし、ぜひ学生の皆さんにも囲碁に興味をもっていただき、日本の文化を育てるという気持ちでチャレンジしていただきたいです。
学生新聞オンライン2024年5月13日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜
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