損害保険ジャパン株式会社 執行役員CDaO データドリブン経営推進部長 村上明子

データの力で、すべての人の健康な一生を実現したい

損害保険ジャパン株式会社 執行役員CDaO データドリブン経営推進部長 村上明子(むらかみ あきこ)

■プロフィール
1999年日本アイ・ビー・エム(株)入社、同社東京基礎研究所において研究に従事。
2021年に損保ジャパンに転職、損害保険のDXを推進。
2022年4月に執行役員Chief Digital Officerに就任。
2024年4月より執行役員Chief Data Officerとして損害保険におけるデータ活用やデータガバナンスを推進している。また、政府に設立されたAIセーフティ・インスティテュートの所長も兼任している。

震災のボランティア経験を経て、「苦しんでいる方々の力になりたい」と損害保険ジャパンへの転職を決めた村上明子さん。保険業界にデジタル技術を取り入れることで、保険業界の役割そのものを変革したいと語る村上さんに、同社の魅力からDX推進の取り組みや思いについて伺った。

■「災害に遭われた方を助けたい」との想いがつないだ転職

前職では、コンピューターで言語を理解するにはどうしたら良いかという基礎研究を十数年行った後、ソフトウェア製品開発に携わりました。働くうちに、次第に残りの社会人としての人生は、ソフトウェアを有効活用して社会貢献できたらと思うようになりました。
そんな中コロナ禍になり、損害保険ジャパンに在籍していた前職の先輩から「DXを進めようと思っているから、力を貸してくれないか」と声をかけていただきました。
しかし、ユーザー会社だったらどこでも良いと思っていたわけではありません。転職の大きなきっかけになったのは、2011年の東日本大震災のとき、自分に何かできることがないかとボランティアに参加したことです。私は力仕事ではお手伝いできないので、ITで被害に遭われた方の復旧に携われないかと考え、ボランティア団体を立ち上げました。復旧にあたっているボランティア団体をITで間接的に助けるという団体です。その経験もあって、この会社であれば災害に遭われた方の力になれるのではないかと感じたことが決め手となり、損害保険ジャパンに入社しました。

■世のため、人のために励む社員たちが魅力

自分の会社なので少し照れ臭いのですが、社員が本当に良い人ばかりです。自分のことはさておき、世のため人のため、苦しんでいる方を保険で支えたいという想いを持つ人が、多くて本当に驚きました。プロジェクトのアイディア出しでも「事故を減らすためにはどうしたら良いか」「復興のお支払いを一日でも早くするためにはどうしたらよいのか」など、自分ごとになって考える社員が多いという印象を持っています。このような志が、仕事の柱になっている人が多いということがこの会社の強みです。
また、当社は非常に新しいもの好きな会社だなと思います。古いものにとらわれず、「新しいことをやってやろう!」というチャレンジ精神を感じます。

■膨大なデータで経営方針を決めていく

蓄積されたデータを使って経営を進めるというデータドリブン経営の方針の下、現在、私は「チーフデータオフィサー」としてデジタルやAIを活用するための根本となるデータを扱っています。データドリブン経営では、経営判断するときや物を販売するときに客観的なデータに基づく判断が大切になってきます。しかし、当社は自動車保険をはじめとする2千万人以上のお客さまとの契約があり、今までデータを安易に使うことが難しい状況でした。そこで簡単にデータが活用できる環境を用意し、社員の皆さんが自分の仕事に集中できるように業務にあたっています。
デジタルというと、きらびやかなイメージを持たれている方が多いと思いますが、私はデジタルやデータは手段にすぎないと考えています。私たちの部署は、保険を世の中に役立て     るために、 現場の人たちを下支えする「縁の下の力持ち」のような存在です。そして、それを誇りに思っています。
しかし、私達が業務内容を理解していないと、現場で受け入れられないデジタルのツールを押し付けることになってしまいます。そこで大切にしているのが、科学者である金出武雄さんの本のタイトルにある「素人のように考え、玄人として実行する」という考え方です。慣れてしまうと客観性がなくなってしまうので、いつも素人のように新しい気持ちで見る。しかし、実行するときは現場での制約や慣習があるため、玄人のように行動して実現していく。これはデジタルやツールを扱う上で大切な考え方だと思います。

■デジタルによる変革で保険の在り方を変える

DXを通じて労働力が確保できない状態に備えて効率化を進めていくことも大事ですが、どちらかというとデジタルの台頭によって保険の在り方そのものを変えていくことが、保険業界がデジタル面で果たすべき役目だと思っています。たとえば、今までの保険は対面で申し込みを紙に書いていましたが、WEBでも更新できるように変わってきています。
一方で、WEBを通じて、もっと気軽に保険に入っていただきたいとも思っています。たとえば、万が一旅行をキャンセルせざるを得ない場合、高いキャンセル料を賄うことが出来る保険があります。入った方が良いと分かりつつも、予約した後は面倒になり、忘れがちです。そこで、旅行予約のWEBページから簡単に保険に入れたら便利ですよね。これはまさにデジタルでお役に立てることだと思います。単にデジタル化するのではなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって保険の在り方を変革することが求められているのです。

■「効率化」だけでなく、DXを進める意義を重要性

DXによる効率化で自分の仕事が楽になるとしても、現場の人たちが抵抗を示すことがあります。「これをやるとあなた達の仕事が楽になります」と説明しても、思うように現場の方に伝わらないこともありました。しかし、「そのアプローチの仕方は間違っている」とアドバイスをいただく機会があり、ハッとしました。SOMPOグループでは世のため人のため     を考えている人がすごく多いと思います。だからこそ、現場の人達は「効率的なのはいいが、しっかりお客様に寄り添えなくなるのではないか」という抵抗感を持っていたことに、こちら側が気付いていなかったのです。以来、「ここを効率的にすることで、皆さんがお客様に向き合う時間を増やすことになる」としっかり伝えるようになったことで、現場レベルでもDXやデジタルによる効率化を進めるモチベーションが生まれているように思います。

■お客様の大切なデータで世の中を良い方向へ

まずは今のデジタル時代に遅れていかないように、デジタルを使った変革を進めていくこと。また、保険会社である以上、常にお客様の貴重なデータを扱うことになります。それはただのデータではなく、いろんな方が被害に遭われた記録です。そのデータを使って世の中を良い方向にもっていく力添えをすることに、これから注力していきたいです。
グループ会社一体となって、皆さんが生まれたときからお亡くなりになるそのときまで、健康に過ごせる環境を整えていきたいと思っています。

■学生へのメッセージ 

世の中は本当に変化が早いです。だから、「将来のために準備をしておこう」と逆算するよりは、とにかく学生のときはいろんな経験をしてほしいと思います。そして、いろんな人に会っておきましょう。会うというのは、ただ知り合いになるのではありません。私の場合は、一緒になってこの問題を解決しようと真剣に語り合った人達が、今の仕事に繋がっています。東日本大震災でのボランティアがまさか当社への転職につながると想像もしていませんでした。あまり打算的にならず、考える暇があったら一個でも多くの経験を積んでいくことが、人生をより豊かなものにしてくれるのではないでしょうか。

学生新聞オンライン2024年7月17日取材 東洋大学2年 越山凛乃

法政大学4年 鈴木悠介 / 上智大学3年 白坂日葵 / 昭和女子大学3年 竜澤亜衣 / 東洋大学2年 越山凛乃 / 上智大学3年 網江ひなた

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