テリー伊藤 コラムVol.25 ミッキーマウスとネズミ
ミッキーマウスほど世界中で愛されているネズミはいない。ミッキーを見れば老若男女大喜び、泣いていた赤ちゃんまで笑顔になる。しかし本物のネズミと台所や押し入れ、夜道で遭遇したら多くの人は顔がひきつり、悲鳴を上げるに違いない。そしてほうきで叩くか、助けを呼ぶかの大騒動になる。同じネズミでもこれ程まで扱いが変わってくる。何故ミッキーだけが人気者なのか。ミッキーマウスの生みの親、ウオルト・ディズニーの存在のおかげにほかならない。1928年スクリーンデビューした映画『蒸気船ウィリー』以来世界中の人から愛されて続けている。嫌われているはずのネズミがスーパーアイドルになっていった。これって凄いですよね。大事なのはイメージ作りです。
では、狼はどうか。アニメでもイメージは良くない。グリム童話『赤ずきんちゃん』では、赤ずきんちゃんが森の向こうのおばあちゃんの家に向かう途中、1匹の狼に遭うが、先回りされおばあちゃんは狼に食べられてしまう。そしておばあちゃんの姿に変装して、赤ずきんちゃんが来るのを待つ。ここでは狼はとんでもない殺人鬼として描かれている。これでは絶対に子供達の人気者にはなれない。キツネはどうか。英語で「AS SLY AS A FOX」と言えば「狐のようにずるい」となる。これって狐にしてみればたまったもんじゃない。人間が勝手に自分たちのイメージを作り出している。本来なら狼から訴えられても仕方がない。亀はどうか。イソップ童話『ウサギとカメ』ではウサギが油断して昼寝している間に亀はコツコツと歩みを進めてウサギを追い抜き、まじめな努力が大きな成果を生む物語だ。近年でも世界的ヒットになった映画『ミュータント タートルズ』でも正義のヒーローで登場し大人気。亀の好感度は高い。
鹿はどうか。これまたディズニー映画『バンビ』(1942年公開)で、母親を人間に殺された子鹿バンビが偉大な父の元、逞しく成長してゆく物語。世界中が涙した。私も子供の頃見た感動を今も忘れない。今でも小鹿を見るとバンビと呼んでしまう。バンビ人形も持っている。バンビという名前も良い。幼児期の思い出は一生忘れない。そこにいくとゴキブリなんてどう考えてもアイドルにはなれそうもない。「ゴキブリちゃん」「ゴッキー君」と名乗っても受けそうもないし。将来性も無い。そうこうなったら悪に徹して欲しい。世界侵略を目指し悪の巣窟を築き上げてくれ!人気者ばかりじゃつまらない。「ゴキブリ大魔王」「改造人間ゴキブリアン」もいいかも。出来れば狐軍団を引き連れて。すみません、話が変な方向に行ってしまいました。
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ」
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry
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