株式会社アズパートナーズ 代表取締役社長 兼CEO 植村健志

「企業風土」を残しつつ、テクノロジーで介護を変える

株式会社アズパートナーズ 代表取締役社長 兼CEO 植村健志(うえむらけんじ)

■プロフィール
早稲田大学卒業。上場デベロッパーにて共同住宅開発に従事。東証一部上場企業の常務取締役を経て、2004年にアズパートナーズを創業し、代表取締役に就任。首都圏を中心に、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム/一般型特定施設入居者生活介護)と在宅介護事業であるデイサービス等の運営を行う。一般社団法人 全国介護付きホーム協会 副代表理事も務める。

首都圏を中心に介護付きホーム「アズハイム」を運営している株式会社アズパートナーズ。現在、介護付きホームの数は27箇所にまで拡大し、ご入居者からも高い支持を得ている。その最大の魅力は、現場を支えるテクノロジーだという。代表取締役社長の植村健志氏に創業から経営、社員の働き方、会社の今後の方向性について話を伺った。

幼少期から野球一筋の生活を送っていたので、大学に入ったら何か別のことを始めたいという想いがありました。そこで、大学入学後に調理師の免許を取り、4年間和食屋で板前として厨房に立ち続けました。その一方、大学ではスキーツアーやイベントを企画するサークルを立ち上げ、スポンサーをつけて利益を上げたりもしました。この時の体験が、今の経営の基礎となったのかもしれません。

■いい仲間と楽しく仕事ができる会社に

大学を卒業してからは、新卒で入社した会社で約10年間働きました。その後、一度転職をして考えたのは「会社は企業風土が大事」だということ。そして、30代後半になると「自分自身で企業風土を作るために、起業したい」という思いが強く湧いてきました。その時に、どんなビジネスが良いかを考えた結果、思い至ったのが「高齢者の住宅」です。世の中は少子高齢化が進んでいて、高齢者がどんどん増えています。そこで、それまで住宅産業で働いていた経験を活かして「高齢者の住宅」を作ろうと考えました。これが、会社創業のきっかけです。
「良い企業風土を作る」という想いで創業したため、創業から20年間大切にしているのは「いい仲間といい仕事をする」ということです。そして、周囲の方々から「アズパートナーズの人って良いよね」と言っていただけるような会社を目指してきました。
最初、この業界に入ったとき、自分が想像していたよりも、実際の介護の職場環境はひどいものだと知り、衝撃を受けました。高齢者はどんどん増えていく中で、職員はみんな疲れており、若者が入ってもすぐに去ってしまう。このままだと大変な事態になるという危機感を、ひしひしと肌身で感じました。だからこそ、この会社は、社員みんなが楽しんで働けるような会社にしようと決めました。

■業界を震撼させたテクノロジーの導入

もう一つ、この業界に入って気が付いたのは、「この業界は、圧倒的にテクノロジーの導入が遅れている」ということです。私がこの業界に入った当初は、介護の記録が全て手書きで、全てがアナログで管理されていました。人手が足りず、人員を増やせば赤字になってしまう状況で、人が少なくても社員がゆとりを持って働くには、テクノロジーの導入は必須だと考えるようになり、デジタル技術を導入し効率化を進めていこうと決意し、業界に先駆けて積極的に導入していきました。こうした取り組みを魅力に感じ、多くの若い人材が集まってくれたおかげで、今は新卒社員が中心となって現場が回るようになりました。

■生産性向上につながった「EGAO link®(エガオリンク)」

数あるデジタル機器の中でも、私たちが評価されたのは、2017年にスタートした「EGAO link®」です。これは、当社が主体となって考案したもので、各種メーカー様の機器をリンク(つなぎ合わせ)させることで、スタッフの業務負荷の軽減および情報の一元化を目的に開発しました。
このシステムは、ご入居者のベッド上での状態把握や、呼吸や心拍、介護の記録などを全てスマートフォン一台で管理できるようにまとめたものです。よって、スマートフォンを見るだけで、各居室のご入居者が今どのような状況かがわかります。従来の介護付きホームでは、記録、見守りセンサー、ナースコールなどは全て別々の会社の商品をそれぞれの機器ごとに管理していたのですが、このシステムの開発によって、業界で初めて全ての機能をまとめて、効率的にスマートフォンで管理ができるようになりました。
導入には1事業所あたり2,000万円から3,000万円ほどのコストがかかるため、当初は迷いもありました。しかし、デジタル化を進めたことで効率の良い人員配置が可能になり、生産性も向上しました。各ホームで総労働時間の大幅な短縮を実現することができたため、コストダウンだけでなく、お客様に向き合う時間を増やすことができたのです。かつて夜勤に3人の配置が必要だった60室規模のホームでも、導入後は2人で回るようになりましたし、長い目でみれば決して高い投資ではありません。

■介護の世界でより発信力のある存在になる

我々には、様々なお客様がいます。だからこそ、社員にも色々な人がいて良いと思っています。特定のタイプや性格を設定する必要ありません。勉強ができる人、音楽が得意な人、スポーツが得意な人、様々な人たちが活躍できる会社でありたいと考えています。また「業界を変えたい」「制度設計をやりたい」「広報をやりたい」など、それぞれ仕事に想いを持って望める方に入っていただきたいですね。そして何よりも、うちの企業風土に共感してくれる方に入社いただきたいです。
楽しんで仕事をするためには、仕事に想いを持つことが不可欠です。自分の仕事にどんな意味があるのかを考えなければいけません。もちろんどんな想いを持つかは自由なので、一人ひとりに耳を傾けつつ、その中で会社として何ができるのかを考えなければならないと感じています。どのようなサービスや制度があれば、社員やお客様が喜んでくれるのかをしっかりと意識したいですね。
これからは、この会社をもっと若い人たちが活躍できる場にしていきたいと考えています。そして企業風土、文化を残していきたいです。若い人たちが中心となってこの介護の業界を盛り上げて、変える。テクノロジーをこの業界に浸透させるためには、我々がもっと発信力を持つ会社にならなければならないと感じています。
また、介護の会社でありながら、介護のDXサポート事業やAIケアプランなど、他社とも協力しながら色々と取り組んでいきたいです。テクノロジーや人材、サービスをどんどんこの業界に発信しながら、新しいことに挑戦できるこの環境下で、いまだかつてないような事業もスタートさせたいですね。

■大学生へのメッセージ

若い人達は何かにチャレンジして、なおかつそれを楽しんでほしいです。チャレンジはハードルが高いと感じ、失敗を恐れて躊躇してしまうかもしれません。ただ、私は経営をしてきて、「チャレンジは楽しい」ということを30年かけて知りました。そして学生さんが何かチャレンジするときのリスクは、ほとんどリスクではないと思うことができます。「チャレンジは楽しい」ということを頭に入れておくと、就活でも何でも色々楽しくなっていきますよ。

学生新聞オンライン2024年5月17日取材 国際基督教大学2年 若生真衣

中央大学4年 松島鈴音/国際基督教大学2年 若生真衣/津田塾大学3年 小川蘭

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